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“文学少女”と恋する挿話集3/野村美月

追憶の記憶、再び。


今秋公開予定の劇場作品『とある飛空士への追憶』の公式サイトがオープンしました!
トップページがいい。うん、これはすごくいい。
まだまだ未開示情報が多いですが、いよいよって感じがしてきましたね。

当初、製作がマッドハウスというだけでも驚いていたのですが、スタッフがまた随分と豪華。
もちろん原作ファンとしては嬉しいことなんですが、正直ここまで力を入れた作品になるとは思っていなかったのですごく感動してしまったんです。製作側がこんなにも作品を愛してくれているんだなって。
これは今年切っての話題作になる予感!

あー、たーのーしーみーだー!






“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫)“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫)
野村 美月 竹岡 美穂

エンターブレイン 2010-04-30
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『私のからだのなかにつよく動くもの、
 そうして胸にやどっているものは、なにかしら。
 神さま、私の心をこれほどまで高めるものこそ、
 すなわちまごころの力でありますように』



――あらすじ――
恋に破れた「炎の闘牛」、柔道部の牛園くん。それでも遠子を思いきれず、思い出が欲しいと心葉に詰め寄り…『“文学少女”と炎を上げる牛魔王』、クラスにも、気安い笑顔を向けてくる担任の竹田千愛先生にもなじめない中学生の仔鹿だが―『迷える仔鹿と嘘つき人形』ほか、遠子の想いを目にした紗代や、夕歌と毬谷先生の出会いなど、甘くほろ苦いエピソードが満載!物語を食べちゃうくらい愛する“文学少女”と、彼女を取り巻く人々の、恋する挿話集第3弾。


――感想――
恋する短編集第3弾。
文学少女リレーもいよいよ佳境に入ってきました。

今回はマリちゃんと夕歌、その後のマリちゃん、先生になった竹田さんと流人くんの物語がメインに描かれる。
どれも遠子先輩のようについ料理の味にたとえながら読んでしまいそうになる、素敵なお話ばかりです。


“文学少女”と炎を上げる牛魔王

以前にも一度出てきた牛園くんのお話。
遠子先輩の勘違いの果てに「牛魔王!」と言わればっさりふられた牛園くんが、それでも諦め切れず「せめて天野との思い出が欲しい!」と心葉くんに迫ります。
個人的にはすごくお気に入りのお話だった。
『潮騒』の千代子が一番好きだと言った牛園くんが、どんな想いで遠子先輩に気持ちを伝えたのか。どんな想いで感謝を述べたのか。想像すると瞼が熱くなった。
以前までは単細胞でちょっと馬鹿な人ってイメージしかなかったのに、相変わらず人物の掘り下げ方が上手いよなあ。

それにしても、このときの心葉くんはまだまだ子供っぽくて、外伝読んだあとだとちょっと懐かしい気持ちになった。


“文学少女”と恋しはじめの女給

みなさんお待ちかね(のはずだよね!)の魚谷さんのお話です!
本編の『水妖』の合間の話だね。
実は魚谷さんが心葉くんを親しく思うようになった理由って結構謎だったんだけど、なるほど、恋する気持ちは伝染する、か。
きっかけは些細なものだったんだろう。遠子先輩の温かい言葉がより一層魚谷さんに心葉くんの存在を意識させてしまって、多感な中学生にはそれだけでも恋を芽生えさせるには充分だった。
私が思うに、魚谷さんが好きなのは心葉くんではなく、遠子先輩に好かれる心葉くんなんじゃないだろうか。

こいし、こいし……。


傷ついた紳士と穢れなき歌姫

マリちゃんこと毬也敬一と、夕歌の出会いのお話。
なんて美しい物語なんだろう! 『天使』の前日談として、二人の間にはこんな宝石のような素敵な時間があったなんて!
それでもふいにマリちゃんの背負う悲しみが顔を出して、深い闇に囚われそうになる描写もあってドキッとしてしまうときもあるのだけど、このときは夕歌が側にいてくれて、「ずっと私の側にいてくれますか?」と言ったマリちゃんに応えていたのに。
このあとのことを思うと胸が掻き毟られるような寂しさに襲われた。
どうして人は擦れ違ってしまうんだろうなあ。


