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短編小説1/つかボン

突然ですが、超短編小説を書いたので紹介したいと思います。
本当に突然ですね……w
ボーッとしてたら思いつきました。
管理人はボーッとしてたらよくいろいろなことを思いつきますw

本当に思いつきでサクッと書いた小説なので推敲などは不十分です。
先に謝っておきますが、見苦しくて申し訳ないです。

テーマは『受験』なので、この時期に書くのは不謹慎かと思いましたが、軽い気持ちで読んでみてください。
コメントも待っています!

今後もこんな風に思いつきで書いた小説を紹介していこうと思います。
長編の方も書いていますが、そちらは新しくサイトを立ち上げてそちらで紹介しようと思っています。
あくまで予定なのでどうなるか分かりませんが……

それでは、内容は「続きを読む」から!


「うぅ……」
 部屋の中がやたら暑かったので思わず呻き声を漏らす。
 今は三月の半ばだというのになんでこんなに暑いんだと不快に思って、すぐに部屋を閉め切っているからだと気付く。しかも三日間ずっと。
 肌をチクチク刺すような暑さに我慢できず、被っていた布団を剥がす。カーテンの隙間から差し込む光の筋に空気中を漂う無数の埃が映って、室内の換気の不十分さが目で見て分かる。
 灰色の暗さが広がる室内に布団の衣擦れの音だけが響く。
 最悪の気分だった。
三日前の朝、僕は県内のとある国立大学の中にいた。その日は大学入試の合格発表日だった。
僕と同じく合否を確認しに来ていた大勢の人間に紛れて、僕は合格者の受験番号が貼り出されただだっ広い掲示板の前で立ち尽くしていた。左右の目をせわしなく動かし、何度も何度も最初の数列から最後の数列までを見返していた。どれだけ見返そうと、どんなに睨みつけようと、並べられた数字が変わるわけではないのに。
結果は不合格だった。
合格する自信はあった。というより、合格を確信していた。僕の志願した大学はそこまでレベルの高いところではなく、僕の学力なら十分合格できると担任の教師も言っていた。そして僕自身も、その言葉に甘えることなく努力を積んできたのに。だからこそ、目の前の現実を素直に受け入れることが出来なかった。
その現実が徐々に体の中に浸透していき、僕という存在を内側から蝕んでいくような錯覚に囚われたのを覚えている。あの感覚は忘れられない。
不合格を悟ったあと、僕を待っていたものは絶望だった。周りからいくつもの嬉々とした歓声が聞こえてきたけど、僕はそこで世界が終ったかのように停止していた。
大学からの帰り道、僕の頭に浮かぶのは、家族や教師や友人にどんな顔をして会えばいいんだという後ろめたい気持ちばかりだった。何度もこのまま死んでやろうかと考えた。
何もかもどうでも良くなっていた。僕は、歩みを止めてしまったのだ。
 そして、現在もこうして無様に生きている。いや、三日もの間部屋に閉じこもりっ放しの人間なんて死んでいるのと同じなのかもしれない。
 何もする気が起きない。三日前から何も食べていないはずなのに、不思議と空腹感は無かった。絶望のあまりついに身体機能にまで欠陥が出始めたかと、自嘲気味に笑ってみる。
 その時、誰かが小走りで階段を駆け上がってくる音が聞こえた。
足音で母親だと判断。
僕は再度布団を被り直して、どうか母が僕の部屋に来ないようにと切に祈った。
だけど、その祈りが届くことはなかった。部屋の扉が開く音がする。
「うわっ、暑っ。何この部屋。それに臭い!」
 閉口一番文句を言ってくる。
「あんた、部屋の換気ぐらいしなさいよね」
 こちらの事情なんて知ったこっちゃないと言わんばかりに、母がハスキーな声で軽々しく話しかけてくる。少しはこっちの気持ちも考えろよ。
 だけど、そう言いつつも窓を開けようとしない母は、あれでも少しは気を使ってくれてるのかもしれない。
「洗濯物もほったらかして。一昨日畳むように言ったじゃない」
 布団の中から片目だけで母の様子を窺って見る。母はその場にしゃがみ込み、僕がほったらかしにしておいた洗濯物を畳み始めていた。まだ出ていく気配はない。早く出ていけよと、心の中で悪態をつく。
「お昼ご飯出来てるわよ? いい加減食べなさい」
「……」
「ねぇ、聞いてるの?」
 ……何だよもう。
「いらない」
 僕が吐き捨てるように言うと、母はそれ以上口を開こうとしなかった。
