Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
バカが全裸でやってくる/入間人間
- Posted at 2010.08.27
- lメディアワークス文庫
読者レビュー・コンテスト『公認レビュー賞』受賞だってさ。
「だってさ」とか言ってるけど、ヤバい、めちゃくちゃ嬉しい。
えと、何のことか分からないと思いますけど、先日まで『ファミ通文庫FB Online』で行ってた読者レビューコンテスト結果が今日発表されてて、それに見事私が投稿したレビューが選ばれたということです。
よく分からない人は直接下のリンクからサイトに行ってみてください。百聞は一見に如かずです。
http://www.enterbrain.co.jp/fb/pc/02sp/1007d_review/index.html
ちなみに私は『空色パンデミック』賞です。
9月3日から受賞したレビューが公開されるらしいけど、ぶっちゃけた話自分がどんなレビューを投稿したか覚えてないんですよね。このブログで書いた二巻の感想にちょい色を付けただけだったような気がするのですが。そんなんで賞貰っていいのかよ、って話です。
でも本当に嬉しい。
受賞者には記念ノベルティグッズが贈られるらしいからもう舞い上がってます。家宝にしよう。絶対そうしよう。
けど冷静になってみると、最近嬉しいことがドミノ倒しのように連続して舞い込んでいるんだけど、これは幸福から一転、人生の終末のような不幸が訪れるフラグじゃないの? 運とか使い切っている感があるし。
素直に喜びたいけど、素直に喜べない。こえー。
――あらすじ――
僕の夢は小説家だ。そのための努力もしてるし、誰よりもその思いは強い。お話をつくることを覚えた子供の頃のあの日から、僕には小説しかなかった。けれど僕は天才じゃなかった。小説家になりたくて、でも夢が迷子になりそうで。苦悩する僕のもとにやってきたのは、全裸のバカだった。大学の新歓コンパ。そこにバカが全裸でやってきた。そしてこれが僕の夢を叶えるきっかけになった。こんなこと、誰が想像できた?現実は、僕の夢である『小説家』が描く物語よりも奇妙だった。
――感想――
ついにきたよ。きたんだよ、うん。やっときたんだよ。
全裸がやってきたんだよ!!
まず初めに言わせてもらうと、待った甲斐がありました! ……あ、ごめん。言い間違えた。
全裸で全裸を待った甲斐がありました!!
地元に帰省してたおかげで発売日に購入することが敵わず、早く読みたいとせかす疼きを涙に変えて枕を濡らした夜もありました。
けどずっと楽しみしていただけあって、ようやく読めた喜びは何物にも代え難い。
驚いたことにタイトルから当初予想していた内容とは真逆だった。「バカ」とか「全裸」とかってワードが並べばそりゃ入間先生ならではのおバカな感覚が味わえると思うよ。
でも実際は違った。おバカさなんて微塵もないよ。まぁ、不敵だったとは思うけど。
内容としてはこれで良かったと思う。てかこっちじゃないと嫌だ。
なんでかなー。なんで入間先生は私の弱いところを突くのが上手いんだろう。
しかも突く場所が急所とくるもんだから、刺激が強すぎて何度も瞼の奥が熱くなった。読んだのがバスの中だったから遠慮したけど、部屋で一人だったら間違いなくティッシュを枯らしてた。
本編は五編からなる短編集……ではないんだけど、まぁ、一つ一つの話は短編と言っても問題はないと思う。
でもそれぞれの話が独立してるわけじゃなく、ちゃんと繋がっているのはさすが入間先生。
やっぱりあれだね。本人も言ってたけど、入間先生は短編が好きなんだね。私も入間先生の短編は好きだからぜひこういう作品はこれからも多産していってもらいたい。実際、今のところMWで出してる作品は全部同じ形式だからね。
それでは各章の紹介をば。一応ネタばれはないと思いますので、もし見つけてしまったら連絡よろしくです。……しかしこの作品、感想難しいなー。
一章『バカが全裸でやってくる』
初っ端から鳥肌もんだわ、これは。
ひょっとするとこの章が本編でも一番の醍醐味なのかもしれないけど、もう何から何まで素晴らしい。
入間先生お得意の子供一人称から始まり、時は過ぎて大学生へ。
そしてフルティンのバカが現れてからは入間節フル稼働。おいてけぼりにされそうになることもしばしば。
笑えるのに、不意に考えさせられたり感動が襲ってきたりと、私の心もフル稼働でした。
何よりも『僕』が小説家を目指す一介の大学生だったのが嬉しい。影響されるというか感化されるというか、とにかく読んでいる最中にも関わらず小説が書きたくて仕方がなかった。
帯で推薦文書いてる甲斐抄子とは誰ぞや? と思ったら登場人物だったのか。そりゃ先生に聞いても分からないわけだ。
