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アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

帰国


というわけで先日韓国から帰国しました。
外国に赴くのはこれで二度目。とはいえ一度目のグアムにしても今回の韓国にしても、ほとんど外国の空気は感じられませんでした。グアムは立派な観光地ですのでそこら中に日本語が書かれていますし、現地の人も日本語を喋ります。韓国に至っては文字が違うだけで、見える風景は日本のそれとなんら変わりありません。やっぱり、もっと西欧の方まで飛ぶべきなのかもしれませんね。

しかし些細なところで文化の違いは息づいていて、それは交通マナーであったり(観光客を乗せてるのにバスの運転が荒い上に、トラックと軽くぶつかって運転手どうしが喧嘩になった)、食べ物なんかは特に顕著だったかもしれません。驚いたのは、どこの料理店に行ってもお茶碗とお箸がまったく同じなんです。あれは決まりでもあるんだろうか? 統一させた方が流通させやすいからかな。

中でも一番カルチャーショックを受けたことといえば、国境にまつわることでしょうか。日本には国境という概念はないですからね。
韓国といえば南北朝鮮問題。いまだ戦争中の両国国境付近では常に緊迫した状態が続いています。
今回の旅行はほとんどが自由時間だったのですが、唯一全員行動の予定があって、それが国境38度線上にある板門店を訪ねることでした。
ただ残念ながら、三年に一度だけ米軍の訓練のため板門店に近づけない年があるらしく、運の悪いことに今回がその年だったため、板門店本体に入ることはできませんでした。それでも北朝鮮が奇襲のために地下に作ったトンネル内部を見学できたり、展望台から北朝鮮の様子を眺められたのは貴重な体験になったかなと思います。目に見える範囲に別の国があるって、なんだかすごく不思議な感じでした。

ところで私のゼミには「ちょっとコンビニ行ってくる」ぐらいの軽いノリで外国にぽんぽん飛んでいっちゃう人が何人もいるんですが、現地の女の子を紹介されたときはさすがに焦りました。聞くところによると、半年ほど前にバーで小一時間話しただけの仲なんだとか。それでも相手は気にした様子もなくフレンドリーに接してくれましたし、ノーボーダーってこういうことなのかなと、意味のわからないことをふと考えてしまいました。
その子の案内で韓国を回ったりして、国際交流の楽しさを学べたのはよかったです。
ちなみに紹介してくれたそのゼミ生は、韓国から帰国した翌日にモンゴルに旅立ちました。その行動力には憧憬の念すら抱いてしまいます。

そんな感じで、三泊四日のゼミ旅行は終わりました。
こういう機会でもないと今後訪れていたかどうかはわからないですし、なにごとも経験ですから、そういう意味では行けてよかったのかなと思います。
韓国は大阪からだと二時間もかからず、北海道よりも近い場所にあります。言ってしまえば、週末に飛び立って週明けに帰ってこれるぐらいの気軽な距離にあるということです。物価も安いですし、主要な都市に行けば言葉に不自由することもありません。「外国はちょっと……」と尻込んでいる方も、ものの試しで訪れてみてはどうでしょうか。


<拍手コメ返信>
遅くなりましたが、コメ返させてもらいます。

>Medeskiさん
コメントありがとうございます。
日本男児の意地を刻もうと思ったんですけど、タクシーの運ちゃんはカーレースしだすは、バスの運ちゃんは喧嘩しだすはでなんか韓国怖かったんで萎縮してしまいました。マジ怖い。

>リョータさん
コメントありがとうございます。
記事読んでいただき大変恐縮です!
ご指摘の通り終わクロと境ホラは未読ですね。境ホラは一応全巻所持していて、アニメも始まりますし読もうかと思ってるんですが、終わクロまで読む余裕はちょっとないかもしれません。せっかくおすすめしていただいたので可能なら読みたいのですが……。







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伊坂 幸太郎

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「生きるのを楽しむコツは二つだけ」河崎が軽快に言った。「クラクションを鳴らさないことと、細かいことを気にしないこと」
「滅茶苦茶だ」
「世の中は滅茶苦茶」河崎は心から嘆き悲しむかのようでもあった。「そうだろう?」



――あらすじ――
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。


――感想――
伊坂作品は『砂漠』に続き、これで二作目。
この人の書く物語は本当に面白いです。肌に合うと言うんだろうか。一ページ一ページが、一文字一文字すらも私にとって無駄には思えなくて、読者としても小説家志望の立場としても好きになれる作風なんだな。
彼の作品からもっと色んなことを吸収したい。生活の指針にできるぐらいに。

引っ越してきたアパートで出逢った男性にいきなり書店強盗に誘われ、しかも標的はたった一冊の広辞苑。真意の見えない思惑に主人公さながら物語の顛末が気になり、「なにが始まるんです?」といった具合に初っぱなからページが進む進む。
こういう出だしは大好物です。突拍子もなく、一見無意味に思える行為に主人公が巻き込まれるという構図。謎が人の心をつかむんです。

ただ、書店強盗をもっと引っぱってくれるのかと思っていただけに、中盤に差しかかったあたりで呆気なく流されたのが残念だった。
けれど真の物語はそのあと。河崎が書店強盗を企んだ本当の理由とは? 椎名の知らない二年前の出来事とは? 現在と二年前の物語を交互に描くことで、徐々に全貌をつまびらかにしていく手法は憎いぐらい効果的な演出となっていた。

過去と現在を対比させて時間の流れを感じさせる演出は卑怯だ。今はいない人物の皮を剥いで自分に貼りつけるみたいに、その人の面影を背負って生きていくというのはなんとも切ない。河崎や麗子さんの一言、一挙手一投足に二年前から引きずっているもの、二年前から変わったものが映し出されて、至るところで胸を貫かれた。