 しばらく、僕と母の間に気まずい沈黙が流れた。その沈黙を先に破ったのは母だった。
「お母さん、さっきまで先週録画しておいた『世界・ふしぎ発見!』を見てたのっ」
 急に明るい口調で話しだす母に、僕は怪訝な表情を見せる。だから何なんだよ。
「それでね、それ見ながら世界って本当に広いなぁって考えてたら、日本なんてその中の一つの小さな国にしかすぎなくて、お母さんたちの家なんてその小さな日本の中に無数に存在する家の一つなんだなぁって思えてきたの。そしてそして、この部屋もその家の一部にしか過ぎないんだなぁって思うの」
「……」
「そんなこと考えてたらお母さんの悩みなんて本当にちっぽけだなぁって思うわけよ」
「……お母さんの悩みって……なに?」
「最近体重が増えてきちゃって。ダイエット中だったんだけど、もういいやって思ってさっき大福を二個食べちゃったわっ」
 本末転倒とは正にこのことだなぁと呆れ返ってしまった。だけど、その時の母の表情は本当に幸せそうだった。
 やがて、洗濯物を畳み終えた母が部屋を出ていこうとする。去り際に、「ご飯、テーブルの上に置いているから」と柔和な表情で言い残していった。
 再び部屋の中を孤独な静寂が包みこむ。
 さっきまでここに一人で居たのに、母が居なくなった途端、この場所がどこか別の場所のように思えてくる。台風みたいな人だなぁ。
 一人の部屋で母の言葉を思い出す。
 ――世界って本当に広いなぁって考えてたら、日本なんてその中の一つの小さな国にしか過ぎなくて、お母さんたちの家なんてその小さな日本の中に無数に存在する家の一つなんだなぁって思えてきたの。そしてそして、この部屋もその家の一部にしか過ぎないんだなぁって思うの。
「そして僕はこの部屋の一部」
 そう。歩みを止めてしまった僕はこの部屋の一部にすぎない。付属品だ。お菓子に付いてくるおまけと同レベルだ。
 見慣れた天井を眺めながら、さらに上空を透視しようとしてみる。もちろん出来ないけど。
 さらに上空の地球という惑星を意識してみる……が、すぐに意識が途絶えた。こんなちっぽけな僕が巨大な地球など思い描けるわけがない。今日の天気だって分からないのに……。
 突然、僕はガバッと布団を跳ね除けて起き上がる。そしてフローリングの床に裸足の足を着けて勢いよく立ち上がった。
 二秒で倒れた。
 酷い立ち眩みに襲われて目まいがする。そういえば、立つのは一日ぶりだ。
 しばらくベッドの上で仰向けになり、立ち眩みが治まるまで待って再度立ち上がる。母が畳んでくれた洗濯物の束を蹴倒さないように避けて、窓に向かう。
 両手でカーテンの端を掴み、目を閉じて一度深呼吸をする。……よしっ。
 目はそのままで、僕は一気にカーテンを開いた。
 やたら暑い何かが瞼の外側を焼くように照らしつけてくる。十分な時間を置いて、僕はそっと瞼を開いた。
 眼前には雲ひとつないコバルトブルーの空が広がっている。今日の天気は快晴だった。
 世界は広い。そんなこと言われなくても分かっている。だけど、自分が矮小な存在だということは、言われなければ分からなかった。
 不合格という事実を知ってからずっと、僕は悲劇の主人公を気取っていただけなんだ。僕が世界で一番不幸な人間なんだと嘆いていただけ。そうすれば、誰かが同情して慰めてくれると思ったから。
 僕がいくら嘆いたところで、地球は変わらず自転し続ける。僕が立ち止まったって、地球は僕の絶望も乗せてくるくる回り続ける。ならば、その地球の中にいる僕も一緒に回転しているんじゃないのか。だから、厳密な意味で、立ち止まることなんて出来ないのに。
 僕がどんなに絶望に打ちひしがれようと、人生は続いていく。だって、生きているんだから。本当に立ち止まりたいなら死ななければならない。それが出来ないなら歩き続けるしかないのだ。
 ならば歩き続けよう。しっかりと地面を踏みしめて。
 少しでも世界の流れについていけるように。
 少しでも地球の回転するスピードに追いつけるように。
 そんなことを考えていると、いつの間にか扉の前に立っていた。扉の隙間から微かに香ばしい匂いが漂ってくる。
お昼ご飯はおそらく焼きそばだろう。母の作る焼きそばは僕の好物。
 少しの後悔と少しの期待を胸に、僕は扉のノブを回した。
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Comments