しかし甲斐抄子いいね。かなり好きなキャラです。包み隠さず本心をズバッと言ってのけるところが素敵。てかモロ入間先生じゃん。
甲斐抄子の紹介が入間先生自身を参考にしてるのだとしたら、みーまーが90万部で電波女が45万部ってことでいいのかな。……わーお、こいつはたまげた。
夢を追うことの過酷さ。
辛辣に書かれた文章はどれも私にとって目にも耳にも痛いものばかりだったのだけど、才能がなければやっぱり努力と環境に縋るしかないんだよね。例えそれが無駄なことなんだとしても。努力が出来ることも環境を変えられることも、一つの才能だと思うし。
どれだけどん底を這いつくばったって、心を全裸にして追い続けるしかない。バカは夢は追わなきゃ意味がないんだから。
一次選考『眠気と覚醒の狭間で』
描写がリアルすぎるw
ここに書かれてることを鵜呑みにしたらいけないんだろうけど、どうしても読者よりも小説家志望としての目で見てしまうんだよなぁ。
でも学園異能系が増えてるってのは割かし外れてない気がするけど。
二章『ぼくだけの星の歩き方』
ちょっと気になったんだけど、本編に出てくる小説家さんたちのPNって何が元ネタなんだろうね。
入間先生って新人賞に投稿してた時期は、賞ごとにPNを変えてたらしいけどそれの名残だったりするのかな? でも甲斐抄子とか明らかに女性だしそれはないかなー。
でもってこの章では「町高幸喜」という小説家の一人称で進められます。
甲斐抄子に続き、この人もあくが強い小説家さんだなー。
でもどこか親身になれるというか、やっぱり現実にも町高さんのように辛酸を嘗めさせられる小説家さんもいるんだななんて思う。
その辺りが人間味に溢れていて、考え方とかも人間臭さを匂わせてるからより一層好感が持てる。
てかこの人も入間先生の面影があるよねw 一人称がすべて入間先生の本心だとすると見えてくる裏の部分とかあってちょっと怖いよw
人生何がきっかけになるかなんて分からないんだよね。
現実は小説より奇なりって言葉は、そういうときのためにあるんだろうな。
二次選考『すし詰めフィクション』
こういうのもアリだなと思わせる読後感。うん、まさにそう。
喧嘩売っていようが図太かろうが腹立たしかろうが、最後にアリだと思わせりゃ勝ち。そしてそれを成し遂げるだけの力を持ってるんだよ、入間人間という人間は。
三章『エデンの孤独』
ほっほぅ、ついに幽霊視点とな?
許されるなら幽霊の殺し屋が活躍する話を書きたいって言ってたから、それの代替わりみたいなものなのかな。
まぁ経緯はどうあれ、呆れるほどどこまでも不敵な方だ。驚きと感心。その二重コンボに「参った!」と叫びたくなったのは当然として、今後入間先生にこれ以上をどう望めばいいんでしょうね? いやきっと、私たちの想像なんて軽く絶してくれるのでしょうが、それこそ入間人間は無限大の可能性を秘めてるとWikiあたりで書いた方が良いんじゃないのでしょうか。マジで。「入間人間∞」みたいな。
死者なのに生者より生き生きしているのはこれいかに。
幽霊となってもなお誰かの心の中で生き続ける。生き続けるために何かを生み出す。
それがつまりは小説というものであって、過去の偉人作家たちが今も私たちの心の中で生きているように、もしかしたらこの話はそういうことが言いたかったんじゃないかなと思います。
死は孤独でも、生き残った人たちの中で生きていれば、そこからまた何かを生み出せるんじゃないかな。伊香亜紀にとっては『何か』が『小説』だったんだよ。
三次選考『カルネアデスの板』
カルネアデスの板。……はー、なるほどねー。
三次選考の場だと、そういった激しい競争が繰り広げられてるんだ。
四章『ブロイラー、旅に出る』
一章、五章は比較対象にするには反則すぎるとして、それらを除ければ最も好きな話かも。
「芦原時計」。
PN良すぎるだろ。てか今まで登場した作家の中で一番入間先生を連想させる。早口なとことかさ。惜しいのは浴衣じゃなくてTシャツと短パンだったってことかな。あり得ないわけじゃないんだろうけど。
『ブロイラー』って自称が皮肉が効いてて何とも。入間先生もこんな風に迷ったり不安になったりしたことがあるのかな。……当然か。入間先生だって人間だし。
でもそう考えると、やっぱり何が人生の転機なるのか分からないもんだね。職業とか身分とかそんな確かなものじゃなくて、心境っていう不確かなもの関しての話ね。
でも不確かなものって、確かなものと違って決められた形がないからその人次第でいかようにも変えられる。だからこそ不安になったりするけど、人間は心のあり方一つでどんな状況からでも前向きになれるんだ。どんな風にでも変わっていけるんだな、って思った。
