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六百六十円の事情/入間人間

私と理性


マンションに隣人がいないことを良いことに、私の部屋のベランダと隣の部屋のベランダを区切る、『非常の際はここを破って隣戸に避難出来ます』と書かれた壁をぶち破ってやろうかと思った。

準備運動を開始したところで理性に妨げられた。

ちっ……
理性というやつはいつだって私の自由を制限する。
そろそろ決別すべきか……


六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)
入間 人間 

アスキーメディアワークス 2010-05-25
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 結局さ。結局さぁ。お題目とか哲学とか、語りとか決断とか。
 なんでもいいよ。どんな形でも、だれが与えてくれるものでもいいから。
 一つでも人生の過程を認められれば、少しは前向きになれるんだよ。
 人間ってそんなものね、ってね。



――あらすじ――
世の中には、いろんな人たちがいる。男と女。彼氏と彼女。親と子供。先生と生徒。そして爺ちゃんや婆ちゃんとか。その中には、「ダメ人間」と「しっかり人間」なんてのも。
あるところに、年齢も性別も性格もバラバラな「ダメ」と「しっかり」な男女がいた。それぞれ“事情”を持つ彼らが描く恋愛&人生模様は、ありふれているけど、でも当人たちにとっては大切な出来事ばかりだ。そんな彼らがある日、ひとつの“糸”で結ばれる。
とある掲示板に書き込まれた「カツ丼作れますか?」という一言をきっかけに。入間人間が贈る、日常系青春群像ストーリー。


――感想――
私はカツ丼は作れません。
でも一番好きな丼物はカツ丼です。

昨日の内に更新するつもりだったのに、どうやってこの感動を伝えようと試行錯誤しているうちに日を跨いでしまった。
そのため、こんな時間に更新です。

例によって画像が表示されないけど、そこはほら、入間先生への愛で幻視するから問題ないのですよ。
みなさんも入間先生への愛を糧に心の目で見てください。

それでは作品について述べていこう。
ちなみに、この本のタイトルの表記は『660²』にしようと思う。発音すればちゃんと「ろっぴゃくろくじゅーえんのじじょー」になるでしょ?
この表記方法は、とある崇高なるイルマニアが発案したもので、そのアイディアに感銘を受けた私も使わせてもらうことになりました。いやー、マジ尊敬です。

さて、何から書いていけばいいものか。
この作品に対する様々な想いが胸の中でミキサーにかけられてぐちゃぐちゃになっていて、正直言葉にするのが困難な状況になっている。
それでも、感想なのだから、本を読んで感じたこと抱いた想いを素直に綴っていこうと思う。


『プロローグⅠ』
『カツ丼は作れますか?』
そんな一言から始まるまさに物語の始まりであるプロローグ。まだまだ序章。焦ってはいけない。
それでも、これから火蓋を切る本編に期待を抱かざるを得ない皮きりだった。
プロローグを読んでいきなり驚かされた。
入間先生が三人称で書いてるよ!
全くの不意打ち。
入間先生の三人称とは多少なりとも違和感を感じるけど、いかなるときも新しいことに挑戦する入間先生らしい切り口だったと思う。

『While my guitar gently weeps』
タイトルを見てすぐにビートルズだと分かった。別に特別ビートルズに詳しい訳ではなく、偶々知ってただけなのだけど。
小さい頃から主人公になることを夢見て、大人になっても夢を忘れられず、ギターを携えて毎日のように一人歌い続ける女性のお話。
誰にでも自分が特別になれると思う時期ってあるよなぁ。私にもあった。
そんな訳だから、物語の女性に憧れたりするのだけど、静の『なにしてるんですか?』という問いかけには精神が参った。今の自分もなにしてるんだろうなぁって見直してみたくなる。
先生のくだりには、私の琴線に触れるものがあって涙腺が崩壊した。その出来事から前へ進もうとする女性の姿には、ロウソクの灯火のように儚いけど、だけど確かに熱を持った勇気を貰えた気がする。
あと、『フォレストガンプ』良いよね。あの作品は今でも私の中で名作として生き続けています。一番好きな映画俳優はトム・ハンクスですから。

ちなみに静は丹羽くんの親戚かな?

