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トカゲの王Ⅰ ―SDC、覚醒―/入間人間

ひなげしの坂


先日『コクリコ坂から』を観に行きました(テスト勉強せんかい!)。
結果から言うと、とても味のある良雰囲気かつストーリー性を重視した素晴らしいアニメーション映画でした。もともと好評だったのは知っていたのですが、ハードルを上げ足りなかったぐらいです。
時代背景が東京オリンピック開催前の1963年ということで、私たちの年代でも充分に楽しめましたが、もう一世代大人になってからだとまた違った見方ができたかもしれません。そう思うと、十年後二十年後にもう一度見たくなるような作品でした。

私の知識不足なのかどうかはわかりませんが、作品中にはフランス語が至るところで関わってきて、たとえばタイトルの「コクリコ」は仏語で「ひなげし」という意味ですし、他にも主人公の女の子のあだ名が本名を仏語に訳したものであったり、「学生の集まる地区」という意味で実際にパリに存在する「カルチェラタン」という言葉が、文化部棟の名前であったり。
その「カルチェラタン」の取り壊しに対し学生たちが反対運動を起こすというのが物語の筋なんですが、自主的に文化的な活動に勤しむ学生たちや、学生が一丸となって建物を大掃除したりするシーンを観ていると、ジブリならではの「生きる力」を感じました。

もう一つ、作品内で強く主張されてるのは恋愛面です。時代背景も上手く盛り込んだ悲劇の恋物語だったのですが、不思議と悲愴な印象はなく、どちらかといえばやはり苦境から立ち上がり前進する力強さを見せつけられたという感じです。

惜しむらくは、十代前半の子どもたちにはわかりづらい内容だったかもしれません。でも『耳をすませば』とは異なる青春の形があって、どの年代にも響くものがあるのではと思いました。






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 カワセミ。やつの能力は本物で、俺の力は単なるインチキ。
 まったくもってその通り。
 だったらそのインチキこそ、俺の力としよう。
 どこまでもなにもかも騙し抜いて、本当にしてしまえ。
 手始めに騙す人間は目の前にいる。
 そう、俺自身を騙すんだ。



――あらすじ――
俺はこんな所で終わる人間じゃない。その他大勢が強いられる『普通の人生』から逸脱した、選ばれし者なんだ。俺に与えられた能力『リペイント』は、インチキめいたまがい物。でも、俺には世界を“塗り替える”資格がある。このインチキこそ、俺の力なんだ。どこまでもなにもかも騙し抜く。まず手始めに、俺自身も騙す。そして、目の前に立ちはだかる不気味な殺し屋どもから必ず逃げ延びてやる。だって、俺は。『最強』なんだから。


――感想――
待ってましたの入間人間先生の新シリーズ!
本来なら読み終わってすぐ更新するつもりだったんだけど、なぜか商品画像がずっと表示されなくて今に至ってしまった。他の作品ならたいして気にならないが、やっぱ入間先生だからね。それに今回の表紙はとても気に入ってるんだ。『多摩湖さんと黄鶏くん』に続くちょーちょー素敵なカップル表紙! 左さんもブリキさんもカップル写体がとてもエレガントで、もう幸せの絶頂です。ブリキさん、次巻もよろしくお願いします!

記事順がおかしくなってるのは、その、まあ……察してください。
特例ですよ、特例。

まず総評を述べるなら、書いてみたかったお話を書いてみましたって感じ。流行りの異能バトルものだけど、入間先生独特のテイストが盛り込まれていて、ラノベラノベしてるようで一線を画してるようでもある不思議な世界観は健在だった。
よく言われてる通り、今回は特に伊坂先生の影響を強く受けていたみたい。章題とか、殺し屋の呼び名とか。加えて流行に反旗を翻すような、異能バトルものに対するアンチテーゼな部分も見受けられた。なんてたって主人公が無能だからね。一応能力者だけど、その能力は目の色を変えるというただそれだけのもの。そして絵に描いたような中二病罹患者です。

それにしても、入間作品で欠陥のある主人公を見ると安心してしまう
入間作品には、自分の欠陥を克服するのではなく、欠陥と共存しようとする姿勢に立つ主人公が多い、と個人的には思ってる。その妙にリアルなところが私は好きなんだよな。電波女の後に本作だったから、「入間先生おかえり!」とつい思ってしまった。丹羽くんは例外だったのだよ、丹羽くんは。

その主人公のトカゲくんだけど、もうさいこーだよ。言動とか行動を見てると「うがー!」って背中がむず痒くなって大変。どこの私ですかこの子は。
さすが今回のテーマは「中学生」とあとがきで豪語するだけあって、だれもが一度は負ったであろう心の傷跡を深くえぐり返されてしまった。なんでそんなに人物像を捉えるのが上手いの!
一度でいいから入間先生が意識的に書いた中二病作品は読んでみたかったんだよ。願いが叶えられて飛び跳ねたくなるぐらい嬉しかった。もうほんと、すごく……中学生です。

でも、なまじ目の色を変える『リペイント』なんて能力を持ってしまったがゆえに自分の可能性を捨て切れなくて、夜な夜な異能力者たちが繰り広げる戦いの世界を妄想し憧れては痛々しい日課を繰り返すトカゲくんの姿は、単なる中二病の象徴とは言えないんだよね。
わずかな期待に煽られて、惨めに可能性という藁にしがみついた結果が今のトカゲくんなんだよ。中二『病』とはよく言ったもので、いわば被害者なんだろう。

