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ノーブルチルドレンの残酷/綾崎隼

光陰、矢の如し


時間というのは本当にあっという間に過ぎてしまいますね。あれほど大変だと嘆いていて、7月末がはるか遠くに感じていましたが、終わってみればほんの少しの間だったような気がします。密度が濃いほど時間の経過が速く感じたりするものですし、そういう意味ではこの時期はそれが顕著なのかもしれません。

というわけでテスト終わりましたー! いやっほぅー!
大学に入ってはすでに5度目、人生を通せばもう何度経験したか知りませんが、このテスト期間というものはなかなか慣れるものではありませんね。3回生になってからは講義数的に多少楽にはなりましたが。
毎年試験期間が来ると、なぜか私は『奥の細道』の冒頭の一文を思い出したりします。
この試験期間というのも旅人のようなものなのでしょう。来ては去り、そしてまた一定の期間を置いてやって来る。
まあ、決して訪れを歓迎され、別れを惜しまれるわけではないでしょうが。

ともかく終わりました。これでまたしばらく自由な時間ができそうです。
今こそショーシャンクの雨に打たれながら自由を噛みしめるポォーズッ!






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綾崎 隼

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 ねえ、舞原吐季。
 今日、あたしは運命みたいなものを感じたの。
 吐季とだったら、一緒に歩いていける気がしたんだよ。
 だから、絶対に、あんたを振り向かせてみせるね。



――あらすじ――
美波高校に通う旧家の跡取り舞原吐季は、一つだけ空いた部室を手に入れるため『演劇部』と偽って創部の準備を進めていた。しかし因縁ある一族の娘、千桜緑葉も『保健部』の創設を目論んでおり、部室の奪い合いを発端に、奇妙な推理勝負が行われることになってしまう。反目の果てに始まった交流は、やがて二人の心を穏やかに紐解いていくことになるのだが…。ポップなミステリーで彩られた、現代のロミオとジュリエットに舞い降りる、美しくも儚き愛の物語。


――感想――
現代のロミオとジュリエットなんて言うからどれほど悲壮な恋愛譚かと思えば、予想外にぬるくて途中何度も首を傾げた。
でもどうやら、はじめからシリーズが想定された作品らしく、これから悲劇の色が強くなっていく模様です。

綾崎先生の著作はこれが二冊目で、『舞原』ということ以外他作品との繋がりはわからないけど、特に困ることなく物語を楽しめた。オムニバス形式を取っていて、1話ごとに軽いミステリ要素が含まれている。
もう少しページ数を増やせなかったのかと物足りなさを感じる一方で、こざっぱりとした展開が爽やかな読後感を残してくれたりと、やっぱり作風は好みだなと思いました。

古くからお互いの間に因縁を抱える一族の末裔どうしが、部室の領有権をめぐって学校で起こる不可解な事件の謎解き勝負を繰り広げる。学内で多発する猫殺し、先生の恋人探し、破壊された部室扉の鍵、密室の家庭科室から消えたケーキなど事件そのものは難解ではないが、ときには協力し合い、ときには反発し合って、最初忌み嫌い合っていた二人がちょっとずつ距離を縮めていく様子に溜息が漏れました。
特に緑葉は直情的でこうと決めたら一直線に行動するタイプだから、吐季に対する自分の気持ちを知ってからの彼女はとても勇ましく、何度とりつく島もないほどあしらわれても諦めない一途な姿がとても素敵だった。

実際のところ吐季はまだほとんど緑葉に心を許していないのだけど、惰眠を貪ってるところを彼女に叩き起こされ、振り回され、悪態をつくことなんてしょっちゅうで、でも本当にわずかだけど本心を見せるようにもなる。吐季が緑葉に冷たくするのは、『舞原』と『千桜』という因縁の関係だけではなく、もっと人間としての根本の部分で抱えるものがあるのかもしれない。
彼の心情がわかりにくく描かれているので、そのあたりが非常にもどかしかった。

一つだけ読んでいて気になることがあった。なんだかキャラが不自然。気取りすぎというか、行動が理に適ってないというか。緑葉は好きになれたが、その他がなんとも。
とはいえ残された謎も多く、二人の恋の行方も気になるので続きはおそらく買うかな。
ここからなにを失い、なにを得るのか。許されざる恋ゆえに燃え上がる愛憎劇を期待しています。


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ビブリア古書堂の事件手帳 ~栞子さんと奇妙な客人たち~/三上延

世界の愛すべき馬鹿




ネタに困ったときの動画投稿。
なにこのハイクオリティ。
この動画、シリーズ化とかしてるんですけど、やっぱり外人ノリって好きだな。テンションのベクトルがアウトドア派というか。ごめん、自分でもなに言ってるかわからない。






ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
三上 延

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「わたし、古書が大好きなんです……人の手から手へ渡った本そのものに、物語があると思うんです……中に書かれている物語だけではなくて」



――あらすじ――
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。


――感想――
人気が急上昇していると噂の『ビブリア古書堂』読ませてもらいました。

これはいい。普段は恥ずかしがり屋な一面と、本のこととなると人智を超えた聡明さを見せる一面の、二つの素顔を持つ栞子さんを愛でるだけでも充分に読む価値はあるが、たわ言はともかく正真正銘面白かった。人気急上昇も納得。
文学少女のような作品を予想していて、似ている部分がなかったわけではないけれど、大枠でとらえればまったくの別ものだろうなあ。古書について嬉しそうに蘊蓄をたれる姿など、ところどころで遠子先輩と重なる部分もあったけれど。
ともかく、本を題材にしたお話には当たりが多いという事実を再度認識しました。

いわゆる安楽椅子探偵もの。とはいえ謎やその解法にはやや整合性に欠ける部分もあるけれど、栞子さんが導く答えが本を愛する者ならではというのがいい。
主人公との関係性もいい。幼い頃のトラウマから活字恐怖症になってしまった主人公にとって、栞子さんが語ってくれる本にまつわるお話は興味を引かれるものばかり。主人公が真剣に聴いてくれるもんだから、ついつい嬉しくなって……なんてやり取りがもうなんつーか、おまえら結婚しちゃえよ!

本書は四つの短編からなっていて、すべて合わせて一つの物語になるような形態が取られている。
章題はそれぞれ、「夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)」、「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」、「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」、「太宰治『晩年』(砂子屋書房)」
古書堂に本を持ち込んでくる人すべてに各々のドラマと謎があって、本の内容と絡ませながらそれを解き明かしていくという流れが、とても美しく優しさに満ちあふれていた。出版社の特徴も謎を解く鍵になっていたりして、そんなことまで知ってる栞子さんが素敵すぎる。いや、ここは作者が、と言うべきか。

個人的には三話がお気に入り。本を売ろうとする夫と、それを止めようとする妻のお話。
この夫婦は本当に素敵だなあ。売ろうとする理由も、止めようとする理由も、お互いを想い合ってるからこそってのがねえ。こういう夫婦にはお約束ではあるけど、やっぱり妻の方が一枚上手なんだよね。最後についた嘘がその証拠だ。

でも、あまりに聡明すぎる栞子さんに不安を覚え始めてからはだんだんと雲行きが怪しくなっていって、そこから生まれる主人公の葛藤と最後の決意には心を揺さぶられた。
ラストではそれまでの雰囲気をガラリと変えたサスペンスフルなシーンもあったりと、読み応えのある一冊でした。
いい意味でやきもきする幕引きだったので激しく続編希望。


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小説家の作り方/野崎まど

電波の始まり、始まりの電波




アニメ『電波女と青春男』のOP主題歌がニコ動に載せられていたので貼りつけてみました。
OP『Os-宇宙人』は神聖かまってちゃんがプロデュースし、エリオ役の大亀あすかさんが歌っています。

さて……。

原作タイトルがあれですし、主題歌が電波ソングになることは容易に想像できたんですが、これは……。
あー、あれか。エリオだって原作の初期は毒電波だったし、そのエリオが歌うんだから主題歌も当然毒d(ry
失礼だったので打ち消しまくりです。

とはいえ別に嫌いではないんですよ。ただ予想の斜め上を見てたら斜め下から鋭角に意表を突かれただけで。音程とかリズムのずらしもさすがにわざとでしょうし(わざとだよね、ね?)、それが妙に癖になったり。じわじわ来るね、じわじわ。声が可愛いのも評価ポイント。私の脳内イメージのエリオとは随分違いましたが、それはそれ。
万が一(であってほしい)OPが不評だったとしても、EDがありますからね!
やくしまるえつこさんの歌う『ルル』。これ以上にナイスなチョイスがあろうか、と原作ファンも唸らしてくれる最高の采配です。
しかしこのOP、映像がどうなるのか地味に不安だ。



初めて『Os-宇宙人』を聴いたとき、これのラストを思い出した。具体的には2″59~3″14の間。
もしかしなくてもこっちのほうが失礼か。






小説家の作り方 (メディアワークス文庫)小説家の作り方 (メディアワークス文庫)
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「いいえ、違います。私が書きたい物はたった一つです。物実さんにお会いする前から今日まで、私はそれだけが書きたいと思い続けてきたのです」
「じゃあやっぱり……」
 彼女は全くブレのない美しい首肯をして、一言答えた。
「“この世で一番面白い小説”です」



――あらすじ――
「小説の書き方を教えていただけませんでしょうか。私は、この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのです―」。駆け出しの作家・物実のもとに初めて来たファンレター。それは小説執筆指南の依頼だった。出向いた喫茶店にいたのは、世間知らずでどこかズレている女性・紫。先のファンレター以外全く文章を書いたことがないという紫に、物実は「小説の書き方」を指導していくが―。野崎まどが放つ渾身のミステリー・ノベル改め「ノベル・ミステリー」登場。


――感想――
きたきたー! 待ちに待った野崎まど先生の最新作!
毎月MW文庫の刊行予定を確認するのは5割方まど先生の新作目当てだから、情報が載ってたときは一人でパーティーです。(ちなみに、4割は入間先生で、残りの1割は掘り出し物)
そして発売まで気力を溜め込み、一気に読む!

というわけで『小説家の作り方』読ませてもらいました!

今回のテーマは、『この世で一番面白い小説』
またダイナミックですね。前巻の不死者に次いで今度は『この世で一番面白い小説』と、最近はネタの傾向がより荒唐無稽で極端になってるなあ。
けれどそれを独自の調理方法で一つの創作料理に仕上げるのが野崎まどという作家。今回もその腕は衰えていませんでした。

駆け出しの新人作家・物実のもとに初めて届いたファンレター。その内容に書かれた『この世で一番面白い小説』の秘密に惹かれ、物実はファンレターの差出人である謎の美少女・紫依代に小説の書き方を教えることに。
序盤から中盤にかけては二人の教室模様がメインに描かれ、いつになく大人しめな雰囲気。特に大きな動きも見られないまま驚くほど淡々と終盤へと進んでいく。むしろ気づかないうちに終盤へ差しかかっていたことに驚いた。

コンテ、遺言、不死と、今まではテーマとなった謎を解き明かそうと、登場人物たちが物語の流れに沿った動きを見せてくれたのだが、今回は終盤まで登場人物たちがなにか行動を起こすわけではない。
強いて言うなら、生まれてこのかた一度も文章を書いたことはないが『この世で一番面白い小説』のアイディアだけはある紫さんに、小説を書けるように指導することが謎解明のための行動ではあるのだけど、『この世で一番面白い小説』については物語の脇で触れるばかりで、途中から主眼が紫依代という謎の美少女にすり替わっていたような気がする。

ただ、紫依代の真実がそのまま『この世で一番面白い小説』の謎に繋がっているから、これはこれで正しい方法なのかもしれない。キャラもいいから、それだけでも充分に楽しめる。在原露なんて、残り半分にも満たないページ数でいきなり登場して、あれだけの強烈な印象を残すんだからな。
余談だけど、超常の技術を持つ七人のHNに戯言シリーズを思い出したのは私だけではないと願いたい。

そして終盤で突然明かされる真相がまた意地悪い。
小説教室で真剣に物実の説明を聞いていた紫さん。
初めての学祭ではしゃぐ紫さん。
炎の熱を肌で感じて、最高の笑顔で微笑む紫さん。
物実が紫さんとすごした時間のありとあらゆる場面のことを想うと、込み上げるやるせなさに胸が痛んだ。憎たらしいぐらい読者を突き放すのが上手だよねえ。

けれどそれよりも、物語の全貌が明らかになったとき私は心底怖いと思った。
あぁ、これだ。やっと戻ってきた、アムリタのあの感覚が。
ネタばれになるから、なぜ怖いのかその理由をここに書けないのが歯痒い。第一、この理由はあまり人に共感してもらえないような気がする。なにを怖いと思うかは、人によって個人差があるし。
ともかく、私は『こういうの』がどうしようもなく怖い。遠回しに言うなら、『ブレードランナー』の類が怖いんだ。
でも、同時に嬉しくもあった。ようやく待ち焦がれたアムリタの感覚が戻ってきたから。読み終わったあとに不自然なぐらい興奮してしまった。そういえば、この作品とアムリタには共通のキーワードがあるよね。だから似た感覚を得たのかもしれない。

今までに比べると若干勢いは落ちているものの、本質はなにも変わらず。今までどおりのまど先生でした。毎度ページ数は短いながらもこれだけ濃厚な読後感を残してくれる作家もなかなかいないでしょう。
次回はどんなネタをぶっ込んできてくれるのか。
いつか『この世で一番面白い小説』を書いてくれることを祈りつつ、楽しみにしていようと思います。


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空をサカナが泳ぐ頃/浅葉なつ

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ダ・ヴィンチ 2011年 04月号 [雑誌]ダ・ヴィンチ 2011年 04月号 [雑誌]

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ダヴィンチは気に入った内容のときにしか買わないのですが、今月は西尾維新特集だったので先日購入して早速読ませてもらいました。
その特集ですが、インタビューや、福嶋亮大さん・辻村深月さん・栗山千明さんによる寄稿や、海堂尊さんとの対談など予想以上に充実した内容となっていたので驚きました。
西尾維新が好きな方には嬉しい内容が盛りだくさんだったのではないでしょうか。まだ読んでないという方はぜひ最寄りの書店で一読あれ。『戯言日和』さんでも紹介されていますので参考にしてみてください。

特集の中で、来年から講談社ノベルスで新シリーズを開始するという情報がありました。しかもミステリー。
西尾維新の書く講談社ノベルスでのミステリー。いやー、楽しみですね。
あと、今月発売の『花物語』の表紙と簡単なあらすじが紹介されいていました。
驚いたことに、『花物語』は阿良々木くんが卒業したあとなんですね。しかしあらすじを読む限りでは非常に面白そうです。

もちろん西尾維新特集以外も楽しめます。
個人的には新星ミステリー作家クロニクルが面白かったです。
ただ、先日購入した『放課後探偵団』が紹介されていたのに、肝心の似鳥鶏先生が紹介されていなかったのが残念でした。知人によると似鳥先生の作品は面白いということなので気になっているのですが。

来月号は『図書館戦争シリーズ』文庫化記念で有川浩特集なので、どうやらまた買わないといけないようです。
図書館戦争文庫化嬉しいですね。何度もハードカバーを買おうとして我慢してきた甲斐がありました。






空をサカナが泳ぐ頃 (メディアワークス文庫)空をサカナが泳ぐ頃 (メディアワークス文庫)
浅葉 なつ

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「いつか魚が視界を埋め尽くしたら、その人は死んでしまうの」



――あらすじ――
出版社で多忙な毎日を送る中津藍。そんな彼が、煙草を吸いながら空を見上げると、一匹の魚が泳いでいた。目をこすっても魚は消えることなく優雅にヒレを揺らして通り過ぎていく。オフィスを街を家の中を悠々と泳ぐ魚たち。この鬱陶しい現象はなに?藍は魚を消す方法を探し始めるが、魚は増える一方で、しかも視界を埋め尽くすときに訪れる運命を聞かされ…。さまざまな想いを交差させ、ちょっと変な仲間たちが繰り広げる、未来を賭けた大騒動。第17回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞受賞作。


――感想――
先に謝っておかなければいけないことがあります。
以前『おちゃらけ王』の記事で「『メディアワークス文庫賞』は二つ」と書きましたが、正しくは三つでした(汗)。『典医の女房』を忘れていました。
大変失礼な間違いでしたね。申し訳ありません。

というわけで、第17回電撃大賞『二つ目』の『メディアワークス文庫賞』受賞作を読ませてもらいました。
その名も『空をサカナが泳ぐ頃』、略して『をサカナ』です。(←今考えた)

おー、よかった。
『おちゃらけ王』とはまったく違うジャンルだったけど、こちらもMW文庫らしい受賞作
無茶がなく、非常に堅実に作り込まれている。その分、『おちゃらけ王』の何が飛び出てくるかわからないビックリ箱のようなワクワク感はなかったけれど、代わりに物語に厚みがある。層が何重にも重なって、掘れば掘るほど味わい深くなっていく
どちらも充分に好みの作品だった。

ヒューマンドラマという言葉が打ってつけの作品だろうね。
とあることがきっかけで空中を泳ぐサカナが見えるようになってしまった中津藍は、アンラッキー男や元ダイバーや恋愛依存症のストーカー女など、同じくサカナが見えるようになってしまった人間たちと一緒に、サカナを視界から消す方法を探し始めるのだけど、その過程でそれぞれが自分のコンプレックスや悩みと向き合うようになり越えていくという構図がとても好きでした。

サカナが視界を埋め尽くしたら死んでしまうというのに、ともに行動する仲間たちはみんなどこか抜けていて、まるで危機感のない呑気な姿にときにはイラついてしまう藍だったけど、彼らの生き方が無気力と無感動しかなかった藍の生活に色を足してくれた。
時間を費やすだけの非生産的な毎日を送りながらも、昔の夢は諦め切れない。そんな気持ちを誤魔化して、自分にまで嘘をついて、才能がないからと言い訳してなにもかもをなかったことにしていた藍。
けれどサカナが見えるようになってから色々な人の空気に触れ、また、自分とは違う価値観や考え方を突きつけられることで物事を広く見つめられるようになっていく。視界を遊泳するサカナに空の広さを教えられ、少しずつ今まで見ていなかったものに目を向けるようになっていく。
最後に彼が見た空は、きっと澄み渡っていたんだろうなと思う。
そんな風に、それぞれがなにかを振り切って、なにかを取り戻してく姿が素敵でした。

徐々に繋がっていく人間関係も面白い。ラノベにはない大人どうしの絶妙な距離感が描かれていて、紛らわしい台詞や描写もあったりするから、もしや○○○は×××が好きなんじゃないだろうかと色々妄想すると楽しかった。

なぜサカナだったのかという疑問だけ解消されなかったのが最後にしこりを残した。一応の説明はあるけど、それだったら別にサカナじゃなくてもよかったんじゃないかと思える。
でも、根本的なことは考えても詮ないか。
それに。
見上げた空にサカナが泳ぐ光景は、きっと美しいだろうから。


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おちゃらけ王/朽葉屋周太郎

ニコニコ動画の掲載方法を覚えました。


今日は転写をしたり企画用原稿の直しをしたり友達に飯に誘われたり、あとまどマギのMAD動画を見て笑ったりしてすごしました。
↓これね


比較的まったりとした平和な一日だったかな。
それにしても、まどマギのMAD動画ってなんでどれもこれもクオリティ高いんだろうね。わけがわからないよ。






おちゃらけ王 (メディアワークス文庫)おちゃらけ王 (メディアワークス文庫)
朽葉屋 周太郎

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「で、一体何をしに来た」
「今日は嗚鼓宮祭だな」
 思わず、「ぐっ」と唸ってしまう。嫌な予感がしたのだ。
 恐る恐る視線を移すと、魔王の微笑にぶつかった。
「実はね、君に用心棒を頼みたいのだ」



――あらすじ――
かつては無類の馬鹿者だったが、いまは怠惰な大学生に成り果てていた名雪小次郎。そんな彼の前に、幼少からの腐れ縁「魔王」が現れ、言い放つ。「君に用心棒を頼みたいのだ」。
多くの人間に金を借りている魔王は、借金を取り立てる債鬼から逃げつづけなければならないのだという。やっかいな頼みを断る小次郎だったが、魔王の策略にはめられ、恐ろしい追っ手たちから無我夢中で逃げ回ることになる。その逃亡劇の果てに二人を待っていたものは――?
馬鹿で奇妙奇天烈で爽快なネオ青春グラフィティ! 電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉受賞作。


――感想――
昨年の第16回電撃大賞で野崎まどや有間カオルといった実力者を輩出した『メディアワークス文庫賞』。
正直、電撃文庫部門より信頼している賞だけど、今年はどんな作家が生まれるのかと期待しながら、受賞作2作のうちまずは1作目『おちゃらけ王』を読ませてもらいました。
そして、どうやら今回も大当たりのようです。

いい! ひじょーによかった!
MW文庫に多くの良作あれど、その中でも抜きんでた面白さではないだろうか。間違いなく秀作の部類。

作者の朽葉屋先生は1988年生まれと歳も近く、大学生のころに思い立って小説を書き始めたという点で私と共通点があり、親近感がわく。
ただ私と決定的に違うのは、本作が処女作でありながら受賞に至るほどの才能の有無だろうね。憎たらしいったらない(褒め言葉……だと思う)。しかも受賞が納得の面白さだから余計に悔しい。

よく言われている通り、『四畳半神話体系』の影がちらほら見える。作者がどう思ってるかは知らないけど、読者側としてはどうしても意識してしまう。
ただ一つ言えることは、それでもなおかつ面白い。
劣化なんて言われてるが、文体とキャラがどことなく似てるだけで、物語はまったく別物なのだからその言葉は当て嵌まらんだろう。

小学校からの腐れ縁である『魔王』に、『嗚鼓宮祭』という地域祭りで用心棒を頼まれた主人公・名雪小次郎。
嗚鼓宮祭では『嗚鼓宮定例回収会』と呼ばれる、いつの間にか魔王が定例行事にしてしまった催しが開かれることになっていた。それは『債鬼』と呼ばれる鬼役の人々が、魔王から今までの借金を返済してもらうために開かれる、いわゆる鬼ごっこのようなもの。
その用心棒を頼まれた名雪だが、自称ダルがリア王国の国王とのたまうほど怠惰な生活を送っていたため、面倒ごとは避けようと断るのだけれど、魔王の策略に嵌まって回収会に参加せざるを得なくなってしまう。
借金返済のため躍起になる債鬼たちと、そこに嗚鼓宮祭運営中に警察の代わりを務める通称『幻警団』が加わり、事態は三つ巴の闘争に。
おちゃらけた人々による、おちゃらけた鬼ごっこの幕が上がる。

ストーリーの流れは大体こんな感じ。
しかし何が面白いって、
流れるような文章の軽快さ。
おちゃらけ切った登場人物たちの愉快さ。
呆れるほど馬鹿なストーリーの痛快さ。

まず以てこの3要素だろうね。

そして何より面白い、というか胸を熱くさせてくれるのが、登場人物たちの扱う奇怪な能力の数々。それを本作では、『特技』と呼ぶ。
本文でも言及されている通り、速読の達人や素潜りの達人のように、他人には到底理解できないことを平然とやってのける人種というのは確実に存在する。本人からしたら原理とか関係なく当然のことなのだけど、周囲の人間には「どうなってんの?」と困惑してしまうような特技を持った人種だ。
それが本作では、たとえば煙草の煙で竜を形作って自在に操ったり、物理法則を無視してマントの中に大小様々のものを隠したり、さらには体を小さくしてティーカップの中に入ってしまうといった奇妙奇天烈な能力にあたる。
余計な説明は一切ない。必要ない。
これらの特技がより一層鬼ごっこを盛り上げてくれる。

登場人物が誰もかれもユニークで、私は全員好きだなぁ。
嗚鼓宮祭に参加する意志と目的はそれぞれ異なるけど、基盤には「馬鹿騒ぎが好きだ」という気持ちがある。
それは、面白いことなら何でも好きで、ときに目も当てられないような馬鹿をしでかすことがある私の趣味嗜好と通ずるものがあって、読んでいるだけで自分も嗚鼓宮祭の一員になっているような、そんな不思議な気分にさせられた。
本を読み終わるころには、まさに祭りのあとのように静けさと寂しさの入り混じった哀愁に包まれた。

ラストはやや強引であったものの、200Pにわたるただの鬼ごっこを飽きさせることなく読ませる力はすごい。ストーリーにもっと工夫があれば傑作だったかもしれない。
人間、何歳になっても童心を忘れちゃ駄目だ。それが人生を楽しむコツだと私は信じている。だから彼らのように馬鹿やって、笑われながら生きていこう。

朽葉屋先生の次回作に大いに期待。


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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
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