てか橘エイジw
ちゃっかりしてんな。
最終選考『わたしはここで落とされました』
タイトルw 辛いからやめてーw
そうか。そうだよね。同業者が選考委員をすればそりゃ当然そう思うわな。
五章『バカが全裸でやってくる』
これはやられたよ本当に。
泣いた。ボロ泣き。バスの中だったから表面上じゃなく心で泣いた。
でも違うんだよ。泣けるとかじゃなくてさぁ、本当はもっと強い意志のこもった話なんだよ。
語るだけの夢をバカにするやつとかいるけど、夢も語れないでいろんな可能性を諦めてきたやつのほうが何倍もカッコ悪い。夢に生きることがバカなら、バカで良いよ。もう小説バカで良いよ。
バカになって全裸になっても夢だけは捨てなかったら、それだけで誇れると思う。
とにかくこの章に関してはあまり語りたくない。語れないって表現した方が正しいかな。
ぶっちゃけ、何をどう感じたとか説明できないんだよね。
こればっかりは、実際に読んでくださいとしか言えません。
総括。
あらすじがまた不敵すぎて、もうどう収拾つければいいのか分かりません。私の力量不足です。
結局、何も終わってないし、始まってもないんだよね。でも読者の想像に先を任せる演出は嫌いじゃないです。
そして本編を読み終わって効いてくるのが、読み始める前に誰もが目にしたはずの甲斐抄子の推薦文。
「……あー……へー……ほー……」ってな具合で言葉が出ませんでした。つまり、あれかな。この本自体が……ってことなのかな。鳥肌やべー。
一つだけ言っておきたいのだけど、上記で「部屋で一人だったら間違いなくティッシュを枯らしてた」って書いたけど、人によっては涙を流すほどの物語というわけではないと思う。
感動する小説といえば多くあるけど、とりあえず私に馴染み深い『文学少女』などは涙を誘うことを目的として書かれた小説だから、そりゃ誰が読んでも感動するわけで、つまり印象としては表面的な感動をもたらすって感じ。
だけどこの『バカ全裸』は特定の人、例えば私のような小説家を目指す人にとっては心に直接触れられるような生々しい感動がもたらされる。物語の内容がリアリティに富んでいる分、それはより強く実感できる。読む人によってはこれほど涙を流す作品もないと思う。
御託を並べてしまったけど、理屈じゃないよ、これは。
なんか今回は感想と呼ぶにはあまりにおそまつな内容になってしまったのだけど、書きたいことを書き連ねただけだから当然かな。感情の垂れ流しです。
さて、あとがきでも言及されてるとおり、バカは誰の元に来たんだろうね。
間違いなく私の元にはバカが来ました。
つまり、私はこの小説に恋をしたってことです。
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「だってさ」とか言ってるけど、ヤバい、めちゃくちゃ嬉しい。
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ちなみに私は『空色パンデミック』賞です。
9月3日から受賞したレビューが公開されるらしいけど、ぶっちゃけた話自分がどんなレビューを投稿したか覚えてないんですよね。このブログで書いた二巻の感想にちょい色を付けただけだったような気がするのですが。そんなんで賞貰っていいのかよ、って話です。
でも本当に嬉しい。
受賞者には記念ノベルティグッズが贈られるらしいからもう舞い上がってます。家宝にしよう。絶対そうしよう。
けど冷静になってみると、最近嬉しいことがドミノ倒しのように連続して舞い込んでいるんだけど、これは幸福から一転、人生の終末のような不幸が訪れるフラグじゃないの? 運とか使い切っている感があるし。
素直に喜びたいけど、素直に喜べない。こえー。
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「なにを言われたか知らんが、オレからも一つ聞いておいてやる」
「質問するのに偉そうなやつだな……」
「お前まさか、自分が小説家になれないなんて思ってないよな?」
――あらすじ――
僕の夢は小説家だ。そのための努力もしてるし、誰よりもその思いは強い。お話をつくることを覚えた子供の頃のあの日から、僕には小説しかなかった。けれど僕は天才じゃなかった。小説家になりたくて、でも夢が迷子になりそうで。苦悩する僕のもとにやってきたのは、全裸のバカだった。大学の新歓コンパ。そこにバカが全裸でやってきた。そしてこれが僕の夢を叶えるきっかけになった。こんなこと、誰が想像できた?現実は、僕の夢である『小説家』が描く物語よりも奇妙だった。
――感想――
ついにきたよ。きたんだよ、うん。やっときたんだよ。
全裸がやってきたんだよ!!