『生きてるだけで、恋』
おいおいおまえら、私にもその青春を分けてくれ!
主人公の少年の気持ちが痛いほど分かる。私にもそんな青春時代を過ごしたことがあった。……いや、ホントですよ?
人が人を好きになる理由なんてふとしたきっかけで充分なんだよ。好きになること自体が理由なんだから。
その感情は誤魔化すように自分に言い訳する主人公の姿こそ、まさに青春。
高校生は呼吸をする度に恋をする。その通り!
そしてその感情を認める第一歩も、主人公が起こした行動のようにふとしたもので良いんだなー、なんて考えさせてくれるお話でした。

それにしても、『童貞』や『処女』なんて言葉をあんな風に使ってくるとは。流石です。

『パタパタパタ』
相変わらず、入間先生の描く子供は聡いなー。
私がこの物語の主人公の少女ぐらいの頃の姿なんて、今では記憶の片隅にだって存在してないけど、この少女のようなことを考えていたのだろうか。でも、家出したいと思ったことはないな。
それにしたって、やはり少女の境遇には思うところがある。
母親だって別に子供に関心がない訳ではないのだろうけど、三拍子を刻むように日々を過ごしていたから、同じ毎日を無限ループさせてしまったんだろうなぁ。
三拍子の物語。
短いながらも、この話が一番特異性を持っていたと思う。

『愛とか祈りとか』
地球という惑星はまだまだ滅びないだろうけど、自分が死んでしまったら自分にとっての地球は滅びてしまう訳で、ならば愛と祈りで地球を救っちゃおうぜ! ってな話。
何となくサンボマスターの代表曲を思い出した。あまり関係はないかもしれないけど。
この話も短かったけど、凄く好きだなぁ。
地球救うなんて言ってる割に、日常の枠組みから漏れない小じんまりした雰囲気が好きだ。
それにしても、『探偵・花咲太郎』の中家ソウの登場だよ!
『花咲太郎』からは随分と成長しているみたいだけど。つまりこの作品は、入間先生の今までの作品からは結構な時間が経った後の時間軸上で描かれている物語ということか。
中家ソウのたるんだ受け答えがグッド。

『プロローグⅡ』
そして、ここでもう一度プロローグ。
徐々に今までの物語が絡み合ってきて、群像劇として本格的に物語が動き出した感じかな。
これはかなり興奮する。

『老人と家』
入間先生の作品を全て読んだ訳じゃないからはっきりしたことは分からないけど、入間先生が老人を語り手に持ってくるのって初めてじゃないの?
だとして、なしてこんなに違和感がないのか。
達観し過ぎです、入間先生。
町の中に自分が生きた証が少しずつ失われていき、自分の記憶さえ薄れていく。
曖昧になっていく自分の存在に、老いを感じるという寂寥感が溢れる物語だった。
そんな中出会った一人の少女が、自分が『生活』していることを実感させてくれる。
若いうちはメチャクチャやって自分の世界を変えるべき。本当にそう思う。

『Q.これはオフ会ですか? A.いいえ、カツ丼です』
そしてここで全てが繋がるのか。いろんな意味でね。
何だろうなぁ。タイトルからして素晴らしいと言わざるを得ないのですが、このラストの収束感に鳥肌が立った。
同時に、今まで胸の中でふわふわと雲のように落ち着きがなかった感情が、しっかりと実体を伴って心にストンと落ちた気がした。
人ってのは、愛だとか恋だとかで絆を繋いで前へ進んでいく生き物なんだなぁ。
繋ぐ役割を果たしたのはカツ丼だった、というだけの話なんだよ、たぶん。

エピローグ『What a Day』
何とゆう爽やかな締めくくり。
この流れるような視線のスクロールには、群像劇の本質が表れてるよなぁ。
この作品から考え得る最高の幕引き。
この本を読んでるみなさんが主役です。


