Colorful Concrete
おもしろき ことなき世を おもしろく 高杉晋作
変身、掟の前で 他2編/カフカ
- Posted at 2011.07.13
- l一般書籍
『Spica-スピカ- 第2号』発刊!
今回は少し時間がかかってしまいましたが、ようやく『Spica-スピカ- 第2号』が発刊されました!
諸事情により人数が減ってしまいましたので物足りなく感じるかもしれませんが、その分一生懸命に書いていますので、楽しんでいただけると幸いです。
感想やアドバイス、辛辣なコメントを心よりお待ちしております。
――あらすじ――
家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。カフカの傑作4編を、もっとも新しい<史的批判版>にもとづいた翻訳で贈る。
――感想――
もう3週間も前だと、どうして読み直そうと思ったのかが思い出せない。
ともかく図書館で借りて再読。
カフカと言えば難解な作風で知られる有名すぎる作家だけど、人の感性から逸脱した独創的な実存主義を描いた世界観が売り。作品によっては、読む者を発狂させるほどとも言われてる。この代表作4編はまだ安全な方だと思う。
てか、安全とか危険とかいう単語が書物の評価に出てくる時点で、なんかもう色々すごい。
作品が作品だけに感想が非常に難しいので、簡潔に記そうかと。
人に薦めるものでもないしね。興味を持った人だけが読めばいいと思う。
判決
何度読んでも解釈が難しい。
友人や親よりも自分が可愛いと思う主人公が、無意識的に自分の行動や考えになにかと理由をつけて正当化しようとしている。その本性を父に見抜かれ、追求、つまり判決を下され最後には……ってお話なんですが。
主人公に介護を受けていた父は、最初こそしおらしくしていたのに突然気が狂ったようにわめき出したり、それを受けての主人公の反応が色々と不可解であったりと、読み解こうにも一筋縄でいかないんだよなあ。
ちなみにこの『判決』は、カフカがカフカたる所以の作風を確立した作品と言われている。この作品を執筆するにあたって、彼の中でなにが変わったのだろう。
変身
カフカといえばこれ、と言われるぐらいの超有名作品ですね。朝目覚めると巨大な毒虫に変化してしまっていた不幸な営業マン、グレーゴルの半生を記したお話。
どうだろう、読む人によっては気分が沈むお話なのだろうか。私は、内容に反してコメディチックな描写がさすが名作だと思えるんだけど。
つまりこれは人間も虫も変わらないということなんだろう。
実際グレーゴルは虫に変身しても人生に絶望することはなく、むしろ普段どおりの仕事に埋もれる生活を続けようとしていた。本の虫ならぬ仕事の虫。ただ家庭に金を運ぶだけの働き蟻みたいなもの。
このお話の酷な点を挙げるとするなら、グレーゴルの身の上に降った不幸ではなく、彼の家族の対応だと思う。今までグレーゴル一人に家計を支えてもらっていたというのに、虫に変身した途端の手の平返し。
そしてラスト。それまでの雰囲気から一転、とても晴れ晴れとした描写で締めくくられている。読む人が発狂すると言われる理由がなんとなくわかる1シーンだった。
しかし妹のグレーテに萌えてしまう私は大丈夫か? 自分のラノベ脳がひどい。
アカデミーで報告する
人間の知能を手に入れるまでに進化したサルが、人間界で自分の人生についてを演説するお話。
終始サルの演説が続くだけのごく短いお話だけど、『変身』なんかより私はこちらの方が気が滅入る。人でないものが人のふりをする(サルは意識的に人のふりをしてるわけではないけど)のって、身震いするほど怖い。起源を辿れば人間はだれしもがもとはサルなわけだけど、今となっては別種って印象が根づいてんだよなあ。
掟の前で
これまた短い。わずか4ページにも満たないショートストーリー。
個人的には一番難しいお話だった。門の中に入りたいが門番に「今は駄目だ」と通行を許可されず、「今はだめだとしても、後でならいいのか」と尋ねると、「たぶんな。とにかく今はだめだ」と門番は答える。そうして男は命尽きるまで待ち続けるのだが、とうとう門をくぐることは叶わず、また自分以外の人間が門を訪れることもなかった。
最後に男と門番の核心に触れる会話がなされるのだけど、いやほんとさっぱりです。
