Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY/河野裕
- Posted at 2010.09.08
- l角川スニーカー文庫
絶対時間把握(タイムコントロール)
私はデジタル表示の時計でゾロ目の時刻をよく目にするので、小さい頃は「うひょー! 俺ってすげー! ぜってー超能力っぽいもんなんか持ってるよ!」と思ってたことがある。
けどあれって、ゾロ目の印象が強いからゾロ目を見た事実だけを覚えてるだけで、実際はそれ以上にバラバラの時刻も見てるんだよね。
つまり何が言いたいのかというと執筆に行き詰ったのでブログを更新します。
――あらすじ――
「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ―。能力者が集う街、咲良田。浅井ケイは、記憶を保持する能力をもった高校一年生。春埼美空は、「リセット」―世界を三日分巻き戻す能力をもっており、ケイの指示で発動する。高校の「奉仕クラブ」に所属する彼らは、ある日「死んだ猫を生き返らせてほしい」という依頼を受けるのだが…。リセット後の世界で「現実」に立ち向かう、少年と少女の物語。
――感想――
とりあえず私は早くこのラノ文庫が読みたいので、三日分進めてほしい。
おもおもおもおもおもおもしれー!
ちょっと壊れかけのレイディオだったけど気にせず。
これは素晴らしい。久しぶりに心銘打つ傑作に出会えたよ。
なんだろうなぁ。ここまで感動するのは入間作品や文学少女を読んだとき以来なんだけど、感動の種類が違うかな。あまり味わったことのない全容の知れない感動。
例えるなら、大海原のど真ん中に立っている気分。波は凪いでいて、風の音しか聞こえないような静けさに包まれている。
物語の輪郭を掴もうと思っても、海原は広大すぎて自分の位置からじゃ把握しきれなくて、まるで世界に独りだけになったような寂しさもあり、どこか心地よくもあるような不思議な感覚が押し寄せてくる。
あまりに静かだから叫びたくなるけど、一方でこの静寂を壊したくないといった葛藤が生まれたりして、心が震わされる。
そんな雰囲気がこの一冊の本全体から漂っている。
なんで今までこのシリーズと著者共々ノーマークだったんだろう。
物語は超能力者の街、咲良田を舞台にして始まる。
超能力者は創作の王道ネタだし、超能力者の街といえば多くの人がとあ禁とかを思い浮かべたりするんじゃないかな。
ただ既存の作品と違うのは、超能力を題材にしているからといって能力者同士の異能バトルが繰り広げられるわけでもなく(皆無というわけではない)、学園都市のように科学の発達した未来都市というわけでもない。
他人との向き合い方、現実との向き合い方、そして自分自身との向き合い方。この作品での超能力はむしろそういった、人が何歳になっても抱え続ける悩みを解決するのではなく、その悩みとどう向き合って共存していくか考えさせる役割を持つ部分が大きい。直接的にではなく、間接的にだけどね。
とあ禁の超能力は物理法則に則った能力だけど、こちらは本当になんでもあり。だからといって、好き放題に使えるわけではなく、そこには能力固有の発動条件などもあるし、能力に至っては役に立つのかも分からないようなくだらない力もあったりする。
そしてもう一つ、この作品での超能力には重要な特性があって、それは能力者本人の人格、本質、あるいは求めるものに応じた能力が備わるということ。
例えば単純なところで、猫が大好きな人には猫と感覚を共有する能力が発現したりする。
だからどれだけくだらない能力でも、能力がその人の人格や本質を表している以上その能力が発現したことにはなんらかの意味があるんだよね。これは割と重要。
でも実は私が一番注目してもらいたいのは、会話文と地の文なんだよ。
もうなんかセンスが迸ってる。空虚で中身なんてないんだけど、不思議と納得してしまう。こればっかりは読んでもらわないと分かんないかもしれないなー。
個人的には野ノ尾と非通知くんとの会話が好き。どこまでも無意味で無意義な会話だけど、その言葉の節々にその人自身の生き方が垣間見えたりして、そういうのを発見するのはなんか楽しい。
人間の本心を剥き出しにしたような人間臭すぎる一面をもつ登場人物たちもヒット。歪みに歪み切って、一周回って真っ直ぐになってしまったような。純粋な真っ直ぐではなく、歪んだことがあるという経緯を持つ真っ直ぐ。この違いはとてつもなく大きいと思う。
自分の求めるものしか見えてないから、そのためにはどこまでも残酷になれる。特にケイは、それが酷いことだと分かってるのに行動に移すから、やっぱりどこかが欠けてるんだ。
でも人は欠けてるからこそ他人と支え合ってその部分を補おうとするもので、純粋ではなくて歪んでいても、そこに確かな優しさを生むことを、この本は教えてくれた。
私としては、このシリーズの続刊はもちろん、過去のザ・スニーカーに載った河野先生のオリジナル短編が読みたいんだけど。誰か去年のザ・スニーカーが手に入る場所知らない?