総括。
入間先生よ、あなたは神ですか?
発売前に、群像劇なんて大丈夫なんだろうか? と少しでも心配してしまった自分が恥ずかしい。
こんな渾身の力作を、あっさりと市場に放り出していいのだろうか?
もっと大々的に世間に広まってもいいと思う。というか広まってほしい。

感じるものとか、考えることとか、思いだすこととか、いろいろあった作品だったけど。
ま、何と言うか。
明日から自分の世界でも変えてみようかな。

とりあえず手始めに。
カツ丼の作り方でも勉強しますか。


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探偵・花咲太郎は覆さない (メディアワークス文庫)
神様のメモ帳〈5〉 (電撃文庫)
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Comments

つかボンさん、こんばんは。
理性と決別するなら、福本先生の作品を読むのが良いですよ。
既に私はいくつかの理性とさよならしてますw

読みたい…かなり読みたい!!
私もこの作品を購入しようといつもの書店に行ったのですが、なかったです…
他に別の書店にも言ったのですが、ダメ…なぜ…

Posted at 2010.05.28 (03:36) by じたま (URL) | [編集]
本日は、あなたが主役です!
素敵なご感想、ごちそうさまでした。

自分もカツ丼は作れません。
というかほとんど何も作れません。
でも、食べるのは大好きです。

え?画像表示されてるじゃないですか。
もしかして、あれですか、自分は末期ですかそうですか。

『660²』気に言って頂けたようで、何よりです。
広げよう『660²』の輪!ですね。

おお!トム・ハンクスお好きですか!
自分も一番ではありませんが、大好きな俳優さんです。
やっぱりベストは『フォレスト・ガンプ』ですけど、『プライベート・ライアン 』『グリーンマイル』『ターミナル』もお気に入りです。

Q.入間先生よ、あなたは神ですか?
A.いいえ、人間です

ということですね、分かりますw

本当に書く度に巧くなっていくなぁ、と。それも恐るべき早さで。
昔の作品も大好きですけど、最近はもう本当、素晴らしいの一言です。
もう、読まれていたらあれなんですけど、『僕の小規模な奇跡』も入間さんの素敵な群像劇に仕上がってますので、是非読んでみてください。
ハードカバーなので少し値は張りますが、それに見合った価値は十二分にありますので。
と、宣伝はこれくらいにして。
>もっと大々的に世間に広まってもいいと思う。というか広まってほしい。
まったくまったくその通りでございます。
もっともっとたくさんの人が入間さんの魅力に気付いてくれたら、きっと世界は少しだけ、平和になるんじゃないかなぁって思います。

それでは入間さんの企画記事とやらに期待しておりますという応援メッセージで終わりの言葉とさせていただきます。
Posted at 2010.05.28 (19:11) by 天野寂 (URL) | [編集]
読書メーターにコメントした後に気づいたんですけど、内容がつかボンさんとちょっとかぶってました。
真似したわけじゃないんですよ。
でも、気を悪くしたならすみません。

プロローグの三人称は驚きましたね。
もしかしてこのまま三人称で進んでいくのかと思ったのですが、杞憂でした。
一人称でこその入間さんですよ。
それにしてもあれだけの登場人物を書き分けるなんて、改めて入間さんのすごさを見せつけられました。
一生ついきいきます!って感じです。

そして、あのラスト。
1本の映画を見終わった気分でした。
頭の中でエンドロールが流れてましたよ。

Posted at 2010.05.28 (20:18) by 半熟タマゴ (URL) | [編集]
良いですね~
そんなに面白いのか…
しかも大好物の偶像劇!?