つかボンさん、こんばんは。どうもじたまです。
理系で小説など一度も書いたこと無い私ですが、感想を書かせていただきます。
私の感想こそ気軽に読んでください。

非常に整った文章だと思います。
部屋の中の描写や主人公の心情も分かりやすく書けてて良かったです。
私は高校受験に失敗しているのですが、軽く凹みました。
まぁ、次の日には遊んでたと思うので本当に軽くですが…
大学受験は割りとガチだったので、落ちたらこんな風になってそうでしたね。
読みやすかったので、長編も是非読みたいです。
Posted at 2010.03.26 (03:48) by じたま (URL) | [編集]
Re: タイトルなし
じたまさん、コメントありがとうございます。

> 非常に整った文章だと思います。
> 部屋の中の描写や主人公の心情も分かりやすく書けてて良かったです。
本当ですか!?
情景描写や心理描写のあたりは一番力を入れたので、そう言っていただけると嬉しいです。

> 私は高校受験に失敗しているのですが、軽く凹みました。
やはりですか……
本当に申し訳ありません。じたまさんのような方もいるだろうなと思ったので、載せるべきかどうか最後まで迷いました。
Posted at 2010.03.26 (13:53) by つかボン (URL) | [編集]
シャモが恐れ多くも感想を書かせていただきます

主人公の心情描写や部屋の様子が丁寧に書かれていて
母親から言われて主人公が立ち直ったところが
個人的には好きです

長編も楽しみにしてますね、
いずれ自分も書きたいと思ってます
Posted at 2010.03.27 (01:20) by シャモ (URL) | [編集]
Re: タイトルなし
シャモさん、コメントありがとうございます。


> 主人公の心情描写や部屋の様子が丁寧に書かれていて
> 母親から言われて主人公が立ち直ったところが
> 個人的には好きです
読んでいただきありがとうございます。
細かい視点での評価をもらえて嬉しいです。

> 長編も楽しみにしてますね、
> いずれ自分も書きたいと思ってます
シャモさんの書く物語も楽しみにしています。
Posted at 2010.03.27 (13:44) by つかボン (URL) | [編集]
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プロフィール

つかボン

Author:つかボン
前ブログ『BOOKDAYs!』の元管理人。
入間人間先生をこよなく愛し、自らも作家を目指す小説家志望だが、その実態は堕落人生まっしぐらのダメ学生。
しかし落ちるところまで落ちればあとは昇るだけ、それは可能性の獣。

同人誌『Spica-スピカ-』のメンバーとして活動もしています。
コメントなどはお気軽に。
どうぞよろしくお願いします。

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