今度古本屋を虱潰しに探してみるか。
関連商品
サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)
サクラダリセット3 MEMORY in CHILDREN (角川スニーカー文庫)
クイックセーブ&ロード (ガガガ文庫)
シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)
アクセル・ワールド〈5〉星影の浮き橋 (電撃文庫)
by G-Tools
私はデジタル表示の時計でゾロ目の時刻をよく目にするので、小さい頃は「うひょー! 俺ってすげー! ぜってー超能力っぽいもんなんか持ってるよ!」と思ってたことがある。
けどあれって、ゾロ目の印象が強いからゾロ目を見た事実だけを覚えてるだけで、実際はそれ以上にバラバラの時刻も見てるんだよね。
つまり何が言いたいのかというと執筆に行き詰ったのでブログを更新します。
![]() | サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫) 河野 裕 椎名 優 角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-05-30 売り上げランキング : 58701 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「今の世の中は、ちょっと悲しいことが多すぎると思うんです」
――あらすじ――
「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ―。能力者が集う街、咲良田。浅井ケイは、記憶を保持する能力をもった高校一年生。春埼美空は、「リセット」―世界を三日分巻き戻す能力をもっており、ケイの指示で発動する。高校の「奉仕クラブ」に所属する彼らは、ある日「死んだ猫を生き返らせてほしい」という依頼を受けるのだが…。リセット後の世界で「現実」に立ち向かう、少年と少女の物語。
――感想――
とりあえず私は早くこのラノ文庫が読みたいので、三日分進めてほしい。
おもおもおもおもおもおもしれー!
ちょっと壊れかけのレイディオだったけど気にせず。
これは素晴らしい。久しぶりに心銘打つ傑作に出会えたよ。
なんだろうなぁ。ここまで感動するのは入間作品や文学少女を読んだとき以来なんだけど、感動の種類が違うかな。あまり味わったことのない全容の知れない感動。
例えるなら、大海原のど真ん中に立っている気分。波は凪いでいて、風の音しか聞こえないような静けさに包まれている。
物語の輪郭を掴もうと思っても、海原は広大すぎて自分の位置からじゃ把握しきれなくて、まるで世界に独りだけになったような寂しさもあり、どこか心地よくもあるような不思議な感覚が押し寄せてくる。
あまりに静かだから叫びたくなるけど、一方でこの静寂を壊したくないといった葛藤が生まれたりして、心が震わされる。
そんな雰囲気がこの一冊の本全体から漂っている。
なんで今までこのシリーズと著者共々ノーマークだったんだろう。
物語は超能力者の街、咲良田を舞台にして始まる。
超能力者は創作の王道ネタだし、超能力者の街といえば多くの人がとあ禁とかを思い浮かべたりするんじゃないかな。
ただ既存の作品と違うのは、超能力を題材にしているからといって能力者同士の異能バトルが繰り広げられるわけでもなく(皆無というわけではない)、学園都市のように科学の発達した未来都市というわけでもない。