まず初めに言わせてもらうと、待った甲斐がありました! ……あ、ごめん。言い間違えた。
全裸で全裸を待った甲斐がありました!!
地元に帰省してたおかげで発売日に購入することが敵わず、早く読みたいとせかす疼きを涙に変えて枕を濡らした夜もありました。
けどずっと楽しみしていただけあって、ようやく読めた喜びは何物にも代え難い。
驚いたことにタイトルから当初予想していた内容とは真逆だった。「バカ」とか「全裸」とかってワードが並べばそりゃ入間先生ならではのおバカな感覚が味わえると思うよ。
でも実際は違った。おバカさなんて微塵もないよ。まぁ、不敵だったとは思うけど。
内容としてはこれで良かったと思う。てかこっちじゃないと嫌だ。
なんでかなー。なんで入間先生は私の弱いところを突くのが上手いんだろう。
しかも突く場所が急所とくるもんだから、刺激が強すぎて何度も瞼の奥が熱くなった。読んだのがバスの中だったから遠慮したけど、部屋で一人だったら間違いなくティッシュを枯らしてた。
本編は五編からなる短編集……ではないんだけど、まぁ、一つ一つの話は短編と言っても問題はないと思う。
でもそれぞれの話が独立してるわけじゃなく、ちゃんと繋がっているのはさすが入間先生。
やっぱりあれだね。本人も言ってたけど、入間先生は短編が好きなんだね。私も入間先生の短編は好きだからぜひこういう作品はこれからも多産していってもらいたい。実際、今のところMWで出してる作品は全部同じ形式だからね。
それでは各章の紹介をば。一応ネタばれはないと思いますので、もし見つけてしまったら連絡よろしくです。……しかしこの作品、感想難しいなー。
一章『バカが全裸でやってくる』
初っ端から鳥肌もんだわ、これは。
ひょっとするとこの章が本編でも一番の醍醐味なのかもしれないけど、もう何から何まで素晴らしい。
入間先生お得意の子供一人称から始まり、時は過ぎて大学生へ。
そしてフルティンのバカが現れてからは入間節フル稼働。おいてけぼりにされそうになることもしばしば。
笑えるのに、不意に考えさせられたり感動が襲ってきたりと、私の心もフル稼働でした。
何よりも『僕』が小説家を目指す一介の大学生だったのが嬉しい。影響されるというか感化されるというか、とにかく読んでいる最中にも関わらず小説が書きたくて仕方がなかった。
帯で推薦文書いてる甲斐抄子とは誰ぞや? と思ったら登場人物だったのか。そりゃ先生に聞いても分からないわけだ。
しかし甲斐抄子いいね。かなり好きなキャラです。包み隠さず本心をズバッと言ってのけるところが素敵。てかモロ入間先生じゃん。
甲斐抄子の紹介が入間先生自身を参考にしてるのだとしたら、みーまーが90万部で電波女が45万部ってことでいいのかな。……わーお、こいつはたまげた。
夢を追うことの過酷さ。
辛辣に書かれた文章はどれも私にとって目にも耳にも痛いものばかりだったのだけど、才能がなければやっぱり努力と環境に縋るしかないんだよね。例えそれが無駄なことなんだとしても。努力が出来ることも環境を変えられることも、一つの才能だと思うし。
どれだけどん底を這いつくばったって、心を全裸にして追い続けるしかない。バカは夢は追わなきゃ意味がないんだから。
一次選考『眠気と覚醒の狭間で』
描写がリアルすぎるw
ここに書かれてることを鵜呑みにしたらいけないんだろうけど、どうしても読者よりも小説家志望としての目で見てしまうんだよなぁ。
でも学園異能系が増えてるってのは割かし外れてない気がするけど。
二章『ぼくだけの星の歩き方』
ちょっと気になったんだけど、本編に出てくる小説家さんたちのPNって何が元ネタなんだろうね。
入間先生って新人賞に投稿してた時期は、賞ごとにPNを変えてたらしいけどそれの名残だったりするのかな? でも甲斐抄子とか明らかに女性だしそれはないかなー。
でもってこの章では「町高幸喜」という小説家の一人称で進められます。
甲斐抄子に続き、この人もあくが強い小説家さんだなー。
でもどこか親身になれるというか、やっぱり現実にも町高さんのように辛酸を嘗めさせられる小説家さんもいるんだななんて思う。
その辺りが人間味に溢れていて、考え方とかも人間臭さを匂わせてるからより一層好感が持てる。
てかこの人も入間先生の面影があるよねw 一人称がすべて入間先生の本心だとすると見えてくる裏の部分とかあってちょっと怖いよw
人生何がきっかけになるかなんて分からないんだよね。
現実は小説より奇なりって言葉は、そういうときのためにあるんだろうな。
二次選考『すし詰めフィクション』
こういうのもアリだなと思わせる読後感。うん、まさにそう。
喧嘩売っていようが図太かろうが腹立たしかろうが、最後にアリだと思わせりゃ勝ち。そしてそれを成し遂げるだけの力を持ってるんだよ、入間人間という人間は。
三章『エデンの孤独』
ほっほぅ、ついに幽霊視点とな?
