Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
空色パンデミック4/本田誠
- Posted at 2011.04.08
- lファミ通文庫
春アニメ
春アニメが少しずつ放送され始めましたね。
今期は放送開始予定の作品が40作品にも上り、現在とりあえず1話視聴予定作品が30作品近くあるという異常事態に陥っています。「そんな生活で大丈夫か?」と問いたくなりますが、「大丈夫だ、問題ない」と返せるかどうかはまだまだ未知数です。
今のところ1話を見終わった作品は、『TIGER & BUNNY』『DOG DAYS』『日常』『花咲くいろは』『シュタインズゲート』『スケットダンス』『へうげもの』かな。
期待してた作品が期待以上であったり、あまり注目していなかった作品が面白かったりと感想は様々ですが、とりあえず『TIGER & BUNNY』『花咲くいろは』『シュタインズゲート』『へうげもの』が非常に面白かったです。うち2つが2クールで、1つが39話というね。
まだ視聴予定作品は大量に控えています。
毎期なにかを起こしてくれるシャフト枠の『電波女と青春男』と『まりあほりっく』。
安定のノイタミナ枠の『C』と『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。
エウレカセブンの原作者が贈る『デッドマン・ワンダーランド』。
ジャンプSQの人気作『青のエクソシスト』。
前期人気を博したISでお馴染みのMF文庫Jが放つ人気シリーズ『緋弾のアリア』。
一期好評につき二期開始『神のみぞ知るセカイ』。
他にも面白そうな作品が目白押し!
大変幸せなんですが、生活リズムが春休みから戻らなさそうで怖いです。
――あらすじ――
狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」、終幕。
最近、仲西景の様子がおかしいことに俺、青井晴は気づいていた。穂高結衣の発作に巻き込まれ続けた彼は、自らも「現空混在症」という病に蝕まれていたんだ。幻聴や己の中の別人格に悩まされ、現実と空想の狭間で苦しむ彼は、やがて恋人の結衣の存在すら忘却してしまった。彼女は失意の中で、それでも仲西を救う方法を探している。そして俺もまた、あいつを救うために、ある「芝居」を計画したんだ――。
――感想――
狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」、ここに完結!
まさかの終幕。「あれ、空想に感染したかな?」と思わず自らの正気を疑ってしまった。
3巻で『1部完』となっていたから、短編集を挟んでいよいよ新章突入だ!と意気込んでいたのに気勢を削がれた。いやそれ以上に、大好きなシリーズだったからとてもとても悲しい。似たような作品が溢れる今のラノベ界で、まさに新世代のど真ん中を突っ走ってくれた名作だった。
思えば、私がラノベを本格的に読み始めた初期に出会ったのが、このシリーズの1巻だった。
そのころちょうど第11回えんため大賞の受賞作が発表されていて、まだラノベに詳しくなかったから、とりあえず読んでみようと何気なく手に取ったんだった。
運命とまでは言わないけど、今となってはあのとき手に取ってよかったと本気で思える愛着の深いシリーズです。
今回は、景が自身の体に発生した違和感に悩んでいるところから物語が始まります。道を歩いている途中で電柱やマンホールから声が聞こえてきたりと、なにやら尋常でない様子。
けれど不安を煽る冒頭から一転、青井に結衣さん原作の舞台への出演を要請されたり、舞台参加者の士気を高めるためと結衣さんが催したパーティで空想病に巻き込まれたり、果ては結衣さんが手料理をご馳走したいからと、食材の現地調達で漁港に駆り出されたり。その手料理ご馳走イベントも景のある一言が原因だったりするから、相変わらず結衣さんは可愛いなー、と。
そこでもまた空想病に巻き込まれてしまうんだけど、その元ネタがかの有名な料理漫画だったから笑ってしまった。
前半は結衣さんの空想に巻き込まれて完結に追われるという、景たちからしたら日常である風景がメインで描かれている。結衣さん可愛いし、森崎や今井さん視点の話もあって楽しめた。ところで森崎と今井はいつから……。
一つ気に入らないのは、自分はプロだなんだと豪語する割に空想完結に私事を挟もうとする青井だな。
最近本当に多い。結衣さんに負けたくないという気持ちは素直に可愛いと思うけど、空想病発症中にやることかと。劇場型患者が身内にいながら軽視しすぎではなかろうか。