他人との向き合い方、現実との向き合い方、そして自分自身との向き合い方。この作品での超能力はむしろそういった、人が何歳になっても抱え続ける悩みを解決するのではなく、その悩みとどう向き合って共存していくか考えさせる役割を持つ部分が大きい。直接的にではなく、間接的にだけどね。
とあ禁の超能力は物理法則に則った能力だけど、こちらは本当になんでもあり。だからといって、好き放題に使えるわけではなく、そこには能力固有の発動条件などもあるし、能力に至っては役に立つのかも分からないようなくだらない力もあったりする。
そしてもう一つ、この作品での超能力には重要な特性があって、それは能力者本人の人格、本質、あるいは求めるものに応じた能力が備わるということ。
例えば単純なところで、猫が大好きな人には猫と感覚を共有する能力が発現したりする。
だからどれだけくだらない能力でも、能力がその人の人格や本質を表している以上その能力が発現したことにはなんらかの意味があるんだよね。これは割と重要。
でも実は私が一番注目してもらいたいのは、会話文と地の文なんだよ。
もうなんかセンスが迸ってる。空虚で中身なんてないんだけど、不思議と納得してしまう。こればっかりは読んでもらわないと分かんないかもしれないなー。
個人的には野ノ尾と非通知くんとの会話が好き。どこまでも無意味で無意義な会話だけど、その言葉の節々にその人自身の生き方が垣間見えたりして、そういうのを発見するのはなんか楽しい。
人間の本心を剥き出しにしたような人間臭すぎる一面をもつ登場人物たちもヒット。歪みに歪み切って、一周回って真っ直ぐになってしまったような。純粋な真っ直ぐではなく、歪んだことがあるという経緯を持つ真っ直ぐ。この違いはとてつもなく大きいと思う。
自分の求めるものしか見えてないから、そのためにはどこまでも残酷になれる。特にケイは、それが酷いことだと分かってるのに行動に移すから、やっぱりどこかが欠けてるんだ。
でも人は欠けてるからこそ他人と支え合ってその部分を補おうとするもので、純粋ではなくて歪んでいても、そこに確かな優しさを生むことを、この本は教えてくれた。
私としては、このシリーズの続刊はもちろん、過去のザ・スニーカーに載った河野先生のオリジナル短編が読みたいんだけど。誰か去年のザ・スニーカーが手に入る場所知らない?
今度古本屋を虱潰しに探してみるか。
関連商品
サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)
サクラダリセット3 MEMORY in CHILDREN (角川スニーカー文庫)
クイックセーブ&ロード (ガガガ文庫)
シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)
アクセル・ワールド〈5〉星影の浮き橋 (電撃文庫)
by G-Tools
スポンサーサイト
Trackback
Leave a comment
Comments
-
前も言ったんですがこの作品ボクも全くのノーマークでした。作品の内容も全然知らなかったですし。
しかし、つかボンさんが文学少女、入間作品に並ぶって言うなんてなんてよっぽどですね…。
それは期待しても良さそうです。
ホントあらすじ読んだ限り面白そうですね。
基本的にタイムリープ(そう読んで良いのかな?)が好きなので。
その上地の文からセンスが迸るって…。素晴らしい作家さんじゃありませんか。
まるで西尾維新のよう…。え?あれとは違う?
