Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
憧憬の先にあるもの/水鏡希人
- Posted at 2010.07.19
- lメディアワークス文庫
人間に見られてはいけない。
今話題の『借りぐらしのアリエッティ』を公開初日に観てきました!
友達と計画して息抜きも兼ねて観に行こうってことで、前売り券まで購入して臨みました。
息抜き息抜きって、最近勉強そっちのけで息抜きしかしてない気がする。てか、息抜きしすぎでもはや息抜きの意味を成してないという事実。
ま、戯言はこれぐらいにしといて。
アリエッティの素晴らしさに脱帽した! 久しぶりにジブリらしいジブリを観た気がする。
ストーリー、キャラデザ、作画、音楽、どれをとっても文句の付けどころがない。
外国の絵本が元ネタらしいけど、絵本の割に深いテーマを扱っているなと思ったけど、絵本だからこそ世の真理を捉えやすいんだろう。訴えかけられる内容にも胸を震わされるものがあった。
そしてアリエッティ役の志田未来ちゃんの声が当初予想していたよりも自然にマッチしてて驚き。未来ちゃん声優上手いなー。おかげでアリエッティの魅力がぐぐっと三割増し。
神木くんの声がケンジくんにしか聞こえなかったことは内緒でw
観ようかどうか迷っている方は、迷うぐらいならぜひ観てみてください!
きっと後悔はしないはずです!
――あらすじ――
異能力者の集団である百星衆に生まれた獅堂宗は、荒廃した世界で孤立した繁栄を続ける新東都に留学生という名目でやってくる。しかし、新東都では政府要人と同朋を狙ったテロが立て続けに起こっており、宗が配属された“調査二課”では、キャリアも年齢もいろいろのメンバーが、それぞれの思惑を抱えて働いていた。自分が思い描いていた新東都での生活からは程遠く、戸惑う宗。そして、宗は徐々に憧れの新東都で起こっている事件の真相に近づいていく。―そこで彼が見た光景とは。電撃小説大賞“金賞”受賞者・水鏡希人、渾身の力作。
――感想――
デビュー作『君のための物語』にて電撃小説大賞『金賞』を受賞した水鏡希人先生の新作ということで作者買い。
水鏡先生って『君のための物語』以外にも『静野さんとこの蒼緋』という作品を出してたんだ。今度読んでみようかな。
さて、期待していた新作なわけだけど、率直な感想を述べさせてもらうと「残念だった」の一言かな。
そりゃ『君のための物語』のような名作を毎回生み出すことは不可能に近いわけで、もちろんそのことは私も読む前から理解はしていたのだけど、それを差し引いても苦虫を噛み潰したような濁った感想しか出てこない。
それに加えて、伝えることもあまり出てこない。決して中身が乏しいわけではないのだけど、結局何が言いたかったのか確かな説得力が伴わないまま曖昧に終わってしまった感じ。
圧倒的な筆力は健在だった。前作刊行から本作刊行までの期間を考えると、内容も余程綿密に考え込まれたことも分かる。実際に設定は面白いと思った。
だがしかし、集め合わせた要素を全て丸々生かし切れていない印象を受けるんだよなぁ。
例えば、必要な材料は全て揃っているのに、煮込みが足りなくてせっかく揃えた材料の良さを極限まで出し切れず、味が浅くなってしまったシチューのようなものだと思う。
そうはいっても、現代世界、異能力、魔獣。
一見相容れないように思う単語群だが、これらを自然に共存させた世界観はやはり水鏡先生ならではの感性があっての賜物だろう。
その世界の中で、石頭なお役所、縦割り行政など今の日本の組織に見える汚点、つまりセクショナリズムや、人種差別、民族迫害といった現代の世界全体が抱える問題を一つのテーマとして訴えようとしている点についても評価できる。
登場人物に関しても、人間、異能力者、魔獣、思想、歴史などあらゆる因子に追い詰められた世界の中で、それでも組織の規律だとか上からの圧力だとかくだらないものに縛られる人々の心情も克明に描かれていて良かったと思う。
ただやはり、残念な感は否めない。
社会的な題材を扱いすぎているせいか、それとも淡々とした文章のせいか、評論を読まされている錯覚を覚える。このあたりが著者と読者の意識の相違なのかもしれない。
他がどう思うかは分からないけど、水鏡先生の文章は三人称よりも一人称の方が私は好きだとう事実は間違いない。
刊行数的に絶対的な経験数が足りないというのも一つの原因かもしれない。
作品を仕上げるにあたって、集められた材料が良質なだけに口惜しい気持ちではある。
あと、私の読み込みが足りないせいか、分からないままの謎がいくつか残ったんだけど。自分で想像してくれということなのだろうか。どうも煮え切らない感じだ。
個人的にはシリーズ化もありだと思う。シリーズ化を前提に書いていればもう少し救いはあったかもしれない。
何にせよ地力がある作者なのは間違いないので、次回作に期待したい。
関連商品
超能力者のいた夏 (メディアワークス文庫)
多摩湖さんと黄鶏(かしわ)くん (電撃文庫)
ミネルヴァと智慧の樹―始原(ウロボロス) (電撃文庫)
ヴィークルエンド (電撃文庫)
魔界探偵冥王星O―ペインのP (メディアワークス文庫)
by G-Tools
今話題の『借りぐらしのアリエッティ』を公開初日に観てきました!
