Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
ダンタリアンの書架3/三雲岳人
- Posted at 2010.08.02
- l角川スニーカー文庫
リンク追加!
久しぶりにリンク追加でーす。
今回は笠希々さんが運営するブログ『アニメレビューブログ』様と相互リンクさせていただきました。
とにかくレビュー内容が素晴らしい。その作品の良い点・悪い点をしっかりと提示し、その上で自分の見解をまとめている。レビュー一つ一つに込められた管理人の熱意を読みとることができた。
ブログの目標は、「日本の全アニメレビュー」とのこと。いつか目標が達成される日が来ることを、祈りたいと思う。
笠希々さん、相互リンクありがとうございました。
――あらすじ――
ダリアンは荒れていた、怒っていた、罵倒していた。読み終えた王都で人気の流行小説第二巻。その三部作の最終巻が刊行されぬまま作家レニー・レンツは半年前に死んでいたのだ。だが、そのレンツからヒューイへ助力を求める手紙が。「奇怪な書物によって囚われた私たちを助けて欲しい」と―。ダリアンは手紙の住所に向かった、続きを書かせるために。人の欲望に応え、不思議な力を発揮する悪魔の本を巡る、少女の冒険、第3弾。
――感想――
この世に在らざるべき力を持つ“幻書”を廻る、青年と少女の美醜な物語第3弾。
相変わらずの面白さで、心地よく読ませてもらった。
このシリーズほど安心して読める作品もなかなかないだろう。基盤がしっかりしているから、趣旨もぶれないし、人物のキャラ像もぶれない。多少はみ出したところで、道筋が明確だからすぐに戻ってこれる。
シリーズ三巻まで読み進めてきて、私の中でこのシリーズに対する評価は不動のものとなった。
本当に好きだこのシリーズ。
ではでは、各話ごとに紹介をば。
『換魂の書』
ある日、ヒューイとダリアンのもとに「奇怪な書物によって囚われた私たちを助けて欲しい」と記された手紙が届く。しかしその送り主は、半年前に死んだはずの人気作家であり、同時にダリアンが続きを所望する、三部作からなる流行小説の著者であった。ってなお話。
普段は陶磁器のように無表情なダリアンが、いきなり「ふんぬー!」などと喚く姿が出てきてビックリ。ダリアンが感情を剥き出しにするなんて新鮮だ。そしてそのイラストがまた可愛い。頭を撫で撫でしたくなるな。
『換魂の書』の仕組みは残酷すぎる。一方を立てれば、一方が立たず。決してハッピーエンドを迎えることができない究極の絶望。
そしてその絶望を作り上げた張本人の動機の浅ましさには言葉も出ないが、妙に納得できる。あまりに人間臭くて、逆に肝を冷やした。
『忘却の書』
幻書の性質を知ったとき、一体どんな恐るべき真実が待ち構えているのかと思ったが、これは上手いこと虚を突かれた。ある意味で恐いけど。
器は小さいけど、ヒューイの叔父には男として好感が持てる。結婚とはかくあるべきと、身をもって教えてくれてるからなー。
ラストのオチはアメリカンコメディっぽくて笑えた。
それにしてもヒューイに結婚の話が持ち上がって機嫌を悪くするダリアンが可愛い。
『黄昏の書』
珍しく、語り手がヒューイとダリアンではなく、別の登場人物に視点を当てて物語が進行している。
いつもと世界観に違和感を覚えると思ったら、そういうことだったのね。
しかし幻書は恐ろしいなー。まさか虫にまで魔力が影響するなんて。
太眉可愛いよ、太眉。
『眠りの書』
ラジエル登場の断章回。
なかなかに奇妙な話ではあるが、姉ののんきさについつい笑いが。
ばっかみたい、ばっかみたい。
『魔術師の娘』
ヒューイが軍にいたころの後輩であるアルマンが、とある幻書を求めてヒューイのもとを訪れる。しかし、彼の前にも四人の男性が、それぞれ別々の幻書を譲ってほしいとヒューイのもとを訪れていた。そんなお話。
昔話『かぐや姫』を題材にしたお話。
幻書の力を頼らず、自らの魔力を行使する魔術師が出てきたりと、今後の展開に影響しそうな話であったが、できればあの魔術師には再登場してほしくないな。
それにしてもラストは酷過ぎるだろ、いや、面白かったけど。
予想外すぎて呆気にとられたよ。
『美女の世界』
よくあるよねー、こういう話。
「顔の美醜は、しょせん他人が決めること。自分の中に、他人からの評価以外の価値を見つけられなかった人間は、どのみち幸せになどなれないのです」
これは良い言葉だ。
『償いの書』
ついにキター! この瞬間が見たかったのだ!
鍵守であるヒューイと、黒の読姫であるダリアン。
焚書官であるハルと、銀の読姫であるフラン。
ついにこの二つのコンビが邂逅を果たす、が………………なんだこのユルさは!