今借り物がもの凄く多いのでそれがはけたら読んで見たいと思います。
いやー楽しみだ。 - Posted at 2010.09.08 (20:41) by tokuP (URL) | [編集]
-
シリーズ通しての加速感が異常で、文章力なんか1巻時から上手いから評価的には飽和してるのに、どこか別の点で魅力を叩きつけてくる。作品を好きになるというより、読了時の衝撃が病みつきになります。
もう自分でも何言ってるかよく分かりません。だからもう少し落ち着いてから感想書こう、うん。と決めました。
それと私のブログにくれたコメの件ですが、メッセージ的なものを入れておきましたので、拝見していただけるとありがたいです。 - Posted at 2010.09.09 (20:41) by ask (URL) | [編集]
-
こちらも猛省中です。レビューする身ですから、私も含めて、時には穿って見てしまうところはあります。
みーまーの媚びの無さは確かに電波には足りない。全部好きとは私も言いません。こちらの方がいい、と言ったりもします。ただ、自分が酷評した作品を誰かは愛している、ということを忘れないようにします。今回の件で自分の軽率さを知りました。
重苦しすぎましたね…。つかボンさんを咎めるというよ気は実は毛頭なく、自分に向けて啓発した感じです。
つかボンさんの中でいちゃもんキャラが確立しつつある私ですが、本音で話せるのは嬉しいものなのです。これからも乗ってくだされば助かります。
もちろん入間作品がランクインした暁には、ブログ上でいるまんを讃えながら万歳三唱致しましょうw - Posted at 2010.09.09 (22:23) by ask (URL) | [編集]
-
Re: タイトルなし
tokuPさん、コメントありがとうございます。
そりゃ猛プッシュもしますよw これは本当に素晴らしい。私の中では革新的な作品です。
ただ、入間作品や文学少女を読んだときほどの感動ではありますが、記事にも書いている通り感動の種類は違います。
こんなことを言うのもなんですが、好き嫌いが明確に分かれる作品だと思います。
嫌いな人は序盤で読むことを苦痛に思うかもしれません。逆に好きな人にとっては中毒に陥る(私はすでに中毒ですがw)ほどの驚異的な魅力を有した作品です。
ですがタイムリープ系……と言っていいのか私も判然としないので時間移動系としておきますw tokupさんのように時間移動系が好きなら楽しめるかと。時間軸の構成力は目を見張るものがあります。
西尾先生とはちょっと違うかな。あちらのように言葉遊びや言い回しが巧みと言うよりは、物事を多角的に捉えて、さも無意味な文章のように思える文章の中に意味を忍ばせているみたいな感じです。難しいですね。私も美味く説明出来ないんですが。
少し例を挙げてみましょう。(つかボンはこの作品の魅力を語れることでテンションが上がっています)
地の文ではなく会話文なのですが、自分の体内に血が流れてることも嫌なほどの潔癖症である非通知くんという人物と、主人公のケイの会話です。
ケイ: 「体に血が流れてるのは許せるんですか?」
非通知くん:「実は許せない。昔さ、献血に行ったんだよ。体中の血を抜いてくださいっていったら怒られちゃった。なんでだろ?」
ケイ: 「大抵の医者は人を殺したくないんだと思いますよ」
これだけ見たらどこにセンスがあるの? と思うかもしれませんが、注目すべきは最後のケイの発言です。非通知くんの奇妙でありながらユーモアのある台詞に対し、一般なら「当然でしょ!」でも済むところを、ケイは上記のように返しています。彼はつまり、さらに一歩踏み込んで医者の立場になって発言をしてるんですね。こういうのは一見簡単そうに見えて、かなり難しいです。これが物事を多角的に捉えるということです。
と言っても、今述べたことはあくまで私の個人的な解釈にすぎませんので、納得のいかない部分もあると思います。それでもちょっとでも面白そうだと思ったなら、いつになっても構いませんので、ぜひ一読してみることを強く薦めます。
askさん、コメントありがとうございます。
コメ返をひとつにまとめさせてもらいますね。
私も少し重苦しくしすぎましたね。一応、それだけ真剣に受け止めているということです。
どれだけ言い繕っても、やはり褒められたことではありませんでしたから。
なんか難しいですねw 愛してる作品についてもっと本音で語りたいのに、意外とそういう場はネット上にはないような気がします。ツイッターなんてブログ以上に多くの人の目に触れる場所ですし。
本音になると中傷表現も多くなるので、そういうのは仲間内とかぐらいに収めたほうがいいのかもしれません。
もちろんaskさんとの真剣二十代と十代しゃべり場は面白いので、これからもどんどん絡んできてくださいw
そうなんですよ。この作品はとにかく読後感が素晴らしい。
何とも言えない深い味わいですよね。銘柄もののコーヒーのような底知れなさがあります。本当に美味いコーヒーはどうしてこんなに美味くたてれるのか分からないからなー。
この作品に関しては何を言ってるのか分からないというのは、決して間違った状態ではありません。私も自分がブログで結局何が言いたかったのか分かりませんからw
まさに全容の知れない感動なんですよね。 - Posted at 2010.09.09 (23:52) by つかボン (URL) | [編集]