Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
変愛サイケデリック/間宮夏生
- Posted at 2011.04.25
- l電撃文庫
心の筆跡
『東日本大震災 「顔が水より冷たく…」 被災児童が日記』
こういうときの気持ちを文字に残しておくことって大事だと思う。
子どものころの飾らない素直な言葉だからこそ、何年経って読み返しても心に響くはず。
――あらすじ――
「ストレンジサイケデリコ」こと彩家亭理子は、その名の通り千光高校きっての有名な変人であり、変わった愛情を持った者が集まる「変恋部」の部長である。そんな変人マスターが「愛しいね」と目をつけたのは、春になると死にたがると噂のクール系男子・神宇知悠仁だった。理子は悠仁の言動が「変愛」に関係しているとにらみ、興味を持つのだが…。『月光』と同じ世界を舞台に新たな登場人物が紡ぎ出す異色の青春“変愛”物語。
――感想――
間宮夏生先生の最新作。
『月光』と同じ世界で紡がれるもう一つの物語。奇妙な恋愛模様を描いた異彩放つ青春ストーリーです。
えー、一応始めに言っておきますと。
この本のタイトル、『恋』愛サイケデリックではなく『変』愛サイケデリックです。
間違えられることが多くてまみなつ先生ご本人も気にしているらしいので、注意しておきましょう。
さてさて、前作『月光』に惚れて期待していたまみなつ先生の新作だけど、うーん、どうだろう。
あらすじからすごく惹かれてたんだが、少し外したかもしれない。無意識に『月光』の雰囲気を求めてたのが不味かったかな。
これから読もうという人は、一度『月光』のことは忘れたほうがいいかもしれない。先入観に囚われるとガッカリするケースが多いみたい。
私の場合はガッカリというほどではなかったけれど、不完全燃焼ではあった。消化不良で胃もたれしてる感じ。
一番気になったのはストーリーの主題。
タイトルの『変愛』とは、ざっくり説明すると『マイノリティな恋愛の形』ということになる。それがこの物語のテーマなのだろうけど、実際に読んでみると、果たして本当にそうなのかとわからなくなった。
ストーリー自体は悪くないどころか面白い。けれどタイトルとの関連性が薄いのが残念すぎる。タイトルに惹かれた部分もあるから、それだけでも幾分か損してるなと思った。
キャラも少し気になった。
主人公(?)の理子には好感が持てた。論理的でフリーダムでミステリアスですかしてて、『月光』の野々宮くんと月森さんを足して二乗したような濃さがいいね。理子を見てると「やっぱりまみなつ先生だな」って思える。
あと、佐那も好き。理子のために一生懸命なところとか、理子の安全と自由の間で葛藤するところとか、人格が滲み出てるんだよな。エンディングで最大の謎を残してくれたところも素敵。
ただ、それ以外の登場人物のキャラメイクに粗を感じた。無理矢理エキセントリックにしているような散漫さがすごく不自然に思えて、なんというかイメージが噛み合わなかった。
でも、ストーリーは本当に面白かったんだよ。
あらゆる特殊なものを愛しいと思う(=興味を持つ)『ストレンジサイケデリコ』こと彩家亭理子は、『変恋部』の活動の一環として『死にたがりの宇宙人』と呼ばれる神宇知悠仁に関わろうとし、突っぱねられながらも、自分の欲求を満たすために彼への理解を深めていく。
過去のトラウマから他を徹底的に寄せつけようとしない悠仁へのアプローチは、もちろん一筋縄ではいかないのだけど、過去に悠仁の身に降りかかった事件の真相を少しずつ紐解くことで、彼を繋ぎ止めていた鎖を解いていく過程がよかった。
理子と悠仁を取り巻く人間たちの間でも個々の物語があって、多重層の面白さを味わうことができた。
愛し方を知らない人々と、愛し方にコンプレックスを抱く人々が寄り集まって作り出す異色の青春物語。
そう考えれば、確かに青春『変愛』小説だったのかもしれない。
好みでいえば『月光』だったけれど、まみなつ先生はこういうお話も書けるんだと知ることができた。
この本は、作家・間宮夏生のもう一つの顔だったんだろう。
ちなみに『月光』と同じ世界ということで、ちょっとしたファンサービスもあります。
こういうのはすごく好きなんで、これからもどんどんやってほしい。
名前だけ出て未登場のキャラもいるし、どうもシリーズ化は想定済みみたい。