青井は人気高いし、作者自身気に入っている風ではあるけど、こういう一面がある青井はどうしても好きになれないなあ。
ともあれ、いつもどおり物語が進んでいくわけだが、中盤に差しかかると徐々に景が不穏な様子を見せ始める。それがまた現実か空想かはっきりしなくて、気持ち悪いわだかまりを胸に抱いたまま読み進めることになってしまう。
本格的に現空混在症の症状が現れ始めてからは、もうすごいとしか言えない。
摩耗し始める景の精神。見てるものすべてが信じられなくなり、自分の存在すら見失ってしまう。徐々に蝕まれていく現実と空想の境界線の描き方が非常に緻密で、生々しい。
「自分は大丈夫だ」と言い聞かせ続ける景があまりにむごたらしくて見てられなかった。
でもだからこそ、景を救おうと自分たちなりに動き出す結衣さんと青井の想いが熱く響く。青井もこういうときは素直にいいやつなんだよなあ。
そして景は気づくのだ。
現実とはなにか。
空想とはなにか。
自分の選ぶべき道と世界の見つめ方を。
そして、伸ばした手の先に結衣さんがいることを。
情報科学が発達し、真実と虚構が溢れ返った今の社会に一石を投じるような、またその社会で生きる私たちが持つアイデンティティの重要性に迫るような、社会風刺的な側面もある素晴らしい一冊だった。毎度お馴染みの煮え切らない読後感も今は愛おしい。
それでも結衣さんが表立って活躍しないことへの不満や、青井やメアリーの問題が解決されてないことへの気がかりがしこりとなって残ってたりするのだけど、このシリーズならしれっと続きを出してくれそうな気もする。
なんとなくシリーズを始めから再読したくなるなあ。物語上の現実と空想の境界線だって、シリーズを通してちゃんと見定められているかどうか。
でも今は、彼らが私の心に築いてくれた空色の景色の中で、しばらく余韻に浸っていたい気分だ。
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電波女と青春男 8 (電撃文庫 い)
空色パンデミック3 (ファミ通文庫)
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春アニメが少しずつ放送され始めましたね。
今期は放送開始予定の作品が40作品にも上り、現在とりあえず1話視聴予定作品が30作品近くあるという異常事態に陥っています。「そんな生活で大丈夫か?」と問いたくなりますが、「大丈夫だ、問題ない」と返せるかどうかはまだまだ未知数です。
今のところ1話を見終わった作品は、『TIGER & BUNNY』『DOG DAYS』『日常』『花咲くいろは』『シュタインズゲート』『スケットダンス』『へうげもの』かな。
期待してた作品が期待以上であったり、あまり注目していなかった作品が面白かったりと感想は様々ですが、とりあえず『TIGER & BUNNY』『花咲くいろは』『シュタインズゲート』『へうげもの』が非常に面白かったです。うち2つが2クールで、1つが39話というね。
まだ視聴予定作品は大量に控えています。
毎期なにかを起こしてくれるシャフト枠の『電波女と青春男』と『まりあほりっく』。
安定のノイタミナ枠の『C』と『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。
エウレカセブンの原作者が贈る『デッドマン・ワンダーランド』。
ジャンプSQの人気作『青のエクソシスト』。
前期人気を博したISでお馴染みのMF文庫Jが放つ人気シリーズ『緋弾のアリア』。
一期好評につき二期開始『神のみぞ知るセカイ』。
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「あなたの言葉は矛盾している。夢に現実は存在しない」
「夢は冷めない限り現実なんだよ」
――あらすじ――
狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」、終幕。
最近、仲西景の様子がおかしいことに俺、青井晴は気づいていた。穂高結衣の発作に巻き込まれ続けた彼は、自らも「現空混在症」という病に蝕まれていたんだ。幻聴や己の中の別人格に悩まされ、現実と空想の狭間で苦しむ彼は、やがて恋人の結衣の存在すら忘却してしまった。彼女は失意の中で、それでも仲西を救う方法を探している。そして俺もまた、あいつを救うために、ある「芝居」を計画したんだ――。
――感想――
狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」、ここに完結!