友達と計画して息抜きも兼ねて観に行こうってことで、前売り券まで購入して臨みました。
息抜き息抜きって、最近勉強そっちのけで息抜きしかしてない気がする。てか、息抜きしすぎでもはや息抜きの意味を成してないという事実。
ま、戯言はこれぐらいにしといて。
アリエッティの素晴らしさに脱帽した! 久しぶりにジブリらしいジブリを観た気がする。
ストーリー、キャラデザ、作画、音楽、どれをとっても文句の付けどころがない。
外国の絵本が元ネタらしいけど、絵本の割に深いテーマを扱っているなと思ったけど、絵本だからこそ世の真理を捉えやすいんだろう。訴えかけられる内容にも胸を震わされるものがあった。
そしてアリエッティ役の志田未来ちゃんの声が当初予想していたよりも自然にマッチしてて驚き。未来ちゃん声優上手いなー。おかげでアリエッティの魅力がぐぐっと三割増し。
神木くんの声がケンジくんにしか聞こえなかったことは内緒でw
観ようかどうか迷っている方は、迷うぐらいならぜひ観てみてください!
きっと後悔はしないはずです!
![]() | 憧憬の先にあるもの (メディアワークス文庫) 水鏡 希人 アスキーメディアワークス 2010-06-25 売り上げランキング : 82058 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「前から住んでいる住民と新しく済んでいる住民のいざこざについては僕も簡単にあれこれ言えません。でも、彼女はこの都市で叶えたい夢があると話してくれました。ささやかなものかもしれませんが、僕にはそれはとても素敵な夢に思えました。僕たちがここにいるのは、そういう人たちを守るためなのではないでしょうか」
――あらすじ――
異能力者の集団である百星衆に生まれた獅堂宗は、荒廃した世界で孤立した繁栄を続ける新東都に留学生という名目でやってくる。しかし、新東都では政府要人と同朋を狙ったテロが立て続けに起こっており、宗が配属された“調査二課”では、キャリアも年齢もいろいろのメンバーが、それぞれの思惑を抱えて働いていた。自分が思い描いていた新東都での生活からは程遠く、戸惑う宗。そして、宗は徐々に憧れの新東都で起こっている事件の真相に近づいていく。―そこで彼が見た光景とは。電撃小説大賞“金賞”受賞者・水鏡希人、渾身の力作。
――感想――
デビュー作『君のための物語』にて電撃小説大賞『金賞』を受賞した水鏡希人先生の新作ということで作者買い。
水鏡先生って『君のための物語』以外にも『静野さんとこの蒼緋』という作品を出してたんだ。今度読んでみようかな。
さて、期待していた新作なわけだけど、率直な感想を述べさせてもらうと「残念だった」の一言かな。
そりゃ『君のための物語』のような名作を毎回生み出すことは不可能に近いわけで、もちろんそのことは私も読む前から理解はしていたのだけど、それを差し引いても苦虫を噛み潰したような濁った感想しか出てこない。
それに加えて、伝えることもあまり出てこない。決して中身が乏しいわけではないのだけど、結局何が言いたかったのか確かな説得力が伴わないまま曖昧に終わってしまった感じ。
圧倒的な筆力は健在だった。前作刊行から本作刊行までの期間を考えると、内容も余程綿密に考え込まれたことも分かる。実際に設定は面白いと思った。
だがしかし、集め合わせた要素を全て丸々生かし切れていない印象を受けるんだよなぁ。
例えば、必要な材料は全て揃っているのに、煮込みが足りなくてせっかく揃えた材料の良さを極限まで出し切れず、味が浅くなってしまったシチューのようなものだと思う。
そうはいっても、現代世界、異能力、魔獣。
一見相容れないように思う単語群だが、これらを自然に共存させた世界観はやはり水鏡先生ならではの感性があっての賜物だろう。
その世界の中で、石頭なお役所、縦割り行政など今の日本の組織に見える汚点、つまりセクショナリズムや、人種差別、民族迫害といった現代の世界全体が抱える問題を一つのテーマとして訴えようとしている点についても評価できる。
