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パラダイス・クローズド THANATOS/汀こるもの

買い占めするならカネ送れ




昨日Youtubeで発見したものですが、案の定ニコ動に転載されていたので貼りつけてみました。
あの名作映画がどうしてこうなったと問いたいですが、しかしこれは素晴らしい動画ですね。まどろっこしい口舌よりも興味関心を引かれます。
メディアでも騒がれている『買い占め問題』ですが、収まる気配が一向にないのって結局のところだれも聴く耳を持たないからじゃないかなって思います。自身の意見に盲信的になりすぎて、外部からの情報をシャットアウトしているような風潮を感じます。
でもこんな風に、不謹慎でもエンターテインメントに乗っかって訴えかければ、見てみようかな聴いてみようかなって気分になるじゃないですか。こういうときでもエンタメ性って大事だなって思いました。

それにしても、字幕の言葉選びのセンスに感心しちゃいますね。
ちゃっかりジョークを織り交ぜているあたり、雰囲気があります。






パラダイス・クローズド THANATOS (講談社文庫)パラダイス・クローズド THANATOS (講談社文庫)
汀 こるもの

講談社 2011-02-15
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「“狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。悪人の真似とて人を殺さば、悪人なり”――死神の真似とて人を殺さば、死神なり」



――あらすじ――
周囲の人間に不審な死をもたらす「死神体質」の兄・美樹と、発生した事件を解決する「探偵体質」の弟・真樹。変わり者のミステリー作家が孤島に建てた館・水鱗館に向かった二人は、案の定、不可解な密室殺人事件に遭遇する。双子の少年と新米刑事が活躍する人気シリーズの第一作。第37回メフィスト賞受賞。


――感想――
「第37回メフィスト賞受賞」とあるとおり、もとは講談社ノベルスにてシリーズが発刊されていたのが、先月文庫落ちしたのでそれを機に読んでみました。
『THANATOS』シリーズ第1弾です。

思えば本格ミステリを読むのは久しぶりだった。
しかしこの作品、事件は本格ミステリの領域を出ていないのに、本そのものが本格ミステリに喧嘩を売っているような様相を呈しているのだから驚愕。探偵がトリックを解かないってどうなってるんだ。前評判どおりの奔放さに思わず笑いがこぼれてしまった。

本格ミステリといえば、探偵が出てきて、物理トリックや心理トリックを利用した不可解な事件が起こり、探偵が鮮やかな推理でその謎を解き、最後には犯人を捕まえるというのがお決まりのパターンだけど、この物語の探偵は『本格派』ではなく圧倒的に『社会派』であることがまず第一の特徴。外界から隔絶された孤島なんていう「いかにも」な状況は本職じゃないのだ。だから平然と『本格派』の人たちを嘲ることができるし、タブーだって犯し放題。
けれど今の時代、本格ミステリの戒めに則るなんて馬鹿げている。包丁と銃を所持していたらその人は十中八九犯人だし、『蠅の王』の引用にあるように相手を従わせる力を持つ人間、たとえば相手を従わせることに長けた刑事側についたほうが絶対的に安全なのだ。ご丁寧にトリックを暴いて犯人を観念させてやる必要はない。
それが、この物語の探偵のスタンスであり、この本が本格ミステリに真っ向から挑む姿勢である。鮮やかな謎解きはなくとも、鮮やかな論理展開には惚れ惚れとしてしまいました。

第二の特徴としては、やはり魚への愛がこれでもかというぐらい詰め込まれていることかな。
身内をことごとく不慮の死に追いやるだけでなく、行く場所行く場所で必ず死人を出すことからタナトスと呼ばれ、その美貌からネット界では『バーチャルネットアイドルタナトスきゅん』と持てはやされる双子の兄・美樹のもう一つの顔が、異常なまでの魚への愛に満ちた魚オタクという顔なのだ。
『THANATOS』シリーズにはそういう要素もあることは知っていたが、さすがにこれは驚いた。なんせ物語の前半ではゆうに30ページもの間、美樹が魚についての知識を延々と披露する章があるぐらいなのだから。
しかし、これがなかなかどうして面白い。
地球の創世記にまで話がぶっ飛んだときはニヤニヤが止まらなかった。なんでニヤニヤしてたのかは自分でもわからないんだけど。
熱心に語るタナトスきゅんは可愛いし、話が魅惑的というか蠱惑的というか、とにかく色々な個所で「ほぅ」と感嘆の息が漏れた。目を皿にして読みましたよ、ええ。

