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犬とハサミは使いよう/更伊俊介

水は方円の器に随う


まず宣伝。
先日記事で紹介した天野寂さん企画の『この入間人間がすごい!2011』が都合により締め切りが延長しました。
それなりに票は集まったらしいのですが、まだまだしょっぱいようです。
それにあたって天野寂さん自身、より精力的に活動を始めるらしく、締め切りまでブログ記事も毎日更新を目指すとのことなので、アンケートに興味がない人もこれからどんどん更新されていく記事を楽しんでみてはいかがでしょうか?
もちろんアンケートにも参加してもらいたいです。私がこのブログで報告するのが遅かったせいで締め切り間に合わなかった、という人もまだ大丈夫ですのでぜひ。
『入門人間』


続いて高校は今卒業式シーズンみたいなんで、私も少し自分の卒業式の話を。

実は、高校の卒業式ってあまり印象に残っていません。模範的な式次第を淡々とこなしていたような気がします。
校長先生が卒業生一人一人に銀杏(イチョウ)の実、つまり銀杏(ぎんなん)を一個ずつ封筒に詰めてプレゼントしてくれましたが、そんなものどうしようもありません。

印象に残らなかったのは、中学校のころの卒業式が素晴らしかったからというのもあるかもしれません。

私の中学校では「挨拶のできる学校」というのを標榜にしていました。校内だけでなく校外でも挨拶をできるようになれ、と先生方がよくおっしゃっていました。
そのころは素直だった(と自分で言ってみる)私は、指示に従って校外でも挨拶に励んでいたのですが、それは他の生徒も同じだったみたいで、地域住民からは結構評判の学校だったのです。
ただ同時に、荒れていた学校でもあり不良生徒がうじゃうじゃいました。
卒業式が近くなると毎日練習をさせられましたが、一部の不良生徒は常に欠席していましたね。どこで何をしていたのかはよく知りませんが。

その卒業式なんですが、私たちの代ではあるサプライズを用意していました。
在校生や保護者に事前に知らされていた予定では、合唱は校歌と『仰げば尊し』だけだったのですが、私たち卒業生は密かに『旅立ちの日に』という定番の合唱曲も練習していたのです。
式当日、式次第を無視していきなり立ち上がり一斉に振り返った私たち卒業生を、在校生と保護者の方々は驚いた目で見ていました。
それが嬉しくもあったのですが、なにより嬉しかったのは、練習をサボっていた不良生徒たちが合唱直前になって遅れて入場してきたことです。てっきり本番もサボるものだと思っていたので、もちろん褒められたことではないんですが、胸に詰まるものがありました。
合唱の練習もほとんどサボっていた彼らがちゃんと歌えたのかはわかりません。
でも全員で卒業できることが嬉しくて、私は歌いながら涙を流しました。

その不良生徒たちが今なにをしているのか、以前たまたま聞く機会があったのですが、もう社会人になっている人もいれば、自分の夢に向かって専門学校に通っている人もいたりと、自分の道を歩んでいる人がほとんどでした。
そのときふと、自分が彼らと同級生でよかったな、と思いました。






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『何で助けた? 知らねぇよバカ! そんなもんにいちいち理由を付けるなって、お前が言ったんだろ!!!』
「……そんな事、言ってない」
『言ったよ! 言ってたよ! 読者を舐めるんじゃねぇ! お前が言ってなくても、お前の本が言ってんだよ!!!』



――あらすじ――
犬と人、読者と作者がガチバトル! 第12回えんため大賞優秀賞のミステリ系不条理コメディ!!
「読 ま ず に 死 ね る か !!」
ある日突然、強盗に殺された俺。だが本バカゆえの執念で奇跡の生還を果たした――ダックスフンドの姿で。って何で犬!? 本読めないじゃん!! 悶える俺の前に現れたのは、ハサミが凶器のサド女、夏野霧姫。どう見ても危険人物です。でも犬【おれ】の言葉が分かる、しかもその正体は俺も大ファンの作家、秋山忍本人だった!? どうなる俺、あと俺を殺した強盗はどこ行った――!?


