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“文学少女”見習いの、卒業。/野村美月

20000HIT御礼!


というわけでいつの間にか20000HITしてましたー!
我がブログ『BOOKDAYs!』を訪問してくださったすべての方に多大なる感謝を!
例のごとく言われるまで気づかなかった間抜け野郎ですが、これからも見捨てず足を運んでくださると嬉しいです。

いちいち報告しなくてもだれも期待なんてしていないでしょうが、HIT記念の企画は用意してなかったりします(汗)。
こういうときに企画が思いつく人って本当に羨ましい。ちょっと不甲斐なさに自己嫌悪です。
実は企画がないこともないんですが、ぐだることが目に見えてますので。晒さないで済む恥をわざわざ晒したりはしません。

こんな具合にこれからもマイペースに続けていきます故、どうぞよろしくお願いします。






“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)
野村 美月 竹岡 美穂

エンターブレイン 2010-08-30
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 わたしの初恋。
 なんて、贅沢な片思いだったんだろう。
 一番大好きな人の、あんなに近くにいられて、毎日、話をしたり視線を交わしたり、悩みを打ち明けたり、頭を撫でてもらったり。
 何度も何度も、好きですと伝えられた。
 あんな幸福な片思いなんてない!



――あらすじ――
もうひとつの”文学少女”の物語の、終わりとはじまり。
「わかったでしょう? 邪魔よ」 親友の瞳から、そう告げられた菜乃。しかも心葉は、そんな瞳とつきあうという! 仰天する菜乃の前に、さらに、瞳の過去――人を死なせたと噂された三年前、彼女の側にいた人物が姿を現す。瞳に何か起こっているなら、引くわけにはいかない! 心を決め、動きはじめた菜乃に、心葉は一冊の本を差し出し……。瞳が抱く秘密とは? そして、迫る心葉との別れと、菜乃の初恋の行方は――。もうひとつの”文学少女”の物語、堂々完結!


――感想――
見習いシリーズ、完結!

うわーん、菜乃大好きだったよー!
最初のころは、菜乃にこんなにも親和感情を抱くとは思っていなかった。たった3冊だったけれど、自分の中で彼女の存在がどんどん大きくなって、いつの間にかシリーズを終えるのが堪らなく嫌になっていた。
本編もそうだけど、このシリーズの最後はどうしてこんなにも寂寥の想いに包まれるんだろう。読み終わっても数日の間は、心に空白ができたような侘しさをふいに覚えることがある。
文学少女シリーズを愛しいと思う気持ちは、きっと理屈なんかじゃないんだ。


“文学少女”見習いの、寂寞。

最後に夏目漱石の『こころ』を起用しますか……。
『こころ』は浅識な私に多大な影響を与えた作品の一つ。だれもが持つ人の本能的なエゴイズムに翻弄され、それに相反する罪悪感に縛られながら生と死の狭間で苦悩する人々の生々しい描写が衝撃的だった。

菜乃の親友である瞳ちゃん、図書館司書の忍成先生、そして二人の過去に大きなしがらみを残す櫂くん。
読んでいくうちに彼らが『こころ』の『お嬢さん』、『先生』、『K』に重なり、次第に露わになる事件の全貌、その深淵さには息を呑んだ。

純粋で狂気的な想いに囚われ、それと同じぐらい激しく身を焼く嫉妬心に駆られ、たった一つの真実に気づくことができなかった瞳ちゃんと忍成先生。
純粋すぎるが故に擦れ違い、狂気的すぎるが故に過ちを犯す。
複雑で重厚な過去に繋がれた彼らの取った行動は、自身の罪悪に対する罰だった。互いに罪をなすりつけ合うのではなく、自分だけの罪だと主張し合ってすべてを背負い込もうとする。
そうやって徐々に壊れていく二人の姿は見るに堪えなくて、胸が締めつけられるような思いだった。

だからこそ、心葉くんが想像したたった一つの真実、櫂くんの願ったたった一つの未来を知ったとき、涙が流れ出るのを止めることができなかった。どうしてもっとわかり合うことができなかったんだろうと、ただ悲しくて。
『K』ではなく『私』になりたいと言った櫂くん。そんな彼が望んだ未来は永遠に訪れることはない。
その事実が忍成先生により深い罪を意識させることになる。いつもだれかの心に優しく溶け込む菜乃の真っ直ぐな想いも、『本当の淋しさ』を知る忍成先生には届かない。
でも、心葉くんには届いた。
きっとこの事件は、心葉くん一人では解決できなかった。心葉くん一人では、忍成先生がずっと胸に秘め続けてきた彼だけの真実を告げさせることはできなかったはずだ。
忍成先生と同じように『本当の淋しさ』を知る心葉くんに、『青空に似ている』の真実を告げる勇気を菜乃が与えたから。