死神タナトスにして双子の兄・立花美樹。
高校生探偵にして双子の弟・立花真樹。
刑事にして二人の護衛・高槻彰彦。
物語のメインとなるこの三人のやり取りがまたとても面白かった。護衛でありながらほとんどお守役となっている高槻さんの目から描かれる双子の魅力が堪らない。
高槻さんもただの弄られ役かと思ったら、一応双子から尊敬されてる部分もあって、最後には刑事らしい活躍も見られる。そもそも死神の人柱『八人目』でありながら、後ろ向きとはいえそれを許容しているあたりただ者ではないだろうから、この事件以前の三人の話も気になる。
少しの尊敬と少しの諦観で形成される三人の関係がよかった。

しかしこの双子、読者の中で好みがぱっくり分かれそうだなー。DNAレベルで同一個体とはいえ、性格は真逆だから。
好感が持てるのは真樹だけど、美樹がときおり見せる深海のような底の見えない暗さにはどうしようもなく惹かれてしまう。水生生物について子供のような嬉々とした表情で語るときとのギャップが凄絶すぎる。死神の本性を現したときは痺れに痺れた。『徒然草』の一節を引用したりして味もあったなぁ。でもあれは……だったと思うと複雑ではあるんだけど。
探偵や刑事をも凌駕する最後の切り札が死神であったこと、これが第三の特徴であると言える。
けれどその死神にもわからない存在、双子の弟・真樹。
一見わかりやすい今どきの若者に見える彼が、わざわざ死神と恐れられる美樹と一緒にいる理由。
「――愛してるフリをするのって愛情なのかな?」

寄生と絶対に開かない密室。
彼らの共生関係の行き着く先は依存なのだろうか、それとも奴隷なのだろうか。

シリーズ作品だけに次巻への謎も適度に残し、今後が一層気になる本シリーズ。
素晴らしいミステリ作品に出会えた。
次巻のできるだけ早急な文庫落ちを願うばかりです。


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Comments

ほっ……
気に入っていただけたようで嬉しい限りです。
やはりあのシーンは素晴らしいですよね。
あの喧嘩の売り方ときたら。

それでも作者の本格ミステリ愛が節々に見られるんですよ。
読者に喧嘩を売りつつ、論理的な解決をするところとか。
あのトリックも、そこまでインパクトはないものの、かなり出来の良いものですし。
自分も早く「まごころを、君に」読みたいですね。
とても楽しみです。
Posted at 2011.03.19 (15:27) by 稲羽 (URL) | [編集]
同情するならカネ遅れ、ですか。
これもどこかの誰かさんが言ってたことなんですけどね。

こういうミステリは、本格ミステリというより、新本格ミステリっていいますね。
まさに本格ミステリを打ち破るような――。

そういえば、Twitter見ましたけれど、『姑獲鳥の夏』読むそうですね。
アレは私が読んだなかで、一番衝撃を受けたミステリでした。
これも新本格ミステリの先駆けらしいんですけどね。
Posted at 2011.03.19 (20:11) by サクラ (URL) | [編集]
Re: 稲羽さんへ
コメントありがとうございます。

しっかり気に入りました!
素晴らしい作品を紹介してもらえて、こちらこそ嬉しいです。
ばっさり切り捨てているのに、読者をちゃんと納得させる手法には感心させられました。

根拠なく否定するのではなく、本格ミステリを理解しているからこそ、納得させられるだけの理論を掲げることができたんでしょうね。敵を攻略するために敵を知る。
こるもの先生は敵を愛してすらいたからこそ、あれだけの物語が書けたんだと思います。
事件終了後に第三者の口から語られるにはもったいないぐらい出来のいいトリックでしたもんね。探偵の口から鮮やかにひも解いてほしかったという願望もあります。
次巻が非常に楽しみです。
Posted at 2011.03.20 (14:42) by つかボン (URL) | [編集]
Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。

それって『家なき子』の名ゼリフじゃなかったでしたっけ?
それのパロディなんでしょうね。

新本格ミステリというのですか。
時代の台頭というか弱肉強食というか、なんだか生態系の食物連鎖を意識してしまいますね。
本格派なミステリ作家が起こした事件を、物語内の探偵が本格ミステリファンの読者を敵に回しかねないような酷い言葉でなじるのでヒヤヒヤもんでした。

ありゃ、いつの間にかツイッターを見られていたのですか。
先日購入したので近いうちに読もうと思っています。
サクラさんが話題に上げてた影響も大きいですね。今から楽しみです。
Posted at 2011.03.20 (15:00) by つかボン (URL) | [編集]
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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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