卵の歌姫と彷徨える天使

本編から随分あとのお話。
今回の主人公の新田晴音さんが小学校のころに井上ミウの『文学少女』を読んだとあるので、このころには心葉くんたちもすっかり大人になってるだろうね。
余談だけど、野村先生のすごいところは、数年後ではなく、十年近くあとの将来の話をあっさり書いてしまうところだと思う。

プロのオペラ歌手に憧れて音大付属の高校に入学したのはいいものの、周りは自分より才能に富んだ人間ばかりで思うように結果を出せないでいた晴音は、ある日自分だけの練習場所でかつて天使と呼ばれていた壮年の男性と出会う。
天使に練習を見てもらうことでみるみる上達していった晴音は、次第にその男性に恋心を抱くようになる。かつての夕歌のように。
晴音と男性の練習風景は暗闇に灯るロウソクのように柔らかな温かみを感じるのだけど、些細なこと消えてしまいそうな脆弱さもあって、ページを読み進めるごとにじゅくじゅくと胸の内が疼いた。
男性が晴音を夕歌と重ねてしまい悲しそうな顔をするところとか、読むのも辛かった。
いつか晴音が、天使の本当の支えとなってくれたらいいな。


迷える子鹿と嘘つき人形

愛想と嘘ばかりで『ホントウ』のない同級生や教師を嫌い、自ら孤立しようとする女子校に通う中学二年生の子鹿里佳ちゃんと、その担任となった竹田さんのお話。
若さ故の過ちからどんどん間違った方向へ進んでしまう子鹿ちゃんの姿を、『ライ麦畑でつかまえて』のホールデンになぞらえた描写が印象深かった。
空っぽでも、先生として生徒の腕をしっかり掴むことができた竹田さん。
もしかしたら心配なんてしてなかったのかもしれない。でもいつか、それが『ホントウ』になればいいなって思った。


頑張る子鹿と臆病な旅行者

今までのことを反省してクラスの輪に自分から歩み寄ろうと努力し始めた子鹿ちゃん。けれど、思うようにいかなくて困っていたそんなとき、自分の靴箱の中に一通の手紙を見つける。それはラブレターのようでもあり、ストーカーめいた文章が綴られた奇妙な手紙だった。
成り行きで流人くんの協力を得て手紙の送り主を特定するも、相手側はまったく取り合おうとしない。
『ティファニーで朝食を』のホリーに自分は似ているんだと言った、送り主の真意はなんなのか。

ラストシーンは恐ろしいぐらいに美しい。
かつて遠子先輩と心葉くんに自殺から救われた経緯があるからこそ、竹田さんの取った行動には大きな意味があった。
人が当たり前のように抱く感情を抱けない竹田さん。
けれど彼女にも、だれかを救うことはできた。
子鹿ちゃんが変わったように、竹田さんも先生としての経験を通してなにかが変わり始めてるのだろう。


道化のつぶやき

『感情は絶対的である。そのうちでも嫉妬はこの世で最も絶対的な感情である』
ドストエフスキーの言葉にこんなのがあるけど、竹田さんが初めて当たり前に抱いた感情が嫉妬というのは、それだけ人間にとって嫉妬心が原始的で根強いものなんだろうなあ。

赤ちゃんが大嫌いな竹田さんにとって、先生という仕事はこれ以上なく向いてない職業ではないだろうか。赤ちゃんを見て当たり前のように可愛いと思えない竹田さんが、多感な生徒たちと一緒に笑い合ったり泣き合ったりすることなんてできないはずだから。道化の仮面を被って、嘘でも笑いや涙をこぼすのは苦痛でしかないんだろう。
でも、敢えて彼女が先生という職業を選んだのは、自分を変えたいという気持ちがあったから。
だから、竹田さんが最後にあんな素敵な表情を見せてくれたことが堪らなく嬉しくて、涙が止まりませんでした。

すべてを受け止めてくれる流人くんのそばで、彼女はきっと変われる。
この先の未来は描かれることはないのだろうけど、だれになんと言われようと私はそう想像する。だって、想像は自由なのだから。



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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
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