それはそれで嬉しいし、期待している。
でも。
どうせするなら『月光』のほうが……は内緒。
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『東日本大震災 「顔が水より冷たく…」 被災児童が日記』
こういうときの気持ちを文字に残しておくことって大事だと思う。
子どものころの飾らない素直な言葉だからこそ、何年経って読み返しても心に響くはず。
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「愛しいね。実に愛しい」
――あらすじ――
「ストレンジサイケデリコ」こと彩家亭理子は、その名の通り千光高校きっての有名な変人であり、変わった愛情を持った者が集まる「変恋部」の部長である。そんな変人マスターが「愛しいね」と目をつけたのは、春になると死にたがると噂のクール系男子・神宇知悠仁だった。理子は悠仁の言動が「変愛」に関係しているとにらみ、興味を持つのだが…。『月光』と同じ世界を舞台に新たな登場人物が紡ぎ出す異色の青春“変愛”物語。
――感想――
間宮夏生先生の最新作。
『月光』と同じ世界で紡がれるもう一つの物語。奇妙な恋愛模様を描いた異彩放つ青春ストーリーです。
えー、一応始めに言っておきますと。
この本のタイトル、『恋』愛サイケデリックではなく『変』愛サイケデリックです。
間違えられることが多くてまみなつ先生ご本人も気にしているらしいので、注意しておきましょう。
さてさて、前作『月光』に惚れて期待していたまみなつ先生の新作だけど、うーん、どうだろう。
あらすじからすごく惹かれてたんだが、少し外したかもしれない。無意識に『月光』の雰囲気を求めてたのが不味かったかな。
これから読もうという人は、一度『月光』のことは忘れたほうがいいかもしれない。先入観に囚われるとガッカリするケースが多いみたい。
私の場合はガッカリというほどではなかったけれど、不完全燃焼ではあった。消化不良で胃もたれしてる感じ。
一番気になったのはストーリーの主題。
タイトルの『変愛』とは、ざっくり説明すると『マイノリティな恋愛の形』ということになる。それがこの物語のテーマなのだろうけど、実際に読んでみると、果たして本当にそうなのかとわからなくなった。
ストーリー自体は悪くないどころか面白い。けれどタイトルとの関連性が薄いのが残念すぎる。タイトルに惹かれた部分もあるから、それだけでも幾分か損してるなと思った。
キャラも少し気になった。
主人公(?)の理子には好感が持てた。論理的でフリーダムでミステリアスですかしてて、『月光』の野々宮くんと月森さんを足して二乗したような濃さがいいね。理子を見てると「やっぱりまみなつ先生だな」って思える。
あと、佐那も好き。理子のために一生懸命なところとか、理子の安全と自由の間で葛藤するところとか、人格が滲み出てるんだよな。エンディングで最大の謎を残してくれたところも素敵。
ただ、それ以外の登場人物のキャラメイクに粗を感じた。無理矢理エキセントリックにしているような散漫さがすごく不自然に思えて、なんというかイメージが噛み合わなかった。
でも、ストーリーは本当に面白かったんだよ。
あらゆる特殊なものを愛しいと思う(=興味を持つ)『ストレンジサイケデリコ』こと彩家亭理子は、『変恋部』の活動の一環として『死にたがりの宇宙人』と呼ばれる神宇知悠仁に関わろうとし、突っぱねられながらも、自分の欲求を満たすために彼への理解を深めていく。
過去のトラウマから他を徹底的に寄せつけようとしない悠仁へのアプローチは、もちろん一筋縄ではいかないのだけど、過去に悠仁の身に降りかかった事件の真相を少しずつ紐解くことで、彼を繋ぎ止めていた鎖を解いていく過程がよかった。
理子と悠仁を取り巻く人間たちの間でも個々の物語があって、多重層の面白さを味わうことができた。
愛し方を知らない人々と、愛し方にコンプレックスを抱く人々が寄り集まって作り出す異色の青春物語。
そう考えれば、確かに青春『変愛』小説だったのかもしれない。
好みでいえば『月光』だったけれど、まみなつ先生はこういうお話も書けるんだと知ることができた。
この本は、作家・間宮夏生のもう一つの顔だったんだろう。
ちなみに『月光』と同じ世界ということで、ちょっとしたファンサービスもあります。
