Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
サクラダリセット5 ONE HAND EDEN/河野裕
- Posted at 2011.05.13
- l角川スニーカー文庫
星を追う子どもを追って映画館へ
新海誠監督の新作映画『星を追う子ども』を観てきましたー。
一昨日のことです。ザーザー降りの雨の中観てきましたよ。
観てみての感想としては、大変面白かったです。
日本神話のイザナギとイザナミの伝説を話の基軸とし、古代文明にまで触手を伸ばした壮大な物語でした。神秘的な映像演出や迫力のアクションシーンにも注目です。
ただ、色々思うところはあったのですが、突っ込んだ感想はまだ述べ難いです。というのも、物語自体に破綻はなく世界観も丁寧に作り込まれていたのですが、決着のついていないことが少し残っているんですよね。糸を辿っていたら途中で切れていたような感覚です。
単にこちらの理解が追いついていないだけかもしれないので、もう一度観てみたいというのが本音です。(もう一度見る金銭的余裕なんてありませんが)
よく言われてるとおり、頭の中でジブリの影がちらついたのは否定できません。まあそれは、多くの日本人の意識に根づくジブリの存在感がすごいんだと思いますが。必ずしも悪評の要因にはなり得ません。
ともあれ、面白かったので私は大満足です。
あと、熊木杏里さんの歌う主題歌『Hello Goodbye & Hello』がとにかく素敵で。秒速のときの山崎まさよしさんも素敵でしたよね。
アーティストチョイスにセンスを感じます。
『秒速5センチメートル』の主題歌で、山崎まさよし『One more time, One more chance』
――あらすじ――
「私を普通の女の子にすることが、貴方にできる?」復活した相麻菫。ケイは彼女に、咲良田の外に―能力が存在しない世界に移住することを提案する。だがそれが上手くいくのか、彼にも分からなかった。確証を得るため、ケイは管理局の仕事を引き受け、春埼、野ノ尾とともに、九年間眠り続ける女性の「夢の世界」へと入る。そこでケイは、ミチルという少女と青い鳥に出会い―。“咲良田”とは?能力とは?物語の核心に迫る第5弾。
――感想――
河野先生は、答えのはっきりしない禅問答的な思考実験が本当に好きだよね。
そして物語を動かす上でキャラの言動や行動を借りて、哲学的考察を踏まえた自分なりの見解を示すことに関しても秀逸。
というわけで今回は『青い鳥』がテーマ。夢の中にもう一つの咲良田を創る少女と本当の幸せを探すお話です。
同じものを創るという点で、3巻までの大きなテーマでもあった『スワンプマン』に通ずるところがあるね。
夢の中にもう一つの世界があって、そこではどんな願いでも叶ってしまう。そうして手に入れた幸せは本当の幸せなのだろうか? けれど、現実では足が動かなくて歩くこともままならない人が、夢の中では普通に生活することができるようになるような、たとえばそんな幸せもある。
ケイは夢の世界を全肯定はしなくとも、人それぞれの幸せの形を否定するべきではないと言う。
一方で、前巻の短編に登場した正義の味方を自称する宇川沙々音は、夢の世界を気持ち悪いと判断し、容赦なく捻り潰そうとする。
宇川さんの言い分はおそらく正しいのだろう。でもミチルや野良猫屋敷のお爺さんのように夢の世界に繋がれた人もいる。その存在を知ってもなお一寸の迷いもなく能力を行使できる宇川さんは、正義の味方というより、正義そのもののように思えた。
ケイが夢の世界に訪れた目的は、復活した相麻を咲良田の外に出しても彼女の人生、またその周囲に影響がないかを調べる実験をするためだった。
でも結局、それがだれのためだったのかを考えてみると、今回の事件はケイにとっても相馬にとっても辛いことでしかなかったんだろうな。たとえ相麻には、その未来が見えていたのだとしても。
今回ケイが、リセットで消してしまったもの。
その重みは、だれよりもケイが一番知っている。だって彼は、記憶を忘れることができないのだから。
でも代わりに、一人の少女の悲しみを拭い去ることができた。それは絶対的に正しい方法ではなかったのかもしれないけど、少なくとも少女に確かな幸せを感じさせることができた。
たとえばそれは、野良猫屋敷のお爺さんが言ったような、
そんな幸せ。
他人と交わることを疎み、ずっと孤独に生きてきたお爺さんだけの、とっておきの幸せの形。
ちなみに今回は野乃尾さんがレギュラー出演です。なんかそれだけで大満足。
しかし短編で関わってきたキャラや新キャラが意外と重要なので、そちらも要注目。特に浦地さん。悪役的存在でありながら、彼の感覚、価値観、主張が一番正しくてまともなのではないだろうか?