買いたいですけど…
友達買うだろうからな~

でも絶対読みます!
Posted at 2010.05.28 (20:55) by tokuP (URL) | [編集]
最初読んだ時はかっこいいと思ったけど
理性をなくしちゃダメだろ、まったく
おっと全裸だった服を着なければ

なんですか、この入間ファンの心ガッツリ掴む作品は
今月メディアワークス文庫チェックしてなかったから
ノーマークでした
入間先生の三人称とかすごく見たいです
明日あたり買って来るかな
Posted at 2010.05.29 (01:34) by シャモ (URL) | [編集]
Re: タイトルなし
じたまさん、コメントありがとうございます。

それは良いことを教わりました!
私も早速福本先生の作品を読んで、理性とadiosしたいと思います。

本当にオススメなので読んでください!
かなり人気があるようなので中々見つからないかもしれませんが、時間をかけて探して読むだけの価値はありますよ!

天野寂さん、コメントありがとうございます。

素敵なコメントありがとうございました。

天野寂さんは、イルマニアとしては末期だと思います(良い意味で、ですよ?)。
天野寂さんに見えなくて誰が見るんだという話ですよ。

おかげさまで『660²』使わせてもらっています。
こんなアイディアまったく浮かばなかったので、本当に尊敬ですよ。
入間先生の作品らしく、捻られているのが好きです。

トム・ハンクス大好きですよ。演技の幅が広くてトム・ハンクスという人間に飽きないんですよね。
天野寂さんが挙げてくれた作品ももちろん素晴らしいと思います。
ヒューマンドラマが好きなので、『グリーンマイル』や『ターミナル』なんかは特にですね。
あと、少し最近の作品ですが、『チャーリー・ウィルソンズウォー』なんかもオススメですよ。

入間先生は多産することで経験を積み、実力を付けていってるんだなぁと思います。
天野寂さんの言うとおり、文章から執筆の上達度が滲み出てます。
来月以降刊行の新刊にも期待が湧きますよね。
『僕の小規模な奇蹟』も所有しているのですが、読むには至れてません。
入間先生の応援期間中に読もうかなと考えております。感想をブログに載せた時は、またよろしくお願いしますね、なんて宣伝してみるw
>もっともっとたくさんの人が入間さんの魅力に気付いてくれたら、きっと世界は少しだけ、平和になるんじゃないかなぁって思います。
何と素晴らしい意見なのか……!
改めて考えると本当にその通りだなと思います。読者の考え方に影響を与える本って、まさに入間先生の本のことを言うんだなって思いますもん!

応援の言葉感謝いたします。
大したことは出来ないかもしれませんが、入間先生への××だけは十二分に注ぎこみたいと思います。

半熟タマゴさん、コメントありがとうございます。

いえいえそんな!
半熟タマゴさんが『660²』を読んで、私と同じ意見を抱いてくれたことが嬉しいですよ。
気を悪くすることなんて一切ありません。

三人称に違和感を感じはするけど、それは入間先生の一人称が秀逸の上に見慣れているからであって、三人称の技術も素晴らしいものがありましたよね。
私も半熟タマゴさんの後ろに並んでついていきますw

ラストにはどんな言葉で飾っても伝えきれない感動がありました。
映画を見た気分というのはかなり相応しい言葉ではないかと思います。
むしろ映画化して欲しい!

tokuPさん、コメントありがとうございます。

とにかくこの作品に関しては素晴らしいとしか言いようがありません。
どれほど素晴らしいのかは、ぜひtokuPさんの目で確かめてもらいたいです。
どんなに言葉を尽くしても、読んで得られる感動には敵いませんから。

友人さんから借りるので構いませんので、ぜひ読んでください。

シャモさん、コメントありがとうございます。

シャモさん……実はもう理性を失っているのでは?
カッコいいことをこなすためには理性をどこかにぶっ飛ばさなければいけないというのが世の常ですから、なかなか辛いものがあります。

ガッツリ心を掴めたなら、感想を書いた側としてそれほど嬉しいことはありません。
MW文庫は、入間先生の作品はもちろんですが、他にも素晴らしい作品が多数刊行されるので要チェックですよ!
あと、一応勘違いのないように言っておきますと、三人称なのはプロローグだけで、その他は普段通り入間節全開な一人称ですよ。分かってたら申し訳ないです。
ぜひ読んでみてくださいなー。
Posted at 2010.05.29 (11:50) by つかボン (URL) | [編集]
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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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