許されるなら幽霊の殺し屋が活躍する話を書きたいって言ってたから、それの代替わりみたいなものなのかな。
まぁ経緯はどうあれ、呆れるほどどこまでも不敵な方だ。驚きと感心。その二重コンボに「参った!」と叫びたくなったのは当然として、今後入間先生にこれ以上をどう望めばいいんでしょうね? いやきっと、私たちの想像なんて軽く絶してくれるのでしょうが、それこそ入間人間は無限大の可能性を秘めてるとWikiあたりで書いた方が良いんじゃないのでしょうか。マジで。「入間人間∞」みたいな。
死者なのに生者より生き生きしているのはこれいかに。
幽霊となってもなお誰かの心の中で生き続ける。生き続けるために何かを生み出す。
それがつまりは小説というものであって、過去の偉人作家たちが今も私たちの心の中で生きているように、もしかしたらこの話はそういうことが言いたかったんじゃないかなと思います。
死は孤独でも、生き残った人たちの中で生きていれば、そこからまた何かを生み出せるんじゃないかな。伊香亜紀にとっては『何か』が『小説』だったんだよ。
三次選考『カルネアデスの板』
カルネアデスの板。……はー、なるほどねー。
三次選考の場だと、そういった激しい競争が繰り広げられてるんだ。
四章『ブロイラー、旅に出る』
一章、五章は比較対象にするには反則すぎるとして、それらを除ければ最も好きな話かも。
「芦原時計」。
PN良すぎるだろ。てか今まで登場した作家の中で一番入間先生を連想させる。早口なとことかさ。惜しいのは浴衣じゃなくてTシャツと短パンだったってことかな。あり得ないわけじゃないんだろうけど。
『ブロイラー』って自称が皮肉が効いてて何とも。入間先生もこんな風に迷ったり不安になったりしたことがあるのかな。……当然か。入間先生だって人間だし。
でもそう考えると、やっぱり何が人生の転機なるのか分からないもんだね。職業とか身分とかそんな確かなものじゃなくて、心境っていう不確かなもの関しての話ね。
でも不確かなものって、確かなものと違って決められた形がないからその人次第でいかようにも変えられる。だからこそ不安になったりするけど、人間は心のあり方一つでどんな状況からでも前向きになれるんだ。どんな風にでも変わっていけるんだな、って思った。
てか橘エイジw
ちゃっかりしてんな。
最終選考『わたしはここで落とされました』
タイトルw 辛いからやめてーw
そうか。そうだよね。同業者が選考委員をすればそりゃ当然そう思うわな。
五章『バカが全裸でやってくる』
これはやられたよ本当に。
泣いた。ボロ泣き。バスの中だったから表面上じゃなく心で泣いた。
でも違うんだよ。泣けるとかじゃなくてさぁ、本当はもっと強い意志のこもった話なんだよ。
語るだけの夢をバカにするやつとかいるけど、夢も語れないでいろんな可能性を諦めてきたやつのほうが何倍もカッコ悪い。夢に生きることがバカなら、バカで良いよ。もう小説バカで良いよ。
バカになって全裸になっても夢だけは捨てなかったら、それだけで誇れると思う。
とにかくこの章に関してはあまり語りたくない。語れないって表現した方が正しいかな。
ぶっちゃけ、何をどう感じたとか説明できないんだよね。
こればっかりは、実際に読んでくださいとしか言えません。
総括。
あらすじがまた不敵すぎて、もうどう収拾つければいいのか分かりません。私の力量不足です。
結局、何も終わってないし、始まってもないんだよね。でも読者の想像に先を任せる演出は嫌いじゃないです。
そして本編を読み終わって効いてくるのが、読み始める前に誰もが目にしたはずの甲斐抄子の推薦文。
「……あー……へー……ほー……」ってな具合で言葉が出ませんでした。つまり、あれかな。この本自体が……ってことなのかな。鳥肌やべー。
一つだけ言っておきたいのだけど、上記で「部屋で一人だったら間違いなくティッシュを枯らしてた」って書いたけど、人によっては涙を流すほどの物語というわけではないと思う。
感動する小説といえば多くあるけど、とりあえず私に馴染み深い『文学少女』などは涙を誘うことを目的として書かれた小説だから、そりゃ誰が読んでも感動するわけで、つまり印象としては表面的な感動をもたらすって感じ。