会話から推測するに、『掟の門』というのはだれもが一つは持っていて、それは破るべきものだと思われる。実際、門番は「通りたければ通ればいい」と言っているし。けれどそのあとに「おれは一番の下っ端で、中にはさらに屈強な門番が待ち構えてる」と、なんか「やつは四天王で最弱」的なニュアンスの台詞を吐くことで脅しをかけてたりするから、それがなにを意味してるんだろうなあって。
たったの数ページですし、みなさんも興味があれば読んでみるといいかも。
関連商品
訴訟 (光文社古典新訳文庫)
カフカ短篇集 (岩波文庫)
カフカ寓話集 (岩波文庫)
異邦人 (新潮文庫)
ツァラトゥストラ〈上〉 (光文社古典新訳文庫)
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ある朝、不安な夢から目を覚ますと、グレーゴル・ザムザは、自分がベッドのなかで馬鹿でかい虫に変わっているのに気がついた。
――あらすじ――
家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。もっともカフカ的な「掟の前で」。カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。カフカの傑作4編を、もっとも新しい<史的批判版>にもとづいた翻訳で贈る。
――感想――
もう3週間も前だと、どうして読み直そうと思ったのかが思い出せない。
ともかく図書館で借りて再読。
カフカと言えば難解な作風で知られる有名すぎる作家だけど、人の感性から逸脱した独創的な実存主義を描いた世界観が売り。作品によっては、読む者を発狂させるほどとも言われてる。この代表作4編はまだ安全な方だと思う。
てか、安全とか危険とかいう単語が書物の評価に出てくる時点で、なんかもう色々すごい。
作品が作品だけに感想が非常に難しいので、簡潔に記そうかと。
人に薦めるものでもないしね。興味を持った人だけが読めばいいと思う。
判決
何度読んでも解釈が難しい。
友人や親よりも自分が可愛いと思う主人公が、無意識的に自分の行動や考えになにかと理由をつけて正当化しようとしている。その本性を父に見抜かれ、追求、つまり判決を下され最後には……ってお話なんですが。
主人公に介護を受けていた父は、最初こそしおらしくしていたのに突然気が狂ったようにわめき出したり、それを受けての主人公の反応が色々と不可解であったりと、読み解こうにも一筋縄でいかないんだよなあ。
ちなみにこの『判決』は、カフカがカフカたる所以の作風を確立した作品と言われている。この作品を執筆するにあたって、彼の中でなにが変わったのだろう。
変身
カフカといえばこれ、と言われるぐらいの超有名作品ですね。朝目覚めると巨大な毒虫に変化してしまっていた不幸な営業マン、グレーゴルの半生を記したお話。
どうだろう、読む人によっては気分が沈むお話なのだろうか。私は、内容に反してコメディチックな描写がさすが名作だと思えるんだけど。
つまりこれは人間も虫も変わらないということなんだろう。
実際グレーゴルは虫に変身しても人生に絶望することはなく、むしろ普段どおりの仕事に埋もれる生活を続けようとしていた。本の虫ならぬ仕事の虫。ただ家庭に金を運ぶだけの働き蟻みたいなもの。
このお話の酷な点を挙げるとするなら、グレーゴルの身の上に降った不幸ではなく、彼の家族の対応だと思う。今までグレーゴル一人に家計を支えてもらっていたというのに、虫に変身した途端の手の平返し。
そしてラスト。それまでの雰囲気から一転、とても晴れ晴れとした描写で締めくくられている。読む人が発狂すると言われる理由がなんとなくわかる1シーンだった。
しかし妹のグレーテに萌えてしまう私は大丈夫か? 自分のラノベ脳がひどい。
アカデミーで報告する
人間の知能を手に入れるまでに進化したサルが、人間界で自分の人生についてを演説するお話。
終始サルの演説が続くだけのごく短いお話だけど、『変身』なんかより私はこちらの方が気が滅入る。人でないものが人のふりをする(サルは意識的に人のふりをしてるわけではないけど)のって、身震いするほど怖い。起源を辿れば人間はだれしもがもとはサルなわけだけど、今となっては別種って印象が根づいてんだよなあ。
掟の前で
これまた短い。わずか4ページにも満たないショートストーリー。
