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“文学少女”と恋する挿話集2/野村美月

○○名? ○○人?


以前バイト先の社員さんから聞いた話ですが、「○○名」と「○○人」は使われる状況が区別されているらしいです。
「○○名」は定員や定数が決まっているときに使われます。「定員○名様」みたいに。
「○○人」は単純に人数を表すときに使うとか。
もっと単純に、「○○名」のほうが「○○人」より丁寧な言い方という違いもあるのだけど、状況ごとに使い分けられるとは知りませんでした。

それを聞いたあと、そのことがやけに気になってろくにバイトに集中できませんでした。人数を口に出す機会が結構あったもので。






“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)
野村 美月 竹岡 美穂

エンターブレイン 2009-08-29
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『あなたは わたしを終わりのないものに お造りになりました。
 それが あなたの喜びなのです。
 この こわれやすい器を あなたはいくたびも うつろにし
 また いつも新しい生命で 充たされます』



――あらすじ――
親切だけどお節介で早とちりなななせの親友・森ちゃん。そんな彼女に恋する少年・反町の前に、“文学少女”が現れて―!?『“文学少女”と愛を叫ぶ詩人(ハイネ)』、に心葉に恋するななせの切ない胸の裡を描く『ななせの恋日記』ほか、今回はななせ&森ちゃん達をメインに贈る、物語を食べちゃうくらい深く愛する“文学少女”の、恋する挿話集第2弾。時に本編で語られなかった秘めた想いまでもが描かれる、甘く切なくほろ苦い、珠玉の恋のエピソード集。


――感想――
今月シリーズ最終巻が出るので、残りを一気読みしようと思い読了。
琴吹さん愛に溢れた素晴らしい短編集第2弾です。

といっても、琴吹さんの親友である森ちゃんと、その森ちゃんに恋する反町くんのお話が大半を占めていたのだけど。
今回で初登場となる反町くんがまたいい人なんだ。不器用だし、行動が空回りするタイプなんだけど、とにかく一途。まったく詩を嗜む風ではないのにすぐに影響されちゃうぐらい単純でもあり、真っ直ぐな素直さも持ち合わせている。芥川くんとはまた違う、庶民派な好青年という印象だった。なんとなく、心葉とは対極の存在だなあ。

そして森ちゃん。
本編ではあまりクローズアップされなかったけれど、なんだこの可愛い子! というかめっちゃいい子!
いつも険しい顔つきのせいで周りに勘違いされがちな琴吹さんのために、そのよさを知ってもらおうと頑張る森ちゃんが健気で愛らしい。友達想いって、行きすぎると相手からうざがられたりするもんだけど、交友関係で悩む琴吹さんにとっては森ちゃんぐらい強引で、優しさに満ち溢れた人のほうがよかったんだろうなあ。
森ちゃんが琴吹さんの友達でよかった。むしろ、森ちゃんだから琴吹さんの友達になれたのか。

というわけで、キャラ紹介(?)もそこそこに、内容について触れていこうかな。
短編集なんで例によって一話ごとに。


森ちゃんのつぶやき

タイトルどおり、森ちゃん視点で短めのお話が描かれています。
内容的には森ちゃんと琴吹さんの出会いがメインかな。
森ちゃんが当初芥川くんを好きだったのは意外。


“文学少女”と愛を叫ぶ詩人

反町くん初登場回。
反町くんの森ちゃんへ向けた好意を、クラスで人気のある琴吹さんへのものだと森ちゃん本人に勘違いされちゃうお話。
琴吹さんの事情を知っている森ちゃんは、最初反町くんのためと思い諦めるよう促すのだけど、どんどん落ち込んでいく反町くんの様子が心配になりつい応援しちゃったりと、気持ちの矢印があべこべになっていく様がとても愉快だった。森ちゃん可愛いけど、反町くんは災難だね。

そんな折に、気休め程度に文学ポストへ投稿したお悩み相談をきっかけとして、反町くんは文学少女と出会うことになる。
遠子先輩が登場するとやっぱり、文学少女シリーズを読んでるんだなって気持ちになる。
遠子先輩の口から紡がれるハイネの詩が、まるで美しい音色ともに聞こえてくるようだった。

