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B.A.D1 繭墨は今日もチョコレートを食べる/綾里けいし

四畳半のスペクタクル


今更だけど、『四畳半神話体系』面白くない?
ちょっと原作買ってくる。


すいません。これだけです。


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綾里けいし kona

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「狂ってますね」
「何がだい? 小田桐君」
「さっきの、嵯峨雄介の様子ですよ」
「いや、そうでもないよ。あれくらいなら、理解の範疇だ。『嫌いな人間』に『不幸になれ』と思うのは、ある意味、最も健全な反応だからね」



――あらすじ――
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー!
「繭墨あざかは殺される運命にあるんだよ」。強力な異能者である『繭墨あざか』として生まれた少女は告げた。僕、小田桐勤の上司である彼女は、尊大な態度で真理しか口にしない。常にゴスロリ服を着て、チョコレートばかり食べ、僕が悲惨な目に遭おうとも笑っていられる少女だ。だけど、いつも僕の傍にいてくれる。だから願った。「生きたい」と――第11回えんため大賞「優秀賞」受賞作が堂々登場!


――感想――
第11回えんため大賞『優秀賞』受賞作読了。
これで第11回の受賞作は一通り読破したことになる。思い返してみると、やっぱりこの年の受賞作にははずれがなかったな、と改めて実感。

『残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー』と冠する通り、その内容は美醜で酷薄。
色で表すなら、表紙と同じく黒。チョコレートのように味わい深い黒だ。

狂気に満ちた人物たちを、さも当然のように描き切る文章力には圧巻。
グロテスクな表現の仕様は多義に渡り、好きな人にとっては心を鷲掴みにして引き摺りこまれるほどの魅力を有しているのは間違いない。

美少女でありながら、「可愛い」という形容詞が当てはまりにくいヒロインが登場するのもこの作品の特徴の一つだろう。しかし繭さんのシニカルな言動と価値観に一種の中毒性があり、それが彼女のキャラ、または女性としての魅力を引き立たせていることは、実際に本作品を読んでいただければ分かると思う。

また主人公の小田桐君と繭さんの、馴れ合いもせず皮肉を交換し合いながらも、いつだって側にいるのが当たり前といった特殊な関係性も特徴的である。
てか、繭さんのあの奇妙な帽子は何なんだろう。マジで気になる。

本編は短編形式なので、簡単な紹介をば。


『Story Ⅰ』
次から次へと人間の内臓がビルの屋上から落下してくるという奇妙な事件が街で発生する。
そんなとき、『繭墨霊能探偵事務所』に自殺したはずの姉の体が行方不明になったので探してほしい、という依頼が舞い込む。そんなお話。
本編初っ端から狂気染みた本作品の特色をものの見事に披露している。
この話を読んだだけでも、この本がどういった傾向の物語なのか容易く理解できるだろう。

『Story Ⅱ』
夜な夜な耳元で笑い声が響くという怪奇現象に苛まれる依頼主のもとへ、繭さんと小田桐君が謎を解き明かしに行くって話。怪奇現象の真相には、前妻とその娘の自殺が関わっていた。
これはゾクッとする。
謎の真相には早い段階で気付けるけど、改めて登場人物の感情を交えて伝えられると恐怖に背筋が凍る。
どこまで狂っていくんだ、この物語は……。

『Story Ⅲ』
自身の周辺で怪奇現象が多発して困っているから身辺警護してくれ、との依頼が事務所に舞い込む。体調を壊していた繭さんの代わりに小田桐君が依頼の解決に取り組むことに。
人魚姫の逸話をモチーフにしたお話。
この話に関しては共感できる。狂気染みているとはいえ、人間が心の弱さに付け込まれた際に見せる形振り構わない必死さには納得してしまう。
てか、この話に挿入されてた病気で寝込んでる繭さんのイラストだけは可愛かった。
だから何なんだあの帽子は。

『Story Ⅳ』
故郷の繭墨家の人間が事務所を訪れ、自分のことを犬だと蔑む醜い男を、繭さんと小田桐君の身の回りの世話役として置いていく。男との奇妙な共同生活の中で、徐々に露見し始める男の異常な性質に小田桐君が頭を悩ませる、ってな話。
『繭墨あざか』に取り憑かれた愚かな人間たちの悲壮な結末を、残酷に描いている。
この辺りで、心の擦り切れ具合が大変なことに。

『Story Ⅴ』
繭さんの姿にそっくり模した女性が何人も殺される連続殺人事件が起こる。事件の裏には、繭さんにとっても小田桐君にとっても因縁の相手となる、繭墨あさとの影が見え隠れしていた。
繭さんと小田桐君の過去が判明する、本巻の山場となる話。
繭さんも小田桐君も、過去から現在を通して何もかも狂っている。
その中でも、繭さんが小田桐君と共にいる理由、小田桐君が繭さんと一緒にいる理由、それは温かく優しくもないけど、確かな絆で繋がってるという事実が垣間見えて、やはりこの物語は美しいんだなと思い知らされる。



総括。
甘ったるい物語に飽きた、何か刺激が欲しい。そんな方はぜひこの作品を読んでもらいたい。きっと満足出来ると思う。ただし、心が疲弊することは覚悟の上で。

そして、心をすり減らしながら読み終わった後は、きっとこう思うはずだ。
あまーーーいチョコレート食べたいな、と。


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Comments

つかボンさん、こんばんは。
遅くなりましたが、5000HITおめでとうございます。
これからも頑張ってください。

B.A.D.読まれましたか~この作品はセンスが違いますね。
面白いとか面白くないとかそういうのじゃなく、もっと圧倒的な印象を受けました。
特にストーリーⅤはヤバいです。
残酷で救いも無く歪んでいるのですが、どうしようもなく美しい。
ラストのシーンの描写には震えました。
今月発売の3巻も非常に楽しみですね。
Posted at 2010.07.09 (02:52) by じたま (URL) | [編集]
これ気になってたんですよ
ココロコネクトキズランダムの栞にありましたよね
なんか綺麗でダークな感じの絵だなって印象が残ってます

確かにたまに甘い本に飽きる時ってありますよね
そうか
そんな時にはこんな感じの本を読めばいいのか
今度読んで見ます
Posted at 2010.07.09 (06:28) by tokuP (URL) | [編集]
やっと森見登美彦先生の面白さに気づきましたか!!
私が初めて読んだのは中2のときで、その本は走れメロスなどの意訳を載せたものでした。あぁ……メロスがあんなことにwww
他には夜は短し歩けよ乙女とかありますよね。もし読んでいないのでしたら必見です。

これは面白いですよね。私としてはこの年の、というより最近のえんためにハズレがないと思います。
じたまさんのプッシュで読み始めましたが、ダークが好きな私は終始ウハウハでした。内容は秀逸で舌を巻くしかなかったのですが(笑)
Posted at 2010.07.09 (20:48) by ask (URL) | [編集]
Re: タイトルなし
じたまさん、コメントありがとうございます。

> 遅くなりましたが、5000HITおめでとうございます。
> これからも頑張ってください。
ありがとうございます! これからも応援にお応えできるよう頑張らせてもらいます!

ようやく本作品を読むことができました。
確かに面白い、面白くないの価値基準で測るよりもむしろ、物語の特異性、そして作者の世界観と才能を味わうべき作品だと思いました。
憎悪と愛情の共存をここまで秀麗に描ける作家さんもなかなかいないのではないかと思います。
本当に第三巻も次巻ともに楽しみであります。

tokuPさん、コメントありがとうございます。

第11回の受賞作の中でも極めて異色な作品だと思います。
『空色』も『ココロコネクト』も秀逸ですが、本作品も『優秀賞』の称号に相応しい内容となっています。
作者の圧倒的な表現力に目が奪われますよ。

ラノベをもっと違う方法で楽しみたいと思ったときには最適な一品です。
機会があれば、どうぞ一読してみてください。

askさん、コメントありがとうございます。

いやはや、遅くなって申し訳ないです。
森見登美彦先生の才能に今まで気付けなかったなんて!
豊富な知識に基づいた巧みな言い回しに舌を巻いてしまいます。
走れメロスの意訳! うわっ、何それっ! すごく気になります。『夜は短し歩けよ乙女』も有名ですよね。いい機会なので購入して読んでみようと思います。

確かに最近のえんためにははずれがありませんね。ファミ通すげー。
ダークもたまに読むといい刺激になります。感化されてちょっとした物語を思いつてしまいましたしw
本当に素晴らしい作品でした。
Posted at 2010.07.10 (13:58) by つかボン (URL) | [編集]
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プロフィール

つかボン

Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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