管理局も大きく関わり、相馬もいつになく不穏な動きを見せ始め、徐々に核心に迫り始めた本シリーズ。あらすじによると今巻から後半開始らしい。
ますます楽しみになって目が離せません。
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新海誠監督の新作映画『星を追う子ども』を観てきましたー。
一昨日のことです。ザーザー降りの雨の中観てきましたよ。
観てみての感想としては、大変面白かったです。
日本神話のイザナギとイザナミの伝説を話の基軸とし、古代文明にまで触手を伸ばした壮大な物語でした。神秘的な映像演出や迫力のアクションシーンにも注目です。
ただ、色々思うところはあったのですが、突っ込んだ感想はまだ述べ難いです。というのも、物語自体に破綻はなく世界観も丁寧に作り込まれていたのですが、決着のついていないことが少し残っているんですよね。糸を辿っていたら途中で切れていたような感覚です。
単にこちらの理解が追いついていないだけかもしれないので、もう一度観てみたいというのが本音です。(もう一度見る金銭的余裕なんてありませんが)
よく言われてるとおり、頭の中でジブリの影がちらついたのは否定できません。まあそれは、多くの日本人の意識に根づくジブリの存在感がすごいんだと思いますが。必ずしも悪評の要因にはなり得ません。
ともあれ、面白かったので私は大満足です。
あと、熊木杏里さんの歌う主題歌『Hello Goodbye & Hello』がとにかく素敵で。秒速のときの山崎まさよしさんも素敵でしたよね。
アーティストチョイスにセンスを感じます。
『秒速5センチメートル』の主題歌で、山崎まさよし『One more time, One more chance』
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「逃げるとか、誤魔化すとか、閉じこもるとか――」
それは否定的な言葉だ。決して正しくはない言葉。
ケイは言った。
「人が必死に幸せになろうとする行為を、悪いことのように言うべきじゃない」
――あらすじ――
「私を普通の女の子にすることが、貴方にできる?」復活した相麻菫。ケイは彼女に、咲良田の外に―能力が存在しない世界に移住することを提案する。だがそれが上手くいくのか、彼にも分からなかった。確証を得るため、ケイは管理局の仕事を引き受け、春埼、野ノ尾とともに、九年間眠り続ける女性の「夢の世界」へと入る。そこでケイは、ミチルという少女と青い鳥に出会い―。“咲良田”とは?能力とは?物語の核心に迫る第5弾。
――感想――
河野先生は、答えのはっきりしない禅問答的な思考実験が本当に好きだよね。
そして物語を動かす上でキャラの言動や行動を借りて、哲学的考察を踏まえた自分なりの見解を示すことに関しても秀逸。
というわけで今回は『青い鳥』がテーマ。夢の中にもう一つの咲良田を創る少女と本当の幸せを探すお話です。
同じものを創るという点で、3巻までの大きなテーマでもあった『スワンプマン』に通ずるところがあるね。
夢の中にもう一つの世界があって、そこではどんな願いでも叶ってしまう。そうして手に入れた幸せは本当の幸せなのだろうか? けれど、現実では足が動かなくて歩くこともままならない人が、夢の中では普通に生活することができるようになるような、たとえばそんな幸せもある。
ケイは夢の世界を全肯定はしなくとも、人それぞれの幸せの形を否定するべきではないと言う。
一方で、前巻の短編に登場した正義の味方を自称する宇川沙々音は、夢の世界を気持ち悪いと判断し、容赦なく捻り潰そうとする。
宇川さんの言い分はおそらく正しいのだろう。でもミチルや野良猫屋敷のお爺さんのように夢の世界に繋がれた人もいる。その存在を知ってもなお一寸の迷いもなく能力を行使できる宇川さんは、正義の味方というより、正義そのもののように思えた。
ケイが夢の世界に訪れた目的は、復活した相麻を咲良田の外に出しても彼女の人生、またその周囲に影響がないかを調べる実験をするためだった。
でも結局、それがだれのためだったのかを考えてみると、今回の事件はケイにとっても相馬にとっても辛いことでしかなかったんだろうな。たとえ相麻には、その未来が見えていたのだとしても。
今回ケイが、リセットで消してしまったもの。
その重みは、だれよりもケイが一番知っている。だって彼は、記憶を忘れることができないのだから。
でも代わりに、一人の少女の悲しみを拭い去ることができた。それは絶対的に正しい方法ではなかったのかもしれないけど、少なくとも少女に確かな幸せを感じさせることができた。
たとえばそれは、野良猫屋敷のお爺さんが言ったような、
「だれかと一緒にいなさい。それだけでいい。隣にいる人が笑うことを、幸せと呼ぶんだ」
そんな幸せ。
他人と交わることを疎み、ずっと孤独に生きてきたお爺さんだけの、とっておきの幸せの形。
ちなみに今回は野乃尾さんがレギュラー出演です。なんかそれだけで大満足。
しかし短編で関わってきたキャラや新キャラが意外と重要なので、そちらも要注目。特に浦地さん。悪役的存在でありながら、彼の感覚、価値観、主張が一番正しくてまともなのではないだろうか?
管理局も大きく関わり、相馬もいつになく不穏な動きを見せ始め、徐々に核心に迫り始めた本シリーズ。あらすじによると今巻から後半開始らしい。
ますます楽しみになって目が離せません。
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