天真爛漫な森ちゃんの唯一の悩みの正体がわかるところは、二人のやり取りが初々しくてちょっと背筋がむず痒くなった。嫌々と頭を振る森ちゃんに対し、それでも愛情を込めて呼ぶ反町くんが好きです。
うーん、でもやっぱり本人からしたら嫌なんだろうなあ。


“文学少女”とキスを待てない詩人

なかなか進展しない森ちゃんとの関係にもどかしさを覚える反町くんが、森ちゃんにキスを求めるお話。
何度も迫る反町くんに対して誤魔化そうとする森ちゃん。森ちゃんがキスを拒む理由がまたロマンチックというかメルヘンチックというか。
しかし二人の押し問答の末に、クラスメイトの変態から無理矢理買わされた琴吹さんの隠し撮り写真が森ちゃんに見つかってしまって事態は急転直下で修羅場へと。
その後、そっけない森ちゃんの一挙手一投足に暗澹たる想像を巡らしてしまう反町くん。彼の気持ちが自分のことのようにはっきりと伝わって、なんだか読んでいてお腹が痛くなった。

そして反町くんは、再度文学少女と出会うことになる。
反町くんがいじけてるときに遠子先輩を何気なく登場させるこの演出が憎いなあ。

反町くんと森ちゃんのお話では一番好きだったかも。
決して森ちゃんの水着エプロンが拝めたからとかじゃないからね。本当だよ!


ななせの恋日記

悶死しました。


“文学少女”と汚れつちまつた詩人

森ちゃんが琴吹さんことばかり気にかけて、軽く放置プレイを食らってることに不満を覚える反町くんのお話。
反町くんは可哀想だけど、うん、この時期は仕方がないんだ……! 本編だと心葉くんも遠子先輩も琴吹さんも一番辛い思いをしている時期だからっ。人一倍友達想いな森ちゃんが琴吹さんばかりかまってしまうのはどうしようもない。

でも彼氏として優先してもらいたいという反町くんの気持ちもわかるんだ。
そうして不貞腐れた反町くんはまたもや文学少女と出会う。
自分だって辛い思いをしている最中なのに、それでも反町くんの力になろうとする遠子先輩を見ていると胸が痛くなる。
遠子先輩の言う“文学少女”って、ただ単純に文学を好む少女という意味だけではなく、物語や詩が読む人に道を示すように、光を灯してだれかを導く存在という意味もあるんじゃないだろうか。
反町くんの導き手として振る舞う彼女の姿勢は、とても気高く美しかった。


“文学少女”と祝福する詩人

相も変わらず琴吹さんばかり心配する森ちゃん。うんざり気味な反町くんだったけど、琴吹さんの恋事情に意外な人物が浮かび上がってきて驚くというお話。
本編を知っていると、このあたりは読者も読んでいて辛くなる。
本編だと舞台の中の役者の視点から見てるという感覚。こちら側は、舞台の外から観客として見ているという感覚。
俯瞰してみると、このころって本当に悲惨な状況だったんだってことがありありとわかる。

疑問や不満や、その他様々な感情に苛まれ葛藤に揺れる反町くん。
それでも、落ち込んだ琴吹さんを放っておけず遊びに誘ったりする不器用な優しさが、反町くんの反町くんたる由縁なんだよな。

琴吹さんだけじゃない。
今まで何度もお世話になった文学少女にだって、彼なりのエールを贈った。
「恋をしろよ! 文学少女!」

反町くんは無意識だったのかもしれないけど、それは、今まで導き手だった気高い文学少女を、彼が一人の少女に変えた瞬間だったんだと思う。
その言葉に答えるかのように紡がれたタゴールの詩がまた素晴らしい余韻を残してくれた。
『ここから 私が立ち去る時
 わたしの別れの言葉に こう言わせて下さい』