その上、不運にも本物の能力者たちの殺し合いに巻き込まれ、自分の無力さと限界をこれでもかというぐらい痛感させられるのだから読んでいるこっちも胃が痛む。主人公がボロボロですよ。
あれほど憧れていたラノベの世界はトカゲくんの居場所じゃなかった。かつての期待も夢も打ち砕かれ、憧れなんて砂塵と化し、反比例して増大していく生への執着から次第に壊れていく様に背筋をぞくりとさせられた。
希望さえ与えられなかったら、絶望することもなかったのにね。これぞ入間節の真骨頂。よくもまあ、ここまで主人公にどSな小説を書いたもんだ。

ところでカワセミさんのヴィジュアルがどうしても某学園異能バトルの彼に見えて仕方ないんだが、狙ってんのかな。白白白の上に最強の能力者ときたら……ねぇ?
このカワセミさんは後になってみればとてもいいキャラであることに気づくのだけど、さすが最強と名乗るだけあって恐怖の与え方を熟知してるなあ。
でもまさか巣鴨ちゃんが一番怖いとは思わなんだ。エロこわだよ、エロこわ。「考える」ことを放棄したら人はこんなにもあっさりと他人を利用できるのか。能力者すら圧倒するその人格、もはやオーラがヒロインじゃなくてラスボスだよ。

内容で一つ残念だったのは、てっきりトカゲくんは頭脳プレーで立ち回ってくれると思ったのに、それがなかったことかな。役に立たない能力でも別の使い道を見出してくれるんじゃないかと期待したんだけど、「あ、そういう決着方法なんだ」って。
私がこの作品に求めてたのはそこだったから、これは認識を改めるべきだろうか。
でも「騙す」の意味は期待どおりだったよ。「騙す」。いい言葉だ。入間先生の原点だね。


例のトリックは絶対に必要だったのかいまだに疑問だが、しかし楽しませてもらったことには変わりない。終わらせ方がとても気になっただけに、次巻の情報が出ていないのが辛い。
そういえば今のところ、他作品との世界観の共有はなされていないみたいだね。
超能力が存在してる世界だからなあ。でもそれが逆説的にパラレルワールド説を強めてくれたりするので、ロマンを感じてしまいます。こりゃ一層、続きが待ち遠しい。
シロサギさんとか白ヤギさんとかナメクジさんとか、まだまだ今後の活躍が楽しみな人もいっぱいいるんだよ。
いつものごとく頭の中で妄想を練りつつ、心待ちにしていようと思います。


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Comments

『コクリコ坂』よかったですか。
宮崎吾郎といえば『ゲド戦記』でガクッとした思い出があったんですけどね。
ただ、表情の激しい変化とかは好きでした。
あらすじ読んだところでは、なんだか安保闘争的な感じがしますね。
いまはお金がないのですが、レンタルされたときには期待しています。

『トカゲの王』って入間さんだったんですか。
名前は聞いていましたが、全く予想外でした。
けれど内容は、まんま入間さんですねw
特に「本物が出てくる」ってところが。
こうゆう斜めに構えたところに、好感を抱いたりします。
Posted at 2011.07.26 (22:45) by サクラ (URL) | [編集]
こんばんは。
『コクリコ坂』見よう見ようと思いつつ、結局見に行ってないという(笑)。
吾朗監督というと『ゲド戦記』が評判が悪いみたいなんですが、個人的には『そこまで悪いか?』ってスタンスですね。原作者にそっぽを向かれたという経緯はありますが・・・・・・。

読みましたか『トカゲの王』!。
そうですよね。「カワセミ」は私も某禁書の第一位さんが浮かびました(笑)。
もうちょっとトカゲ君が『騙す』ということに、注力してくれれば、評価が上がったんですが・・・・・・。
個人的には『教団』にどのように挑んでいくのかが気になるところ。
それにしても、最後の一行はカッコいいな~!!
Posted at 2011.07.27 (20:55) by naomatrix (URL) | [編集]
Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。

ジブリは基本的に原作の一部分しか映像化してないですからね。そのおかげでわかりづらかったり。まあ、単純に失敗してる作品もあるわけですが。その例が『ゲド戦記』でしたね。
でも今回は成功したんではないかと思います。少なくとも、『ゲド戦記』のような落胆は味わいませんでした。
時代設定が安保闘争のすぐ後でもありましたし、もしかしたら裏設定としてあったかもしれませんね。その点も楽しみにして見ていただければと思います。

本当に安心するぐらい入間先生な内容でした。
それに今回は心底楽しみながら書いたんじゃないかなと思うぐらい、文章から生き生きとした印象を受けましたね。
おそらくこういう風に斜めに構えて、ある意味挑戦的な物語を書くのが面白くて仕方がないんでしょうね。
Posted at 2011.07.28 (16:46) by つかボン (URL) | [編集]
Re: naomatrixさんへ
コメントありがとうございます。

私は『ゲド戦記』を見て落胆した側の人間でしたね。原作をすべて読んだわけではないですが、少しでも読むと本当に映画が陳腐に見えてきて……。
ただ今回で吾朗さんも汚名返上できたんではないでしょうか? 見切らず観に行ってよかったです。
お暇があればぜひ見てみてください。

やはり彼に見えますよねw こればっかりはわざとなんじゃないかなと思うんですが、どうなんでしょう。
やっぱりトカゲくんの戦い方ですよね。「能力関係ないじゃん!」ってちょっと思っちゃいましたもん。
でもでもこれからです。本当に楽しみですよ。
Posted at 2011.07.28 (16:53) by つかボン (URL) | [編集]
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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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