個人的には一番難しいお話だった。門の中に入りたいが門番に「今は駄目だ」と通行を許可されず、「今はだめだとしても、後でならいいのか」と尋ねると、「たぶんな。とにかく今はだめだ」と門番は答える。そうして男は命尽きるまで待ち続けるのだが、とうとう門をくぐることは叶わず、また自分以外の人間が門を訪れることもなかった。
最後に男と門番の核心に触れる会話がなされるのだけど、いやほんとさっぱりです。
会話から推測するに、『掟の門』というのはだれもが一つは持っていて、それは破るべきものだと思われる。実際、門番は「通りたければ通ればいい」と言っているし。けれどそのあとに「おれは一番の下っ端で、中にはさらに屈強な門番が待ち構えてる」と、なんか「やつは四天王で最弱」的なニュアンスの台詞を吐くことで脅しをかけてたりするから、それがなにを意味してるんだろうなあって。
たったの数ページですし、みなさんも興味があれば読んでみるといいかも。
関連商品
訴訟 (光文社古典新訳文庫)
カフカ短篇集 (岩波文庫)
カフカ寓話集 (岩波文庫)
異邦人 (新潮文庫)
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Comments
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今回も読ませていただきます。
今回は文学しているようで(笑)ウチにもありますよ、この本。
カフカというと、理由もなく逮捕されたり(審判)城に行きたいのになぜかたどり着けなかったり(城)と読み手の想像にゆだねる展開が結構好きです。自分がホラー好きなんで、こういうなんとなく不安な展開には惹かれる物があります。
「変身」は“老人介護”を暗示する話、という説があるのを聞いたことがあります。確かにグレゴールを“痴呆症にかかった老人”に置き換えると、驚くほど話が分かりやすくなりますよね。家族の反応なんか“介護疲れ”に陥った人みたい。
最後が明るいのは、介護から開放された家族達の気持ちを表してるのかも。
とはいえ、そういう解釈をしなくとも“ある日突然、虫になってしまう”という不条理な展開が、人々に衝撃を与えたのだと思います。絵として想像してみても、異様な雰囲気というのが伝わってきますからね。
ホラー作家にもやっぱり影響を与えていて、海外のホラー作家ジョー・ヒル(スティーヴン・キングの息子さんです!)の短編に「蝗の歌をきくがよい」(小学館文庫「20世紀の幽霊たち」所収)というまんま
「変身」のパロディになっている作品があります。
こっちでは虫に変身した主人公が、外へ出て行って殺戮を開始するという至って分かりやすい話です(笑)。
興味があればどうぞ。 - Posted at 2011.07.14 (22:11) by naomatrix (URL) | [編集]
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Re: naomatrixさんへ
コメントありがとうございます。
> こんばんは。Spica第2号刊行おめでとうございます!
> 今回も読ませていただきます。
ありがとうございます!
気に入っていただけるかわかりませんが、読んでもらえると嬉しいです。
そうですね、このブログにしては珍しく、ですかね。本を読んだら欠かさず感想を書いてるだけなんであまり意識はしてないんですが。
『審判』は読んだことありますが『城』はなかったかも。でもカフカの作品って半分ぐらいが未完で、中には他の人が編集して世に出してるものもあるので素直に楽しめないんですよね。ちなみに『審判』もそのうちの一冊だったり。
「老人介護」という解釈はたしかに物語を読み解く上で助けになりそうですね。とはいえ、本文に書いてる通りなんですけどね。『変身』はカフカ作品群の中でも一際わかりやすいです。
そんな大物にまで影響を与えていたのですか。さすがですね。
彼の作風が後世に残したものはとても大きかったのでしょう。多くの作家に影響を与えてますからね。日本人でいうなら、よく知られてる通り村上春樹先生など。
その中でもホラーというジャンルにおいては格別と聞きます。
でも私はホラー苦手なんで遠慮しておきましょうw - Posted at 2011.07.16 (00:31) by つかボン (URL) | [編集]