『わたしが 見てきたものは
 たぐいなく素晴らしいものでしたと』


森ちゃん一筋なのに、友達想いの森ちゃんには振り回され気味で不満を露わにしたりするのだけど、なんだかんだで他人のことを想ってあげる反町くんは本当にいい男です。


ななせの恋日記 特別編

悶死、再び。






実は上で紹介した話の合間に、『“文学少女”の今日のおやつ』が何編か挿入されているのですが、あまりにユーモラスかつフリーダムすぎたので悩んだ結果、割愛しました。
具体的には心葉くんにロリコンや同性愛者やマザコン疑惑が投げかけられるというお話です。誤解のないように言っておくと、とても愉快な内容になっているので、まだ読んでない人はそちらも楽しみにして問題ないですよー。

というわけで、反町くんと森ちゃんをメインに感想を書いてきたけど、なんだかんだでやっぱり琴吹さんのための巻だったと思う。反町くんが主人公の話でも、そこから描かれる琴吹さんがまた……。
敢えてななせの恋日記については触れなかったけれど、色んな一面を持つななせを見てもらいたい。
切なさと愛しさの両方が込み上げてくる素敵な一冊でした。



関連商品
“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)
“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫)
“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)
“文学少女”見習いの、傷心。 (ファミ通文庫)
“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)
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Comments

つかボンさん、こんばんは。
いや~懐かしいですね。ななせの恋日記には、私も悶死した記憶がありますw
森ちゃんも非常にかわいくていい子ですね。
反町君も非常に好感のもてる青年で良かったです。
表紙からななせメインだと思っていましたが、この二人メインの話もなかなかどうして面白いじゃないですか。
チョイ役でいいので、再登場を希望しますw
Posted at 2011.04.11 (21:46) by じたま (URL) | [編集]
Re: じたまさんへ
コメントありがとうございます。

最終巻に向けて大急ぎで残りのシリーズを片づけてるところですっ。
楽しみは取っておきたい派なので、この勢いで読み進めていくのは物悲しいのですが、それでもななせの恋日記を読めたことはよかったですね。
言葉を選んでる余地なんてない。とにかく可愛い!
加えて、反町くんや森ちゃんという素敵な人物たちにも焦点が当てられ、このシリーズがどんどん深みを増していきますね。
確かに、チョイ役でもいいので二人には再登場を願いたいです。
Posted at 2011.04.12 (01:54) by つかボン (URL) | [編集]
小説を書いてると、何だか細かい言葉遣いに気をつけてしまいますよね。
テレビの字幕で「聞く」が遣いわけられていなかったり、疑問符のあとで空白を入れなかったり。
そういうのが私は気になります。

心葉君の疑惑は気になりますね。
私は文学少女は、完全に本編しか読んでいない状態なのですよ。
なので森さんと言われても、ピンと来なかったり。
しかし、断片を見てると読みたくなってきました。
文学少女見習いはなかなか手を出しづらいのですが、挿話集はそれぞれの味を楽しめますし、すらすらと読めるかもしれません。
ちょっと自分の読書状況を推し測って購入してみますね。
Posted at 2011.04.13 (17:44) by サクラ (URL) | [編集]
Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。

ああ、気になります気になります。
特に疑問符のあとの空白は気になりますね。あと、「頭痛が痛い」みたいな重複表現とか。
重複表現はもともと気になっていましたが、言葉遣いへの妙な感心って、小説を書き始めた後と前では段違いです。

文学少女は本編だけでも充分に楽しめる作品ですが、短編はまた違う楽しみ方ができるので興味を持たれたのでしたらぜひ読んでもらいたいです。外伝も本編を楽しめたのなら問題ない内容ではありますが。
心葉くんの疑惑はSSだけに短くまとめられ、オチにクスッとするようなお話で、まさにおやつといった感じですね。
反町くんや森ちゃんのように短編でしか楽しめない物語もありますし、サクラさんにも読んでもらえると嬉しいです。
Posted at 2011.04.14 (01:57) by つかボン (URL) | [編集]
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つかボン

Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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