この先、瞳ちゃんと忍成先生の罪が償われることはない。『本当の淋しさ』が消えることもないのだろう。
けれど、最後に忍成先生が告げた真実は、きっとだれかの救いになった。
このとき、止まったままだった物語のページを、彼は捲ったのだろう。


“文学少女”見習いの、卒業。

ラストはチェーホフの『桜の園』をモチーフにしたお話。
心葉くんの卒業を間近に控え、琴吹さんの家でバレンタインのチョコレート作りに励んだり、デートの誘いで心葉くんを琴吹さんと取り合ったり、そのデートで心葉くんと動物園に出かけたり。
明るい時間をすごす中で否応なく近づいてくる別れのときに、菜乃は思いを馳せる。
それは、彼女が『本当の淋しさ』を知った瞬間だった。

思えば、菜乃はこのシリーズの登場人物にしては珍しく、歪んだ過去も重く暗い秘密も抱えていない、清廉潔白で純粋そのもののヒロインだった。
彼女が文芸部に入部してから知った辛さや悲しみは、彼女が“文学少女”へと成長するためのかけがえのない糧となった。それを示唆するかのように、『初戀』のときには見られなかった遠子先輩の絵の前に、自身の意志で立つシーンがある。
 ありがとうございます。

初めは心葉くんに好かれるためだった。でもいつしか、菜乃の中で“文学少女”という存在は生き方の象徴そのものになっていた。
恋敵でもあり、目標でもあった“文学少女”に感謝を唱えた菜乃。
まさにこのとき、彼女は見習いから卒業したのだろう。

運命の卒業式当日、菜乃は心葉くんをある場所、「だれにも見られずにリボンを結べたら願いが叶う」と噂される木の前に呼び出す。
周りから無謀だと言われ、自分でも叶わぬ恋だとわかっていた。
でも止められなかった。
側にいられることが嬉しくて。
好きだと伝えられることが嬉しくて。
こんな素敵な片想いなんてない!

菜乃が心葉くんに告げた言葉と、それを受けた心葉くんが菜乃に贈った言葉が、やんわりと胸に広がって、これからずっと忘れらないものとなった。
前向きで明るくて、勇敢で困っている人を放っておけない優しい菜乃が大好きだったよ。
きっと彼女は大丈夫。
心葉くんが歩いていった道。そしてこれから菜乃が歩いていく道に、本当の幸いがあらんことを。

「ようこそ、新しい生活」




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Comments

20,000hitおめでとうございます!
まあ、企画なんて思いつかなくてもいいんじゃないでしょうかね。
おめでたければそれでいいクチなので、私はあまりするタイプじゃありません。

あと、お察しの通り、間違えて鍵コメにしちゃいました。。。

あ、たった三冊で完結なのですか。
番外編をだらだらやるっていうのも好ましい話ではありませんが、何となくもの悲しいですね。

『こゝろ』と『桜の園』のコラボですか。
それはまた切なそうな話になりそうですね。
『こゝろ』は授業を聴いていなかったのでうろ覚えなのですが、『桜の園』は面白かったと記憶しています。
何だか『こゝろ』も『見習い』も読みたくなってきました。
とりあえず、私も最近積み始めた本を消化しなければ。。。
Posted at 2011.05.04 (21:21) by サクラ (URL) | [編集]
Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。

> 20,000hitおめでとうございます!
ありがとうございます!
なんというか、言葉以外の形で感謝の意を伝えたいなあと思うのですが、思いつかなものは仕方ないですね。
感謝の気持ちは本当なので、それがわかってもらえれば充分なのかもしれません。 

あ、やっぱり間違いだったんですね。
FC2って一度鍵コメにしちゃうと訂正できないのが厄介ですよね。

満足のいく素晴らしい終わり方だったのですが、やっぱり寂しいです。いつの間にか菜乃を大好きになっていたので、そのせいもあるかもしれません。

私は逆に『こころ』は読んで『桜の園』は未読だったのですが、本編で語られる内容を読んでみると、どうも両作品とも別れを意識させる物語みたいですね。
私は積読本がとんでもないことになっていますが、『桜の園』はぜひとも読んでみたい1冊です。
サクラさんも余裕があれば『こころ』、『見習いシリーズ』読んでみてください。
Posted at 2011.05.05 (00:17) by つかボン (URL) | [編集]
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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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