だけどこの『バカ全裸』は特定の人、例えば私のような小説家を目指す人にとっては心に直接触れられるような生々しい感動がもたらされる。物語の内容がリアリティに富んでいる分、それはより強く実感できる。読む人によってはこれほど涙を流す作品もないと思う。
御託を並べてしまったけど、理屈じゃないよ、これは。
なんか今回は感想と呼ぶにはあまりにおそまつな内容になってしまったのだけど、書きたいことを書き連ねただけだから当然かな。感情の垂れ流しです。
さて、あとがきでも言及されてるとおり、バカは誰の元に来たんだろうね。
間違いなく私の元にはバカが来ました。
つまり、私はこの小説に恋をしたってことです。
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バカが全裸でやってくる(メディアワークス文庫)
バカが全裸でやってくる (メディアワークス文庫)(2010/08/25)入間 人間商品詳細を見る 入間人間月間継続中。 今回はついに・・・「バカが全裸でやってくる」(入間人間著/メディアワークス文庫)のレビューだ!! - Posted at 2010.12.05 (21:54) by 読書感想未満、駄文以上。
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Comments
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すげーーーー!!!
読者レビュー・コンテスト『公認レビュー賞』おめでとうございます。
この企画があるのは知っていたのですが、まさか身近に受賞者が現れるとは…!流石です。
今のうちに、サインとかもらっておいたほうがよさそうですね。
本当におめでとうございます。
「バカが全裸でやってくる」この感想を見る限りどうやら、面白そうですね。
今は、ベントーの6巻を消化中なので、それが終わったらそっこーで読みます。
- Posted at 2010.08.28 (02:02) by じたま (URL) | [編集]
-
バカが全裸でぶちまける
おめでとうございます!
当該作品は未読なんですけど、9/3を楽しみに待ってようと思います。
つかボンさんも色々とPNをお持ちですよね。
ラジオの時の『トイトイ』や今回の『雨村臣』、自分が知っているだけでも結構あります。
デビューする際のPNはもう決めてあったりするんですかね?
で、関連して入間さんのPNコロコロ変化についてなんですけど、それが一番あり得そうな気がします、思い当たらなかったのが悔しいですが。
「入間人間∞」追加しとかなきゃですね。
でも見た目的には「入間∞人間」の方が良いかな、と思います。
なんかカップリングみたいになっちゃいますがw
内容について、なんですけど、こういうネタバレに考慮した感想ブログにコメントするのは尻ごみしてしまいます。
自分の場合、いつ口を滑らせるか分かりませんから。
それでは、慎重にいきます。
五章に関して語れないってのは同感です。
言葉にしても感じたことの一割も伝えられないというか、どうしても劣化してしまいますよね。
本当、読んで叩きのめされてください、としか言いようがありません。
特定の人って一番は小説家志望の人だと思いますが、それ以外にも夢を追いかけている人、かつて夢を諦めた人、諦めずに夢を叶えた人、そんな人たちにも刺さり方は違えど、ぐりぐりっと突き刺さり、知らず涙を流してしまうのではないか、と思いました。
十年後、二十年後、読み返した時、今とは違う涙が頬を伝うんだろうなぁ、未来の自分はどんな思いを抱くのか、と色々と考えたりもしてしまいます。
でも、今、この時、このタイミングでこの小説を読めたことはとてつもない幸運です。
負けず嫌いの血が騒ぐというか、こんだけ叩きつけられて奮い立たなきゃ漢じゃねーだろ!と松岡修三さんが憑依せん勢いです。
定期的に読み返したい、素晴らしい一冊でした。 - Posted at 2010.08.28 (04:00) by 天野寂 (URL) | [編集]
-
Re: バカが全裸でぶちまける
じたまさん、コメントありがとうございます。
お祝いの言葉ありがとうございます。
私自身まったく信じられなくて、昨日はどこか夢見心地だったのですが、わざわざ今日もサイトを確認して「くふっ」なんて不気味な笑いをこぼした次第ですw