こういうのはすごく好きなんで、これからもどんどんやってほしい。
名前だけ出て未登場のキャラもいるし、どうもシリーズ化は想定済みみたい。
それはそれで嬉しいし、期待している。
でも。
どうせするなら『月光』のほうが……は内緒。
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Comments
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というより、作品に惹かれたのではなく「理子」というキャラに惹かれたというのが真な気がしますが。 - Posted at 2011.04.27 (16:03) by ask (URL) | [編集]
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Re: askさんへ
コメントありがとうございます。
私も心新たにして読むべきでした。充分に楽しめなかったのは残念です。
理子よかったんですけどねー。やはり作品全体としてもう一押しほしかったです。 - Posted at 2011.04.28 (01:45) by つかボン (URL) | [編集]
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お疲れ様です
私も、前作の「月光」に惹かれて今回はどうなんだろ!?って期待していました。
確かに、前作を意識しないほうが良かったのかもしれませんね。
前作もそうですが今回はとくに感じたところは、
理子が引用する哲学・心理学みたいなものでしょうか?作者さんの人の“心理”を
探究する姿勢がうかがえました。渇望しているほどに。
私にとっては、日本語でおkみたいなところが多々ありましたけど(笑
圧倒的な個性で魅力を放つ理子は、すっごく魅力的でした。
惜しむらくは、ある意味運命的な出逢いを果たすほどの“理子と悠仁”でしたので、
最終の二人が対峙するあたりで、もう少し悠仁が抵抗する何かをみたかったかな。
でも、理子が対峙する時点でもう勝負はついてたのかな?
“人事を尽くして天命を待つ”みたいな。理子ほどの人物なら、そう判断した時点で
ほぼ決着はついていたのかもしれませんね。
あと、悠仁の姉のイラストを見てみたかったです♪
つかボンさんが記事をUPしてから時間がだいぶ経っていますが、
コメントよろしかったでしょうか?
失礼します - Posted at 2011.07.21 (01:28) by nagisa (URL) | [編集]
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Re: nagisaさんへ
コメントありがとうございます。
前作『月光』のラノベらしからぬ雰囲気に惚れていたので、今回の『変愛サイケデリック』で無理にラノベ寄りな味つけをしたことが、私にとってはどうにも残念でした。間宮先生本人は「無理に」だなんて思っていないかもしれませんが、一読者の目にはそう映ったのです。
しかしnagisaさんのおっしゃる通り、人の心理を穿ち紐解くかのような作風は今回にも顕れていて、持ち味をできる限りの形で読者へ提供しようとする真摯な態度が見受けられたことは嬉しかったです。
理子は魅力的でしたね。
逆に悠仁はどうしても好きになれませんでした。ラノベで変人キャラを描写するときでも、ある程度は心理学の枠に収めるべきだと思うんです。むやみやたらに変質的なキャラ性質をつけ足すだけでは、筋の通らないただただ意味不明なキャラになってしまいます。私にとっての悠仁がそれでした。まあ、「宇宙人」というあだ名にはぴったりだったのかもしれませんが。
そのせいか、ラストで理子と悠仁が対峙するシーンもいまいち盛り上がれなくて。
惜しいなあと思いました。
悠仁の姉のイラストは見てみたかったですね。描かれなかったのが不思議なくらいです。
古い記事へのコメントはまったく問題ないですよ! 過去の記事を読み返してくれる人なんて少数でしょうから嬉しいです。
ただ現在試験期間中なので、返信が遅くなるかもしれません。その点はご容赦を。 - Posted at 2011.07.21 (17:40) by つかボン (URL) | [編集]