FC2ブログ

夏期限定トロピカルパフェ事件/米澤穂信

帰還


どうもお久しぶりです。
一昨日、沖縄より帰還し、昨日親の車に乗って地元の愛媛に戻ってまいりました。今は実家の自室よりキーボードを叩いております。
夢のようなバケーションでした。人生の楽園というのは沖縄のような場所を言うのでしょう。

沖縄を訪れたのは今回で6度目ですが、行くたびに景色の変わる土地だと思いました。観光地というのは往々にしてそういうものなのかもしれません。でも不変のものも確かにあって、それはたとえば海の蒼さであったり、地元民の大らかな心のありようでしょうか。
沖縄の言葉に「いちゃりばちょーでー、ぬーふぃだてぃぬあが」というものがあります。「行き会えば兄弟、なんの隔てがあるのか」という意味ですね。他にも「一緒に歌えばその人とは兄弟」という理念もあるらしく、沖縄の人はそれらの考え方を生き様に反映させています。人と人との繋がりを寛容に受け入れ、非常に大切にする人種なんです。
だれかと接するだけで温もりを得られる素敵な旅路でした。

予定していた写真の掲載は次回の記事から順々にやっていこうと思います。
現在は写真を選定中ですね。のんびりと待っていてくださると嬉しいです。






夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)
米澤 穂信

東京創元社 2006-04-11
売り上げランキング : 66623

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



「この街の、お菓子屋さんの場所を記した地図だね」
 小佐内さんは一度小さくこくりと頷き、それから小刻みに首を横に振った。
「そうだけど、そうじゃないの」
「と言うと」
「これはね」
 秘密を告げるように、真剣なまなざしで、
「わたしの、この夏の運命を左右する……」
「運命……」
「<小佐内スイーツセレクション・夏>」



――あらすじ――
小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?待望のシリーズ第二弾。


――感想――
夏らしく(?)小市民シリーズ第2弾、『夏期限定トロピカルパフェ事件』の感想です! 爽やかな色彩を基調とした表紙から清涼感が漂ってきますね。

第一印象としては、前巻も充分に面白かったけど今巻で化けたなという感想。
<小佐内スイーツセレクション・夏>制覇に同伴させられる小鳩くんが、その折々で出逢う人死にのないデザート感覚の日常ミステリを、持ち前の洞察力と考察力で解き明かしていくという形式は変わらず。今回も短編が繋がりあって一つの物語を象るオムニバス形式でもって物語が進みます。
「何だか素敵な予感がしてるの!」と小佐内さんが宣言した夏休みを迎え、二匹の狐と狼は見事小市民の星を掴み取ることができるのだろうか。

甘かったり酸っぱかったり苦かったり、色々な味わいを楽しめる至高のお話の中でも、今回は一章『シャルロットだけはぼくのもの』が今までと違った趣向が凝らされていて面白かった。小佐内さんの恐ろしさを知悉しているはずの小鳩くんが、まさか小佐内さんのデザートに手を出してしまうなんて……! 冒頭で「小鳩くんどうした!?」と驚き蓋を開けてみたら、本当に「どうした!?」な状況になって読んでいるこっちも戦々恐々。事実隠蔽を図った小鳩くんと小佐内さんの手に汗握る知略戦がくだらないのに緊迫感があって、その味わい深さはまさにシャルロットのような極上のデザートをつまんでいるようだった。

他にも健吾の残した暗号の謎を解いたり、相変わらず小鳩くんの周りでは狐の本性をあらわにするきっかけが事欠かない。ツーコールで健吾への連絡を諦めたり、健吾から電話が返ってきても保留にしちゃう小鳩くん、マジ狐。

でも小鳩くんにはもっと気がかりなことがあって、それは小佐内さんの態度。
まるでカップルのように接してくる小佐内さんを訝しむ小鳩くん。これがラブコメの主人公なら、きっと鈍感すぎてヒロインの意図に気づかないとなるんだろうけど、小鳩くんは逆に察しがよすぎるためにラブコメ的解釈を選択肢から外してしまう、というのがまた毒が効いていていい。
実際、今回の小佐内さんはおかしかったからね。途中途中で小鳩くんの気持ちになって「おや?」と首を傾げる点がいくつか。
理解できない行動が目立つ小佐内さん。それでも小鳩くんは、彼女のスイーツ行脚に同伴するのであった。

一方裏方では不穏な事件が蠢いていて、ラストに繋がる展開はさすがでしたね。
物語の締めくくりは本当に衝撃的。あれもこれもこの真相に繋がっていたなんて。固形化される前のどろどろのチョコレートに落とされたような気分だった。得意げな小佐内さんの様子を見てると、もう……。

言葉と本心が乖離することはよくある人間の特性の一つだけど、二人にとってはそれが一番の問題だったんだろう。小市民を目指すと言っても、いつも本性に逆らえないでいる。そもそも小市民は目指してなるものではない。小市民を目指している時点で、それはもう小市民ではない。そんな矛盾を正論にしようと足掻いて、でも心のどこかでは諦めてたんだろうなあ。

「残るのは、傲慢なだけの高校生が二人なんだわ……」

この言葉はぐさっときた。そう、二人は互恵関係。それ以上でも、それ以下でもなく。手を取り合って協力することも、お互いを抑制し合うこともない。側にいることに理由と必要性を求めて、常に相手の裏を勘ぐり、別れ話にすら理性的な思考経路を辿ってしまう。
ああ、悲しいなあ、もの悲しい。結局、『狐』と『狼』は群れることができなかったということか。
舌の上から喉の奥にかけて、しつこいぐらい残滓を残すビターな幕引きだった。



関連商品
秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
夏期限定 トロピカルパフェ事件 (前) (Gファンタジーコミックス)
さよなら妖精 (創元推理文庫)
by G-Tools


スポンサーサイト



Leave a comment

Private :

Comments

- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
04 06
FC2カウンター
ブログランキング

FC2Blog Ranking

応援とか色々
プロフィール

つかボン

Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

MY読書メーター
つかボンさんの読書メーター つかボンの最近読んだ本
検索フォーム
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード