Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
星空に予知して 第一回/つかボン
- Posted at 2010.05.15
- l未分類
100記事突破記念!!!
前回の記事で、我がブログの記事数がなんと100を突破しました!!
ここまで頑張ってこられたのも、このブログを訪ねてくださるみなさんのおかげです!
そのお礼も込めて、記念に新作の連作短編を紹介しようと思います。
『クリーンおじさん』の続きより先に出すことになってしまいましたが、『クリーンおじさん』のほうも現在執筆中ですので、完成次第公開したいと思います。
もしかしたら、また何かの記念のときに公開することになるかもしれませんが。
今回は、『クリーンおじさん』のような一話完結形式ではなく、短く何回かに分けて一つの物語を作る形を取っていこうと思います。
ですので、今回も短くて物足りなさを感じるかもしれませんが、ご了承お願いしたいです。
それでは、「続きを読む」からどうぞ!
前回の記事で、我がブログの記事数がなんと100を突破しました!!
ここまで頑張ってこられたのも、このブログを訪ねてくださるみなさんのおかげです!
そのお礼も込めて、記念に新作の連作短編を紹介しようと思います。
『クリーンおじさん』の続きより先に出すことになってしまいましたが、『クリーンおじさん』のほうも現在執筆中ですので、完成次第公開したいと思います。
もしかしたら、また何かの記念のときに公開することになるかもしれませんが。
今回は、『クリーンおじさん』のような一話完結形式ではなく、短く何回かに分けて一つの物語を作る形を取っていこうと思います。
ですので、今回も短くて物足りなさを感じるかもしれませんが、ご了承お願いしたいです。
それでは、「続きを読む」からどうぞ!
『星空に予知して』
第一回
「わたし、予知能力手に入れちゃった」
何の前触れもなく、突然タマちゃんがそんなことを言い出した。
風鈴のさえずる音に耳を澄まし、縁側に寝そべって自重を支えることを放棄していたぼくは、その言葉に引っ張られるようにタマちゃんの方向に首を曲げる。
「って言ったらどうする?」
タマちゃんは意地悪く微笑んで、ぼくの意見を求める。
「ヨチノーリョク?」
「そ。予知能力」
「ヨチノーリョクってなに?」
タマちゃんは顔をしかめて、零点のテストを見るような眼差しでぼくの顔を射抜く。燦々と照り付ける太陽の光を遮るフリをして、タマちゃんの痛々しい視線から逃れるように左手で顔を覆う。
「せなっちは本当に何も知らないよね。予知能力ってのはね、未来で起こる事が分かるすっごい力なの」
えっへんという風に、腕を組んで誇らしげに胸を逸らす。
「未来が分かるの?」
「そう!」
「今日の夜ご飯も分かる?」
「朝飯前ね!」
「明日貰う通知表のセーセキは?」
「もちろ……あぁ! 明日終業式じゃん!」
顔がどんどん青白くなっていくタマちゃん。ぼくは腕とお腹の筋肉に力を入れて上半身を起こし、慌てふためくタマちゃんを諭すように肩を優しく撫でる。
「どうしようせなっち。通知表が返ってきちゃうっ」
「大丈夫だよ。タマちゃんはぼくと違って頭良いから」
「せなっちと比べないでよっ。もし悪かったらお父さんに怒られる」
酷いことを言うなぁ。ぼくだって理科のセーセキはタマちゃんに負けないのに。この前のテストだって百点だったし。
「そんなこと言って、いつも二重丸ばっかりじゃん」
「でも、この前クラスの女の子と喧嘩して先生に叱られたから悪く書かれてるかも。そんなのお父さんに見られたら、また……、また……」
怯えた表情で肩を震わす。去年、お父さんから受けた『説教』というやつを思い出しているのかもしれない。タマちゃんは『説教』について本当に怖かったと泣きそうな声色で語っていた。でも、ぼくは知っている。タマちゃんは強い女の子だから絶対に泣かないことを。ぼくはタマちゃんが泣いているところを見たことがない。
「そうだタマちゃん。ヨチノーリョクならタマちゃんのセーセキが分かるんじゃないの?」
我ながら素晴らしいアイディアだと思う。
「それはダメ!」あれ?
「なんでなんで?」
「そうゆうのは……ほら、大切なことだから予知しちゃいけないの。秘密なの。機密事項ってやつ」
キミツジコーってのはよく分からないけど、セーセキを予知するのはいけないことってのはよく分かった。おそらく、お母さんの作った夜ご飯を摘まみ食いするぐらい駄目なことなんだろう。
「けど、ぼくがさっきタマちゃんに聞いた時はもちろんって言わなかった?」
「い、言ってないよ? 何言ってんのせなっち」
「えー、んー、そうだっけー?」
「そうそう、そうだよ!」
んー、まぁいっか。タマちゃんが言うならその通りなんだ。
再び縁側に仰向けに寝そべり、空を仰ぎ見る。今日は雲一つ無い快晴。障壁が無いことにはしゃぐ夏の日差しが、容赦なく降り注いでぼくらの肌を焼く。遠くに聞こえる蝉の合唱が、空中に充満する熱気をより敏感に実感させる。
ぼくは夏が嫌いじゃない。夏は不思議と気分が高揚して開放的になれる。開放的になれるもんだから、夏は半袖半ズボンで過ごすのが当たり前だと思っていたけど、お母さんは何故か外出する時、長袖長ズボンを着ている。この前その訳を聞いてみたら、「紫外線対策よ、紫外線た、い、さ、く」と言っていた。お母さん曰く、シガイセンはお肌の敵で怖いものらしい。よく分からなかったから、聞き流す程度にしておいた。
明日の終業式が終われば、夏休みという偉大なイベントが待っている。夏休みが嫌いな人間なんてそうはいないと思うけど、ぼくもその例には漏れない。宿題は面倒だけど、宿題の鬱屈さよりも夏休みへの期待が先行して、興奮の種はぼくの心の中ですくすくと育っている。
お父さんに海に連れて行ってもらおうかな。その時は、タマちゃんも誘ってみようかな。
「ねぇ、せなっち。せなっちは夏休みが終わったらどうするの?」
え、何で夏休みじゃなくて夏休みが終わった後のことを聞くんだ? と疑問に思ったけど、深くは考えなかった。
「また学校が始まるから、三十分も歩いて学校に行くだけじゃないの?」
「うん、ま、そうだよね」
ぼくの答えに、タマちゃんが何故か憂いを帯びた表情で俯く。
「タマちゃんもでしょ?」
ぼくはそんな悲しそうなタマちゃんを直視出来ず、目線を逸らしながら少し喉を引きつらせて尋ねる。
タマちゃんは無言を貫き続ける。タマちゃんの様子に、ぼくはいよいよ正常を保ってはいられなくなって、「えっと、えっと」と手足をパタパタさせながら話題を変えようと頭の中を模索する。
「あっ、ねぇねぇタマちゃん。タマちゃんは結局、何をヨチしたの?」
必死さが伝わったのか、タマちゃんは俯いていた顔を上げてぼくを見つめる。ぼくはタマちゃんを元気づけるように、出来るだけ明るい笑顔で向かい合う。
「知りたい?」
「うん! 知りたい」
主人に尻尾を振る犬のように、ぼくは嬉々とした表情で身を乗り出す。そんなぼくにタマちゃんは、今にも消えてしまいそうな儚げな微笑みを向けてきた。背筋を伝う汗が自棄に冷たく感じられたのは、気のせいかもしれない。
タマちゃんは呟くように言った。
「夏休みが終わったら、わたしがどこか遠くの町にお引っ越しするってこと」
タマちゃんの言っていることが理解出来ず、ぼくは何も言うことが出来なかった。
蝉の鳴き声だけが、やたらうるさくぼくらの周りに響いていた。
スポンサーサイト
Trackback
Leave a comment
Comments
-
正直一話だけの感想を述べるのは難しいですが、楽しみにさせていただきます!
みーまーを想起した私は立派な入間症候群ww - Posted at 2010.05.15 (20:47) by ask (URL) | [編集]
-
面白いけど、なんか切なくなりそうなお話ですね。
楽しみに待ってます。
続きがとても気になります。
歌雨こころ - Posted at 2010.05.15 (22:42) by 歌雨こころ (URL) | [編集]
-
100記事達成お疲れさまです。
ほぼ毎日のように更新なされているので、毎日楽しみにしています。
この話はまだ序章といったところでしょうか?
これから物語が動きそうなので楽しみです。
続きを楽しみにしています。 - Posted at 2010.05.16 (05:48) by じたま (URL) | [編集]
-
コメントありがとうございました。
こんにちは。
いつも、お世話になっております。
100記事、おめでとうございます。
半年も経たずに100記事いくのは凄いです。
それってほぼ毎日書いてることに値しますもの。
私が100記事達成したのはだいたい1年ほど経ってからですもの。しかも、その時はラノベの感想なんて書いておりませんでした。
こうして、感想を書き続けて怒涛の更新速度を誇るブログがあると競争心が沸き上がりますね。
面白い記事を楽しみにしています。関連する記事がありましたら、トラックバックさせていただきますね。
今後ともよろしくお願いします。
自作小説は楽しく書いてる感じが伝わってきますね。
泣ける話になりそうで、私の好みっぽい匂いがぷんぷんします。
楽しみですなぁ。 - Posted at 2010.05.16 (16:20) by サイと (URL) | [編集]
-
Re: コメントありがとうございました。
askさん、コメントありがとうございます。
読んでいただきありがとうございます。
入間先生の文体に近づきましたか?
嬉しいような、悲しいような……。
入間先生は私の執筆の先生ではありますが、このままではただ真似ているだけになってしまうので、これからは自分の思うように書いてみた方がいいかもしれませんね。
これはまだプロローグですから、感想を書くの難しいですよね。
なのに、わざわざコメントしていただいて嬉しいです。
このシリーズに関しては、ペース遅めで行くので長い目で見守ってくださるとありがたいです。
歌雨さん、コメントありがとうございます。
読んでいただきありがとうございます。
今のところの予定では、切なくはなりますが暗くするつもりはありません。
爽やかなラストを飾れたらなと考えています。
楽しみにしていてください。
じたまさん、コメントありがとうございます。
私の記事を楽しみにしていただいて嬉しいです。
これからも一日一更新を目標に頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。
小説読んでいただきありがとうございます。
この話はまだまだ序章ですね。
第何回まで続くか分かりませんが、気長に待っていただけると嬉しいです。
次回も楽しみにしていてください。
サイとさん、コメントありがとうございます。
こんにちは。
こちらこそお世話になっています。
私自身も、もう100記事突破したんだ!と驚きましたw
一日一更新を目標にしている私としては、サイとさんの賞賛の言葉は何よりも嬉しいです。
サイとさんは当初ラノベの感想を書いていなかったのですね。それは驚きです。
でも、サイとさんのラノベのレビューはどれも面白いです。
これからも共に面白い記事を書いていけるように切磋琢磨していきましょう。
小説読んでいただきありがとうございます。
はい!
凄く楽しく書かせてもらっています。
今のところは、切なく、そして爽やかな物語にするつもりなので楽しみにしていただけると嬉しいです。 - Posted at 2010.05.16 (20:13) by つかボン (URL) | [編集]