昨日ほどこの感想ブログをやっていて良かったと思ったことはありませんね。私の今までの行いが評価された気分です。
サインは私が作家になるときまで取っておきましょう。(何たる自信過剰)
これはヤバいです。作家を目指している方も、そうでない方も、ぜひ出来るだけ多くの人に読んで貰いたいです。
天野寂さん、コメントありがとうございます。
お祝いの言葉ありがとうございます。
投稿の内容はうろ覚えなんですが、このブログで書いた感想とたいして変わらないと思うんですよね。自分が覚えてないのが不安なのですが、戯れに投稿しただけなので正直恥ずかしいですw
あと、公開されるのは受賞レビューの中でも一部だけらしいので、私のレビューが公開されるかは微妙なところです。
一応そのまま「雨村臣」で新人賞は応募するつもりです。
このPNは私の本名をかなり複雑にもじった名前なんです。もし何かの機会に新人賞の途中経過を見るようなことがあれば、暇つぶしにでも探してみてくださいw 一次選考にすら通ってなかったらその時はごめんなさいです。
でももしかしたら、私も入間先生みたいに賞ごとにPNを変えるかもしれません。後々何かのネタになるかもしれませんしね。
入間先生のPNの件は、私は読んでいる最中に何となく思い当りました。ずっと、新人賞時代にどんなPNを使ってたんだろうという興味が頭にあったのも関係しているのでしょうが。
天野寂さんに太鼓判を押してもらえると自分の推測にも自信が持てます。
私も見た目的に「入間∞人間」がいいなと思ったんですけど、とあるアーティストのボーカルが名前の最後に「∞」と付けてるのを思い出したのでそれを意識してみました。
でもやっぱり「入間∞人間」がいいですね。ある意味入間先生って「入間」と「人間」のカップリングのような存在ですからw
気を遣ってもらってありがとうございます。
コメントならネタばれしてもギリギリ大丈夫かなと思ったりもするのですが、困る人もいるでしょうから避けた方が良いのでしょうね。
ですよねですよね。五章は言葉では説明できませんよね。
本当に理屈じゃないんですよね、五章は特に。
言葉で説明すればきっと平坦文章になってしまうんですけど、その奥にあるものを見てほしいんです。そんなの言葉で説明できないのは当然なわけで、だから読め! って感じです。
小説家志望の人はこの本を読んでしまうともう他人事じゃいらません。
そして小説家志望じゃなくても、あらゆる形で夢を追う人にとってはこれを読んで感化されなきゃどうかしてるってレベルです。
おかゆさんが以前うぇぶらじで言っていた「感度の良いアンテナ」という言葉が痛感できました。
入間先生の感性で紡がれる文章って、隙間を縫うように心の奥底に入り込んできて、剥き出しの弱い部分を直接触れてくるんですよね。誰もが経験したことのあるような何気ないことなのに、それが人生の再確認みたいになってて、あの時の出来事ってこういう意味があったんだって思うと怖いぐらい涙が出ちゃうんです。
本当に、どれだけ人とは違うアンテナを張り巡らしてきたんだろうなーって。
天野寂さんの言うとおり、今この小説を読めたことは幸運です。人生が何が転機になるか分からないんだったら、これが転機であってもいいはずですから。
そしていつか私が小説家になれたら語ってやりたいです。「あの時バカ全裸を読んだから今の私があるんだ」って。 - Posted at 2010.08.28 (12:05) by つかボン (URL) | [編集]
-
他者からレビューを評価される、なんてのは中々ないものですから、さぞかし舞い上がっていることだと思います。ちなみにその不幸フラグは私が嫉妬で夜討ちに行く、なんてものでは決してないので安心をば。
長いですね。それゆえに熱意こもったレビューでした。
私は形式どった仕掛けに弱いのですが、今回は正にやられました。冒頭と幕引きの部分は分かっていても避けられませんでした。泣きますよ普通。
ラノベに限らないでも作家を朧げに意識している私には刺激が強すぎました。入間作品の中では少し秀でた作品程度に感じましたが、本は読み手によって幾倍にも魅力が増幅されるということを痛感しました。それくらい面白かったです。 - Posted at 2010.08.28 (15:32) by FF (URL) | [編集]
-
とにかくおめでとうございますー!