まさかの終幕。「あれ、空想に感染したかな?」と思わず自らの正気を疑ってしまった。
3巻で『1部完』となっていたから、短編集を挟んでいよいよ新章突入だ!と意気込んでいたのに気勢を削がれた。いやそれ以上に、大好きなシリーズだったからとてもとても悲しい。似たような作品が溢れる今のラノベ界で、まさに新世代のど真ん中を突っ走ってくれた名作だった。
思えば、私がラノベを本格的に読み始めた初期に出会ったのが、このシリーズの1巻だった。
そのころちょうど第11回えんため大賞の受賞作が発表されていて、まだラノベに詳しくなかったから、とりあえず読んでみようと何気なく手に取ったんだった。
運命とまでは言わないけど、今となってはあのとき手に取ってよかったと本気で思える愛着の深いシリーズです。
今回は、景が自身の体に発生した違和感に悩んでいるところから物語が始まります。道を歩いている途中で電柱やマンホールから声が聞こえてきたりと、なにやら尋常でない様子。
けれど不安を煽る冒頭から一転、青井に結衣さん原作の舞台への出演を要請されたり、舞台参加者の士気を高めるためと結衣さんが催したパーティで空想病に巻き込まれたり、果ては結衣さんが手料理をご馳走したいからと、食材の現地調達で漁港に駆り出されたり。その手料理ご馳走イベントも景のある一言が原因だったりするから、相変わらず結衣さんは可愛いなー、と。
そこでもまた空想病に巻き込まれてしまうんだけど、その元ネタがかの有名な料理漫画だったから笑ってしまった。
前半は結衣さんの空想に巻き込まれて完結に追われるという、景たちからしたら日常である風景がメインで描かれている。結衣さん可愛いし、森崎や今井さん視点の話もあって楽しめた。ところで森崎と今井はいつから……。
一つ気に入らないのは、自分はプロだなんだと豪語する割に空想完結に私事を挟もうとする青井だな。
最近本当に多い。結衣さんに負けたくないという気持ちは素直に可愛いと思うけど、空想病発症中にやることかと。劇場型患者が身内にいながら軽視しすぎではなかろうか。
青井は人気高いし、作者自身気に入っている風ではあるけど、こういう一面がある青井はどうしても好きになれないなあ。
ともあれ、いつもどおり物語が進んでいくわけだが、中盤に差しかかると徐々に景が不穏な様子を見せ始める。それがまた現実か空想かはっきりしなくて、気持ち悪いわだかまりを胸に抱いたまま読み進めることになってしまう。
本格的に現空混在症の症状が現れ始めてからは、もうすごいとしか言えない。
摩耗し始める景の精神。見てるものすべてが信じられなくなり、自分の存在すら見失ってしまう。徐々に蝕まれていく現実と空想の境界線の描き方が非常に緻密で、生々しい。
「自分は大丈夫だ」と言い聞かせ続ける景があまりにむごたらしくて見てられなかった。
でもだからこそ、景を救おうと自分たちなりに動き出す結衣さんと青井の想いが熱く響く。青井もこういうときは素直にいいやつなんだよなあ。
そして景は気づくのだ。
現実とはなにか。
空想とはなにか。
自分の選ぶべき道と世界の見つめ方を。
そして、伸ばした手の先に結衣さんがいることを。
「世界を敵にまわしても、僕が結衣さんを守りますから」
情報科学が発達し、真実と虚構が溢れ返った今の社会に一石を投じるような、またその社会で生きる私たちが持つアイデンティティの重要性に迫るような、社会風刺的な側面もある素晴らしい一冊だった。毎度お馴染みの煮え切らない読後感も今は愛おしい。
それでも結衣さんが表立って活躍しないことへの不満や、青井やメアリーの問題が解決されてないことへの気がかりがしこりとなって残ってたりするのだけど、このシリーズならしれっと続きを出してくれそうな気もする。
なんとなくシリーズを始めから再読したくなるなあ。物語上の現実と空想の境界線だって、シリーズを通してちゃんと見定められているかどうか。
でも今は、彼らが私の心に築いてくれた空色の景色の中で、しばらく余韻に浸っていたい気分だ。
関連商品
7秒後の酒多さんと、俺。(2) (ファミ通文庫)
電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 (電撃文庫)
神明解ろーどぐらす5 (MF文庫J)
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Comments