ヒューイとダリアンは認めるなりサイドカーで突っ込んでくるハルは、確かに危険なのだけど、ダリアンとハルの会話(ダリアンの場合は一方的に罵倒しているだけだが)には思わず肩の力が抜けてしまう。
てか、ガイドブックを幻書と間違えるハルに、思わず萌えてしまった。
欲を言わせてもらうなら、もっとダリアンとフランの絡みが見たかった。同じ読姫なわけだし。まぁ、お互いあまり知らなかったみたいだけど。
そしてお約束の展開として、王都で起こっていたゾンビ事件を解決するため両コンビは共闘することに。
その過程でハルが背負う悲痛な過去が垣間見えたり、ヒューイの抜け目のなさが窺えたり。
そして事件の裏で糸を引いていたラジエルと教授の影もちらほらと。
しかし、ハルの強さに危険を感じたダリアンが、不安げにヒューイのコートを掴む仕草が堪らなく可愛い。
結果的にハルは待ちぼうけをくらっていたけど、ハルとヒューイが再び出会う日は来るのだろうか。
総括。
ダリアンの可愛さは相変わらずだし、物語もようやく進展を見せたので個人的には大満足。
あとがきを読んで知ったのだけど、当初このシリーズは、この三巻で区切りを付ける予定だったんだね。それが予想外の人気を博したために、シリーズ続行が決まったのだとか。
私はその当時、まだこのシリーズを知らなかったのでシリーズ続行に貢献できなかったけど、シリーズ続行に一役買ってくださったその当時の読者のみなさんには、感謝してもし尽くせませんね。
みなさんがいたことで、私はまだこのシリーズの続きを読むことができるわけですし。今私は、幸せをありがとう、という気持ちでいっぱいです。
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「敷物から便所雑巾に格下げかよ……って、ダリアン、きみ、何で怒ってるんだ?」
「べつに怒ってなどないのです」
嘆息混じりに質問するヒューイに、ダリアンが刺々しい声で返答した。
「おまえが女の写真を見て浮かれているくらいで、どうして私が怒らなければならないのですか。おまえはバカなのですか、このバカ。そんなに女の写真が好きなら、おまえは今夜からパンの代わりに写真でも食べてればいいのです」
――あらすじ――
ダリアンは荒れていた、怒っていた、罵倒していた。読み終えた王都で人気の流行小説第二巻。その三部作の最終巻が刊行されぬまま作家レニー・レンツは半年前に死んでいたのだ。だが、そのレンツからヒューイへ助力を求める手紙が。「奇怪な書物によって囚われた私たちを助けて欲しい」と―。ダリアンは手紙の住所に向かった、続きを書かせるために。人の欲望に応え、不思議な力を発揮する悪魔の本を巡る、少女の冒険、第3弾。
――感想――
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シリーズ三巻まで読み進めてきて、私の中でこのシリーズに対する評価は不動のものとなった。
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ある日、ヒューイとダリアンのもとに「奇怪な書物によって囚われた私たちを助けて欲しい」と記された手紙が届く。しかしその送り主は、半年前に死んだはずの人気作家であり、同時にダリアンが続きを所望する、三部作からなる流行小説の著者であった。ってなお話。
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そしてその絶望を作り上げた張本人の動機の浅ましさには言葉も出ないが、妙に納得できる。あまりに人間臭くて、逆に肝を冷やした。
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Comments
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この作品は本当にいいですよね~
ダリアンはかわいいし、話も面白いし、隙がないです。
どうやら、この作品アニメ化されるみたいですね。
それもあわせて、今後が楽しみです。 - Posted at 2010.08.03 (10:51) by じたま (URL) | [編集]
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シャモさんごぺんなさい
ダ(ブレス)、リ(ブレス)、ア(ブレス)、ァーーーーーン!!!
思いっきり溜めました。微妙な時間にこんばんは~。askでございます。
つかボンさん何か忘れてやいませんかそうです愛の雄叫びd(ry
ダリアンを見るとどうも見境が無くなるようです。ななせは静かに見守りたくなるのでしませんが。
暴走はこの辺で。
やっぱり最初が肝心、ということを感じさせてくれます。2人しかいないとはいえ、1巻でキャラの要素を確立していますからね。軸がブレないのも頷けます。
あのイラストにはどこぞのシャモさんではありませんが血の海に沈みかけました。撫でたくなるのではなく、撫でなければいけないという義務に駆られました。 - Posted at 2010.08.03 (20:46) by ask (URL) | [編集]
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Re: タイトルなし
じたまさん、コメントありがとうございます。
本当に隙がないですよねー。
ここまで軸をブレさせずに書きこなす作者は尊敬に値するかと。って、上から目線で何様なんだという話なんですが。
アニメ化は非常に楽しみです。高望は危険だと分かっているのですが、どうしても期待してやみません。原作が優秀だと、メディアミックスは大変だなー、なんて思っちゃうわけですが。
まぁ、何にせよ楽しみなことに変わりはありません。
askさん、コメントありがとうございます。
いやー、ダリアンに対する愛の雄叫びはaskさんの専売特許ですからね。私では役不足かと思いましてw
しかし、あるいは、そうはいっても、やはり、ことさらに、たとえば、おもうに、
ダ、リ、ア、ァーーーーーン!!!
つまりそういうわけです。
逆に言えば二人だけで物語を進行させないといけないわけですから、それで未だにマンネリ化に陥っていないというのは、もっと評価されるべきではないかと思います。作者の卓越した構成力と豊かな感性が窺い知れるというものです。
しかし、あのイラストは本当に末恐ろしいです。
おっしゃるように、撫でなければおかしいような、撫でないことが罪のように思えてくる愛らしさです。
血の海に沈むのも致し方がないかと。
- Posted at 2010.08.04 (01:05) by つかボン (URL) | [編集]