――感想――
先月のえんため大賞受賞作をすっ飛ばして、まずこちらから読ませてもらいました。
第12回えんため大賞もう一つの優秀賞『犬とハサミは使いよう』。

今回の受賞作の中では最も期待していた作品だったんだけど……うーん、期待しすぎたかなぁ。
第11回で『B.A.D』『空色パンデミック』『ココロコネクト』と名作を3作も輩出してくれたえんため大賞だから、信頼度が高かっただけにガックリ。
まぁ、まだ6作ある受賞作のうちの1作目だからなんとも言えないけれど。

ちなみに著者である更伊先生は二人組作家だそうです。著者プロフィールを読むまで知りませんでした。
どんな風に分担されているのだろう。気になるなー。

主人公・春海和人とヒロイン・夏野霧姫によるかけ合いのテンポのよさは認める。いわゆる言葉遊びが多用されていて、サクサクと読み進めることができた。
けれど、どうにもボケのセンスが合わない。中盤はずっとそのかけ合いが繰り広げられるから、それが楽しめなかったのは非常に辛い。

まぁ、ボケのセンスは個人の好みの問題だとしても、終盤で唐突に始まるバトルは真面目なのかボケなのかどっちなんだろう。読者としても反応に困る展開だった。シュールすぎて「え? え?」となってしまった。
あと、自身の心を入れ替えるまでに至った大事な本を武器に使うとはどういう了見だ。そしてなぜ誰も突っ込まない。読書バカで本を愛している主人公にはせめて、そのことに触れてほしかったのだけど。
突っ込みどころは多々あるのだけど、総じて言えることは『優秀賞』というレッテルに期待しすぎたということかな。

しかしヒロインの夏野さんは可愛いね
ハサミじょきじょきで毒吐きまくりだけど、なんだかんだで和人の面倒を見てあげる不器用な優しさが好きです。
できればデレてほしくはなかった。殺伐としたままでも充分に魅力があると思うんだよ。デレるにしてももっと自然に。どうにも無理矢理に感じて不自然さが漂っていた。

設定を生かした関係性の発展のさせ方も面白い。
犬と人の恋愛って……なんかいいじゃないか。いや、夏野さんの妄想が危なすぎて、この恋がどの方向に落ち着くのかまったく想像できないけどさ。
しかしなぜ犬なんだろう。

ちなみに『ミステリ系不条理コメディ』と銘打ってはいますが、どちらかという『不条理コメディ』のほうが主です。ミステリは調味料程度。ミステリという味もあるから楽しんでいってねー、という感じかな。
だからこそ『不条理コメディ』のほうが楽しめなかったのが惜しい。
次巻以降はとりあえず様子見かな。


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Comments

こんばんは~。
第12回えんため大賞作品は2作品ほど読みましたけど、ちょっと期待が大きかった分、見劣りしましたね・・・。
前の「BAD」「ココロコネクト」「空パン」がレベルが高すぎたのか・・・
一応他の受賞作も読んでみるつもりです。
今回紹介していただいた「犬とハサミは使いよう」も含め。
Posted at 2011.03.03 (23:26) by naomatrix (URL) | [編集]
それはまた素晴らしい思い出ですね!
いや、私たちの中・高校では思いもよらないほどの団結力です。
私の中学校に(というか、高校にでも)不良はいなかったんですが、みんな個人がワガママなんですよね。
そういうサプライズを密かに団結してできるって、ほんとうに素晴らしいと思います。

不条理コメディですか。
私は不条理なものが好きなんですが、これって結構危ない橋なんですよね。
訳が解からないものを面白く見せるって、天性の技術がいると思います。
Posted at 2011.03.04 (22:17) by サクラ (URL) | [編集]
Re: naomatrixさんへ
コメントありがとうございます。

やっぱり第11回のインパクトが強すぎましたね。
年代ごとの特色なんでしょう。いい作家がぎょうさん生まれる年もあれば、微妙な年もあるということですね。
なんとなく気分を削がれたので時間はかかるでしょうが、一応私も全部読んでみるつもりです。
naomatrixさんが犬とハサミをどう評価するか楽しみにしています。
Posted at 2011.03.05 (03:03) by つかボン (URL) | [編集]
Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。

ありがとうございます!
実は人生で一番楽しかった時期は高校なんですけど(故に卒業式があっけなかったのは悲しかった)、中学は中学で忘れられないんですよね。刺激が強くて。
中学のころの私たちの代は個性的な人間が集まっていました……と周りからよく言われました。そのせいか、みんながみんな「俺たちって変わってるよな」という自覚があって、妙な団結力があったんですよね。
そのおかげで一生ものの卒業式を経験することができました。

ぶっちゃけて言うと、わけのわからないものがわけのわからないまま書かれています。
おそらくこの作品で言う『不条理』というのは、キャラどうしの会話のことだと思います。
主人公がヒロインに理由もなく虐げられて、「わけがわからないよ……」というやり取りが多いので。
Posted at 2011.03.05 (03:16) by つかボン (URL) | [編集]
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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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