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何だか、それってすごいですね。
何がどう凄いのか、よく言い表せられないんですが。
電波女も、早いところで14日ですね。
新房枠は私も観ます。
社会風刺的な部分、ですか。
どちらかというと身の回りのことか、ファンタジーに重点が置かれがちなラノベでは、ちょっと珍しいことですよね。
この間の『パニッシュメント』にもそういう傾向はあったようですが。
ラノベに注目していると、何だかどんどん面白い広がり方をしているようにも思います。 - Posted at 2011.04.08 (20:01) by サクラ (URL) | [編集]
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Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。
自分でも驚いてます。
というかまず、1週間に40以上ものアニメ作品が放送されてることが驚きなのですが。
私の地域では今日『まりあほりっく』が放送予定です。今期の新房×シャフト作品1発目。1期がよかっただけに、まどマギの製作に追われてる中どんな出来に仕上げてきたのか非常に興味があります。
社会風刺的要素を含んだラノベはちょっとずつですが増加傾向にあるような気がします。
ラノベのよさは自由度の高さだと思うんですよね。文学の固定観念に囚われない奔放さというか。
だからときには幼稚な読みものだと馬鹿にされることもありますが、中には本当に素晴らしい作品もあるんです。 - Posted at 2011.04.09 (01:24) by つかボン (URL) | [編集]
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てかその中で30ですか。何ですか大学生w
さっそく繋いだBSでTIGER&BUNNY視聴しましたが、とても気に入ってしまいました。何だかんだでまりほりも1期見てみようかなとか思ってるし、まだまだ視聴予定は増えそうです。三重なので基本放送が遅く、まだ間に合うのが何だか残念ですw
「C」はクセの強さではダントツな気がしますが、私的に当たったらどデカい匂いがプンプンしてます。
肝心の空パンなのですが、まだ3巻のレビューをしていない!
さっさとレビュー終えて、最後の空想を見届けたいです。 - Posted at 2011.04.11 (21:04) by ask (URL) | [編集]
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Re: askさんへ
コメントありがとうございます。
今期は本当にどうしたんでしょうね。某都知事の影響で一時はどうなるかと思いましたが、アニメ業界はまったくへこたれず、むしろ叛骨的でもあり安心はしました。しかし、それにしたってさすがに多いでしょうw
30といってもとりあえずですよ、とりあえずw 大学生だからって余裕はないですしね。普通に朝から講義ありますし。
その中から10作程度に絞れたらなと思います。
虎兎いいですよね! 今のところ今期ではトップレベルの面白さです。内容的にはベタで、これからどういう方向に進むのか粗方の目測は掴めるんですけど、最近忘れかけていた平易さがいいです。
まりほりは安心の新房×シャフトですからね。1期見てたころはそんなこと露とも知りませんでしたが、それでも面白かったです。電波女の影に隠れて印象が薄い気がしますが、お薦めです。
『C』は秀作ぞろいの今期の中でも抜きん出た面白さを見せてくれると信じているのですが、どうなるでしょう。ずっと期待し続けてきた作品なんで放送が楽しみです。
ややっ。それはいけない。すぐに3巻のレビューを終わらせないとっ。
あれ、でもそうなると短編集のレビューもまだということになるのでは?
まあなんにせよ、最後の空想をしかと見届けてやってください。 - Posted at 2011.04.12 (01:49) by つかボン (URL) | [編集]
-
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます - Posted at 2011.04.12 (18:12) by () | [編集]