これも日々の積み重ねというかなんというか、書評やっててよかったーって思える出来事ですよね!
発表されたら是非是非覗きにいきますネ!
- Posted at 2010.08.28 (19:07) by ふぇにあ (URL) | [編集]
-
つかボンさんは感想上手なので
賞とったのもうなずけますね
この作品まだ、買ってなくてまだ全裸です
まあ全裸慣れてるんで平気ですが
相変わらず感想が上手ですぐにでも手に入れたいです
新人賞頑張ってください
シャモはこのライトノベルがすごいの新人賞に応募
したいのですが、今年は無理そうですorz - Posted at 2010.08.29 (00:07) by シャモ (URL) | [編集]
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つかボンさんなら公開レビュー受賞も頷けます!!
いや~「サイとはいかが?」のサイとさんの「空色パンデミック2」の帯もそうですけど、こんなスゴイ方が二人もいるとは・・・
スゴイですね・・・
私も見習わないと・・・
「バカが全裸でやってくる」、今日買ってきました~。
つかボンさんがいつになく長いレビューなので、
面白い作品なのだと思います。
入間先生、やってくれますね~。
早く読みたいです~!! - Posted at 2010.08.29 (00:30) by naomatrix (URL) | [編集]
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Re: タイトルなし
FFさん、コメントありがとうございます。
初めまして……で合ってますかね? もし違ってたらごめんなさい。
もしかしてaskさんですか? あ、いえ、違ってたら本当に気にしないでください。
> いやぁおめでとうございます!
ありがとうございます。今までブログを続けてきた甲斐がありました。舞い上がり様は半端ないです。もう天まで昇りつめてしまいそうです。
なんだ……ビックリしたじゃないですかー。でもリアルに何か起こりそうで怖いんですよね。
心待ちにしていた作品だったので存分に熱意を込めました。こもり過ぎて何書いてるか分かんなくなっちゃってますけどねw
そうなんですよ。分かってるのに泣けるんです。
私にとっては他人事じゃなくて、作家になると決意した気持ちを再確認させられて、本当に痛いところを
突かれたなーって感じです。
夢を追う人にとってはこれほど感銘を受ける作品もないと思うのですが、そうでない人にとっては微妙なんじゃないかなって思います。純粋に小説を楽しみたい人向けじゃないんですよね。
でも敢えてそんな作品を世に出した入間先生にベタ惚れです。
ふぇにあさん、コメントありがとうございます。
> おおーすごいですね!!
> とにかくおめでとうございますー!
お祝いの言葉ありがとうございます。
このブログをやってきて良かったと思えた最高の瞬間でした。
ちなみに公開されるレビューは一部らしいので、私のが公開されるかは微妙なところですw
シャモさん、コメントありがとうございます。
> おめでとうございます
お祝いの言葉ありがとうございます。
褒めていただいて嬉しいんですが、そんなに褒めてもなにも出ませんよ?w
なんと! まだ全裸でしたか!
それはいけません! 白黒のツートンカラーな車が来る前に買いに行かねば! ですが買いに行く途中で捕まらないように気をつけてください。
てか感想上手ですかね? ただ書きたいこと連ねてるだけなんですけどねw
シャモさんもこのラノ狙いですか。実は私も第二回を目指して現在執筆中です。
おそらく間に合うとは思うのですが、一応その後の電撃にも投稿する予定です。
出来れば将来、このラノで私とシャモさんのPNが並んでいたら良いですね。
naomatrixさん、コメントありがとうございます。
> おめでとうございます!!
ありがとうございます!!
うわー、頷いてもらえちゃったー。なんかめちゃくちゃ嬉しいです。
サイとさんにはまだ到底及びませんが、今まで感想ブログを続けてきたことを認められたみたいで嬉しんですよね。ブログの管理人として冥利に尽きるというか。
でも最近はちょっと感想も破綻しかけているのであまり見習わない方がいいですよーw
おぉ! 買いましたか!
身近なブログ仲間の方がみんな買ってくださるのでなんだかテンション上がりますね。
ただ、面白いかどうかは人によると思います。感想の方でも書きましたが、夢を追う人にとってはこれほど感銘を受ける作品もないと思いますが、そうでない人にとっては大した作品だとは思えないかもしれません。
分かる人にしか分からない小説。だからこそ不敵なんですけどね。
それでもいろんな人に読んでもらいたいのは事実です。
naomatrixさんの感想も楽しみにしてます。 - Posted at 2010.08.29 (01:19) by つかボン (URL) | [編集]