この作品の一番のファインプレーは椎名を登場させたことだと思う。役柄の配置がこれでもかというぐらい絶妙。たとえ椎名の一人称で物語が進むとしても、椎名は絶対に主人公にはなれないんだよね。あくまで巻き込まれた部外者。
動物園で河崎と交わされた最後のやり取り、鳥葬のくだりは、本当に喉が詰まるかのようだった。

そして物語の収束する場所。
無意味で無価値だけど、二年前の何気ない一言いまだに覚えていて、こんな形で達成するなんて、どれだけ泣かせてくれるんだ。ブータン人は因果応報を信じている。いい行いも悪い行いも、絶対に来世に返ってくるのだと。だからこそ、その理に反するように、
「神様を閉じ込めに行かないか?」

大仰で、大袈裟で、でもたったそれだけのことを真摯に。
この物語を読み終えた人は、きっとだれもがこう想いを馳せるに違いない。
 ボブ・ディランはまだ鳴っているんだろうか?

と。


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Comments

板門店(の近く)まで行ってきたんですか。
やはり、日本は戦争を知らない国ですからね。
日本では感じることのできない緊張感があったことと思います。
北海道より近い場所にそんなところがあるなんて、やはり不思議な感じがしますね。
国境というのは、我々が知っている常識の通用する範囲の示すものですから。

伊坂作品は読んだことがないのですが、おもしろそうですね。
妹が、ゴールデンスランバーにはまっていました。
時間の流れの感じさせ方というのは、読んでみたら勉強になりそうです。
Posted at 2011.09.12 (21:41) by サクラ (URL) | [編集]
伊坂幸太郎は最高です!
私は新刊が出るたびに図書館に行ってますよ~(買うお金はない)
アヒルと鴨のコインロッカーはあの大胆な叙述トリックに騙された後の呆然とする感覚が楽しいですね

上の方のコメでも出てますが、私は「ゴールデンスランバー」が最高の出来だと思ってます
超おすすめです(^O^)/
Posted at 2011.09.12 (22:33) by 手石まこと (URL) | [編集]
Re: サクラさんへ
コメントありがとうございます。

生の兵隊さんを見れて少し興奮しました。
でも、今までに多くの観光客を相手にしているだけあって、私たちとほとんど年齢は変わらないのに、妙にフレンドリーだったのがおかしかったです。ただ、南北朝鮮問題にかんするビデオなどをみせられたのですが、若干韓国寄りに美化されてるように感じたのは内緒です。
風景は同じでも、国ごとの常識ってやっぱり違うんですよね。特に戦争のこととなると、平和ボケしている日本人である私には理解できないことが多いです。

私もまだ二冊しか読んだことがなく、現在デビュー作の『オーデュボンの祈り』を読んでますが、伊坂作品は世間で評価されてるだけあって、それに相応しいなにかがあると思います。
特別癖があるわけでもないんですが、文章がとにかく読みやすくて、物語も本当に魅力的に動くんですよね。
『ゴールデンスランバー』は伊坂作品の中でも随一の人気作らしいので、私もいずれ読んでみたいです。
Posted at 2011.09.13 (15:05) by つかボン (URL) | [編集]
Re: 手石まことさんへ
コメントありがとうございます。

手石さんは生粋の伊坂ファンなんですね。
私はついこの前伊坂幸太郎の世界に入ったばかりなので、右も左わかりませんが、とにかく目についた面白そうな作品を読んでいこうと思っています。
アヒル鴨のトリックは途中で気づけてしまったのが少し残念でしたが、ミステリよりもやはり現在と過去を対比させる演出に私は唸らされました。本当にこういうの好きなんです。

現在『オーデュボンの祈り』の読んでいるところで、その次はずっと積んだままになっていた『バイバイ、ブラックバード』を読む予定なので、『ゴールデンスランバー』はそのあとぐらいに読めたらなと思います。人気作ですからね、読まずにはいられません。
Posted at 2011.09.13 (15:12) by つかボン (URL) | [編集]
さすが、つかボン
伊坂幸太郎の作品をこんな情熱的にレヴュー出来るなんて、なかなか出来るもんじゃありません。というのは悪い意味でなく、伊坂幸太郎の作品ってどこか平温なんですよね。クール過ぎず、って感じで。個人的に文章にはどこかで不協和音的なものが出てくることを期待しているので、彼の平温的な、優等生な文章(&作品)は痒いところに手が届かない感じで苦手です―――が、つかボンさんのレヴューを読んでると、あれ?熱い感じがするなこの作品??と錯覚してしまった貴方が大賞。
Posted at 2011.09.14 (07:13) by Medeski (URL) | [編集]
Re: Medeskiさんへ
コメントありがとうございます。

お褒めいただき光栄です。
伊坂先生の文章は確かに優等生の書くものですが、ただ上手いだけでなく、もの書きとしてセンスが輝かしいほどに光ってると私は感じます。評価できるものは正当に評価したい人間なんで、特に小説家志望という立場からすると伊坂先生の文章は見習うことが多いです。
情熱的な感想についてですが、これは意識的ではなく読んで感じたままに書いてみました。読む人によって感じ方は違うでしょうが、個人的には伊坂先生の作品って十分熱いと思います。その情熱的な部分を、平温的な文章でさりげなく包み隠してしまうからすごいんじゃないかなと思っているんですが……。
Posted at 2011.09.15 (11:26) by つかボン (URL) | [編集]
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Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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