登場人物に関しても、人間、異能力者、魔獣、思想、歴史などあらゆる因子に追い詰められた世界の中で、それでも組織の規律だとか上からの圧力だとかくだらないものに縛られる人々の心情も克明に描かれていて良かったと思う。
ただやはり、残念な感は否めない。
社会的な題材を扱いすぎているせいか、それとも淡々とした文章のせいか、評論を読まされている錯覚を覚える。このあたりが著者と読者の意識の相違なのかもしれない。
他がどう思うかは分からないけど、水鏡先生の文章は三人称よりも一人称の方が私は好きだとう事実は間違いない。
刊行数的に絶対的な経験数が足りないというのも一つの原因かもしれない。
作品を仕上げるにあたって、集められた材料が良質なだけに口惜しい気持ちではある。
あと、私の読み込みが足りないせいか、分からないままの謎がいくつか残ったんだけど。自分で想像してくれということなのだろうか。どうも煮え切らない感じだ。
個人的にはシリーズ化もありだと思う。シリーズ化を前提に書いていればもう少し救いはあったかもしれない。
何にせよ地力がある作者なのは間違いないので、次回作に期待したい。
関連商品
超能力者のいた夏 (メディアワークス文庫)
多摩湖さんと黄鶏(かしわ)くん (電撃文庫)
ミネルヴァと智慧の樹―始原(ウロボロス) (電撃文庫)
ヴィークルエンド (電撃文庫)
魔界探偵冥王星O―ペインのP (メディアワークス文庫)
by G-Tools
スポンサーサイト
Trackback
Leave a comment
Comments
-
私は今度の日曜日に見に行こうと思ってます。
「インセプション」とセットで。
ところでつかボンさんは、1日に最高何本映画を見たことがありますか?
メディアワークス文庫は最近良作が多くてうれしいですね! - Posted at 2010.07.19 (22:40) by naomatrix (URL) | [編集]
-
どうもaskです。ケンジなんて言われたらまた見たくなるじゃないですか!!
志田未来さんは可愛いですよね~。声も好きです……が! 私にはななせとダリアンがいますのでwww
私も読みましたが、これはどうも出版元の判断ミスのような気がします。水鏡先生自身が「一冊で!」と言ったのなら著者の責任ですが、担当さんは見切る必要があったように思えます。
刊行間隔を気にしてしまったのが過ちかと。あの感動をくださった水鏡先生のためなら、あと半年くらい余裕なのに……。 - Posted at 2010.07.20 (19:18) by ask (URL) | [編集]
-
Re: タイトルなし
naomatrixさん、コメントありがとうございます。
返事遅れてしまって申し訳ありません。
おぉ、インセプション私も観たいです! 面白そうですよね。
私は映画好きなので一日四本とかなら観たことあります。naomatrixさんは、どのくらい観るのですか? 何だかものすごい数を観ているような気がしますが……。
あと、映画でオススメとかあったら教えてもらいたいです。ホラー以外でw
ちなみに私のオススメは『ショーシャンクの空に』です。マジで名作です!
本作品は残念でしたが、MW文庫は基本的に文学としてもレベルの高い作品を輩出していますよね。
毎月新刊が楽しみです。
askさん、コメントありがとうございます。
返事遅れてしまって申し訳ありません。
テストのことは触れないように!w
でも一応日中は猛勉強してるので大丈夫です! 今日はテスト一日目でしたが余裕でしたよ。
キャラは全く違いますが、ケンジの印象が強いのでどうしても幻聴がw
いやーななせとダリアンと比べちゃったら未来ちゃんが可哀想ですよw でも本当に未来ちゃんの声は魅力的でしたよ。
著者を生かすのが担当者の仕事な訳ですし、もっと期間が延びても良かったので、お互いにしっかりと相談をしてもらいたかったですね。
やはりもったいないという気持ちがどうしても付き纏いますね。 - Posted at 2010.07.22 (01:20) by つかボン (URL) | [編集]